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に関する論文

CFR Interview
シリア、イランのヒズボラ・コネクション

2013年3月号

マシュー・レビット
ワシントン近東政策研究所 シニアフェロー

シリアでアサド政権が追い込まれていくにつれて、ヒズボラは、シリアにある自分たちの兵器を、レバノン山岳地帯の洞窟に設けた兵器庫など、安全な場所に移したいと考えている。イスラエルが空爆で攻撃したのは、そうした兵器を積んでレバノンに運びだそうとしていたトラック車列だった。スンニ派の過激派、シーア派の過激派は、アサド体制の崩壊に備えて、それぞれ自分たちに忠実な武装勢力の組織化を進めている。われわれが目にしているのは、紛争の第2局面に向けた兵器の備蓄・調達に他ならない。さらに、イランがヒズボラへの武器提供をシリア経由で行うことが多いことも、今回の空爆の構図に関係している。現状ではヒズボラとイランは非常に緊密な関係にあり、アメリカの情報コミュニティは、両者の関係を「戦略的パートナーシップ」と描写している。

米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

2013年2月号

スティーブン・G・ブルックス ダートマス・カレッジ准教授 G・ジョン・アイケンベリー   プリンストン大学教授 ウィリアム・C・ウォールフォース ダートマス・カレッジ教授

米軍はヨーロッパと東アジアから撤退し、本国へと帰還すべきなのか? 国際関係の著名な研究者の多くがこの問いにイエスと答えている。イラクでの壊滅的な失敗とグレートリセッションを経験しているだけに、この立場も賢明に思えるかもしれない。だが、より控えめなグローバル戦略で資金を節約できるわけでも、現状で対米対抗バランス形成の動きがあるわけでもない。現在の戦略によってアメリカが経済的衰退に追い込まれたわけでも、将来、この戦略が無謀な戦争へとアメリカを駆り立てるわけでもない。現在の戦略は世界の重要地域における紛争の発生を防ぎ、グローバル経済をうまく先に進め、国際協調をまとめやすくしている。グローバルなリーダーシップのための対外関与から手を引けば、これら立証されている恩恵は消失し、世界はかつてない不安定化に翻弄されることになる。

CFR Meeting
民主国家同盟D10を立ち上げよ
――なぜ民主国家によるフォーラムが必要か

2013年2月号

◎スピーカー
アッシュ・ジェイン / ユーラシアグループ・コンサルタント
◎プレサイダー
スチュアート・パトリック / 米外交問題評議会シニアフェロー

経済領域ではグローバルな規範に向けたコンバージェンス(収斂)が進んでいるが、民主的秩序の中核である政治や安全保障領域では、民主国家とそうでない国の間に依然として大きな立場の違いがある。問題は民主国家間の戦略調整メカニズムが希薄になってきていることだ。NATO(北大西洋条約機構)やG8ではこの現実を克服できない。脅威が多様化しているために、任務を安全保障領域に限定しているNATO(北大西洋条約機構)が果たせる役割には限界があるし、ロシアをメンバーに迎え入れたことでG8は空虚な声明を発表するだけのフォーラムと化している。必要なのは民主的価値を共有する諸国によるフォーラムを立ち上げることlだ。このフォーラムのメンバーを構成すべきは、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アジア・太平洋の日本、オーストラリア、韓国、そして北米のカナダとアメリカだろう。これにEU(欧州連合)を加えればD10になる。民主的価値を共有する民主諸国連合(D10)は、現在の世界の課題に対処していくもっとも適切な枠組みとして機能するポテンシャルを秘めている。

5年後、アメリカはサウジを抜いて、
世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

2013年2月号

◎スピーカー
ファティ・ビロル /国際エネルギー機関(IEA)、チーフエコノミスト
◎プレサイダー
ゲリー・ロス/PIRAエネルギー・グループ

ヨーロッパの天然ガス価格はアメリカの5倍も高く、アジアの価格はアメリカの8倍にも達する。わずか5年前には、これらの地域の天然ガス価格はほぼ同じ水準にあった。だが、5年間でこれだけの価格差が生じてしまった。価格が高いことが、天然ガスの市場シェアの拡大に歯止めをかけている。たしかに天然ガスは黄金時代を迎えている。だが北米市場を別にすれば、市場シェアの拡大には、ヨーロッパとアジアの価格がアメリカ並みに下がるか、少なくとも、それに近づいていく必要がある。・・・そして、現在からわずか5年後の2017年には、アメリカは、サウジアラビアを抜いて、世界最大の石油生産国になる。これは主に、(シェールオイルなど)非在来型の資源であるタイトオイルを開発できるようになったからだ。こうしたエネルギーシステムの新たな見取り図が、地政学的に何を意味するかを考える段階にきている。

2013年にわれわれが直面する大きな課題は三つあると考えられる。第1はシリア紛争とその余波、そしてイランの核開発問題。第2は、東シナ海、南シナ海の領有権論争が新たな展開をみせることになるかもしれないこと。そして、第3は不安定なグローバル経済だ。・・・東シナ海、南シナ海での領有権問題をめぐって緊張が高まっている環境で、(日中韓に)新指導者が誕生したことの意味合いを考える必要がある。・・・東アジアの新指導者たちは、いずれも権力基盤を固め、支持層に対して問題を処理し、国益を守っていく力があることを示そうと試みるはずだ。当然、各国の指導者が相手国に妥協をするのは非常に難しい情勢にある。・・・しかも、領有権問題にはナショナリズム要因だけでなく、石油、天然ガス、鉱物資源などの経済資源問題も関わっている。・・・グローバル経済も依然として不安定だ。ユーロゾーン経済は失速し、中国経済の成長も減速している。ブラジル経済もインド経済も同様だ。アメリカ経済も非常にゆっくりとしたペースでしか回復していないし、政治対立に足をとられている。・・・

イタリアの緊縮財政拒否でユーロ危機の再燃か

2013年2月号

チャールズ・クプチャン
米外問題評議会シニア・フェロー(ヨーロッパ担当)

反既成政党の立場をとる元コメディアンのベッペ・グリッロ氏率いるポピュリスト運動(五つ星運動)と緊縮財政を批判するシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる自由国民が勢力を伸ばしたことで、イタリア政治は混沌とした状況に陥っている。新政権を組織できなければ、数カ月以内に選挙が再び実施されることになるかもしれない。だが、その間にも緊縮財政への批判が高まり、再度選挙を実施しても、さらに政治的混迷が高まる危険がある。すでに市場は今回の選挙結果にネガティブな反応を示し、株価は下落し、国債の利回りは上昇している。・・・

追い込まれた金正恩
―― 出口のない窮状

2013年2月号

ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授
元米国家安全保障会議(NSC)アジア担当部長

軍務に服することなく、20代後半の若さで権力構造のトップに君臨している金正恩は、現在の体制基盤を強化できるかどうか。それは、彼が権力者としての価値と手腕をもっていることをエリート層に立証できるかに左右される。一連の軍高官の解任劇は、金正恩が、彼らからビジネスの既得権益を奪い取ることで、自らのパトロンネットワークを強化しようとした結果だと考えられる。だがその結果、軍高官の不満は高まっている。韓国に対して強硬策をとって国内的に手腕を示そうにも、すでに、ソウルは北朝鮮の強硬策には大規模な報復攻撃も辞さないと表明しており、軽々に火遊びはできない。中国にさえも見限られた部分がある。しかも、携帯電話の普及とインターネットユーザーの拡大によって北朝鮮社会は変化しつつある。金正恩はいずれ身動きのできない状況へと追い込まれ、アメリカは、北朝鮮の核管理体制の弛緩という悪夢のシナリオに直面する恐れがある。・・・

2013年、米経済の先行きは、わずかながらも明るくなると予測できる。より持続性のある経済成長パターンへと、ゆっくりとながらも構造的適応を遂げつつあるからだ。デレバレッジプロセスもかなり進み、その結果、国内需要が刺激され始めている。とはいえ、失業と格差が、今後も力強い経済への回帰を阻む、足かせであり続けるだろう。(マイケル・スペンス)

ヨーロッパ経済の成長がさらに減速し、周辺諸国における改革路線が圧力にさらされ続け、通貨同盟を強化しようとする試みがほとんど先に進まないようであれば、市場はより厳格なシグナルを発することになるかもしれない。(ロバート・カーン)

マクロ経済政策に関する重要な新トレンドとは、中央銀行が、リセッション下の深刻な失業問題により積極的に対処するために、インフレを一時的に許容するような態度をとり始めたことだ。(マーク・トーマ)

2013年には、中国経済の8%の成長が、失望としてではなく、新しい規範とみなされるようになるだろう。(ユコン・ファン)

2012年末に復活の兆しをみせていた米住宅市場は、2013年には完全な離陸を果たすだろう。(マーク・ザンディ)

シェールガス資源が塗り替える世界の地政学地図

2013年2月号

アビエザー・タッカー テキサス大学オースチン校
エネルギー研究所アシスタントディレクター

非在来型(シェールガス)資源の発見によって世界のエネルギー供給は大きく拡大し、近い将来に、供給が需要を上回るようになる。どうみても、世界のエネルギー価格は今後低下していく。すでに、アメリカの天然ガス価格は、2008年当時と比べて4分の1へと低下し、これが世界的な波及効果を持ち始めている。新技術が可能にしたシェールガス資源の開発によって、いまや経済・貿易領域での国家間の力関係も、エネルギーをめぐる地政学も変化の時を迎えている。これまでよりもはるかに安いエネルギー価格で規定される新しい世界では、石油や天然ガス資源が地政学秩序に与える影響も低下していく。すでにエネルギー供給国・ロシアと消費地域であるヨーロッパの関係は変化しつつあり、ロシアと中国の関係も今後変化していくだろう。この地政学環境の変化によって、資源の富に依存してきた独裁者の命運もいずれ尽きることになるかもしれない。

イギリスのEUジレンマ
――脱退すべきか、踏みとどまるべきか

2013年2月号

ロビン・ニブレット
チャタムハウス ディレクター

「あなたはEUのことが好きですか」とイギリス人に聞けば、「嫌いだ」という答えが返ってくる。「EUから脱退するチャンスがあれば、脱退を支持するか」と聞けば、一部の人は「支持すると思う」と答えるだろう。だが、「イギリスの国内雇用と経済成長をリスクにさらしてもEUから脱退すべきか」と聞けば、人々から明確な答えは返ってこなくなる。つまり、開放的なヨーロッパそして貿易をめぐって、イギリスは主要プレイヤーであり続けたいと考えているが、ユーロのメンバーではないイギリスが、銀行同盟や財政同盟などの経済同盟の深化が必要とするルールに、手足を縛られるのは避けたいと考えている。これが脱退論の背景にある。・・・私はイギリスがEUから脱退する可能性は低いとみている。問題は、仮に国民投票でEU脱退が否決されても、ヨーロッパは「イギリスが本当にヨーロッパにコミットしている」とはもう考えなくなることだ。この場合、イギリスはヨーロッパ政治の傍流に追いやられることになる。(R・ニブレット)

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