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に関する論文

地球温暖化と水資源争奪戦

2012年11月号

シュロミ・ダイナー フロリダ国際大学准教授
ルシア・デ=ステファノ マドリッド・コンプルーテンス大学
ジェームズ・ダンカン 世界銀行コンサルタント(天然資源統治)
カースティン・スタール フレイバーグ大学 シニアサイエンティスト
ケネス・M・ストルゼペック MIT リサーチサイエンティスト
アーロン・T・ウォルフ オレゴン州立大学教授

地球温暖化によって干ばつ、水害、その他の異常気象が増えるなか、水資源の量と質がともに変化する恐れが出てきている。世界の276の国際河川のうちの24の河川では、すでに流水量が変化し、水資源をめぐる政治的緊張が高まっている。例えば、上流域に位置する国と下流域に位置する諸国が、水力発電のエネルギー源として、あるいは農業用水として、水資源を争っているからだ。問題なのは、緊張が高まっている地域で水資源使用の管理を定めた国際条約が存在しないことが多いために、対立が生じても、それに対処するメカニズムが存在しないことだ。水資源の国際的管理合意を包括的に整備していかない限り、アフリカ、カフカス、中東、中央アジアなど、水資源が世界の紛争多発地域の安定をさらに損なうことになりかねない。

レバノン化するシリア
――反体制派の統合は幻想に終わる

2012年11月

エド・フサイン
米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー

シリアの反体制派の統一組織「シリア国民連合」が誕生したが、シリア国内の反体制派がこの新しい組織と協調するかどうかは、はっきりしない。欧米にとって厄介なのは、シリア国内の反体制派武装勢力にアルカイダの戦士が入り込んでいることだ。どうすれば、自由と民主主義のために戦っているシリア人とアルカイダの戦士を区別できるだろうか。この二つの集団を明確に区別しない限り、アメリカとヨーロッパが反政府勢力を全面的に支持すると公言するのは難しい。たしかに、フランスがシリア国民連合を承認したことで、いまや反体制派は国際コミュニティの支持を獲得しつつある。だが、本当の戦場がシリア国内にあることを忘れてはいけない。今後の多くは、国民連合が反体制派武装勢力を統制できるか、アルカイダを締め出せるか、そして、多数派であるスンニ派とその他の少数派の調和と統合を実現できるかに左右される。現実には、これらが実現する見込みは乏しい。どうみても、シリア内の各勢力が政治的妥協を求めるような情勢にはないからだ。・・・すでにシリアは、レバノン同様に外部パワーの代理戦争の場所と化しつつある。あと3-4年は内戦が続くだろうし、アサド政権が倒れても、そこに台頭してくるのは、もう一つの殺人集団であるスンニ派イスラム主義組織だろう。

オバマ政権二期目の外交アジェンダ

2012年11月

ジェームズ・M・リンゼー
米外交問題評議会副会長(研究部長)

二期目のオバマ大統領にとっての最大の課題は、やはりアメリカの財政を立て直すことだ。一方、主要な外交課題には、イランの核開発問題、アフガニスタン撤退、シリア内戦への対応などがある。だが、重要なのは歴史的にみても「就任演説の時点では予想もしていなかった外交問題に大統領が直面するのは避けられない」ことだ。オバマ大統領は予期せぬ外国での出来事に間違いなく遭遇する。さらに、「差し迫った問題ではないが、いずれ明確な路線を決定しなければならない水平的課題」も存在する。中国はそうした水平的課題の一つだ。中国の脅威は、その強さと弱さの双方に派生している。東アジアでアメリカがどのような軍事、経済路線をとるか、これに中国がどのように反応するか、そしてアメリカの同盟国や友好国がこの中国の反応にどう対処するかが流れを決めることになる。・・・

ユーロの課題とイタリア経済の再建

2012年11月号

マリオ・モンティ
イタリア首相

ヨーロッパは深刻な統治危機に直面している。各国の指導者と財務相たちは立場を譲って明確な危機対応路線にコミットしたいと考えつつも、一方で、その政策をどのように国内の有権者に受け入れさせるかも考えなければならない。こうして閣僚たちはEUの会議での妥協に関する独自の解釈を国内向けにそれぞれに発表する。帰国して、議会の公聴会の席にたつと、また別の解釈を述べる。ブリュッセルでの長い会議を経て、議長が声明を発表しても、各国の閣僚たちが別のアングルからのコメントを出す。そして立場の違いが広がっていく。その結果、最初の数時間、あるいは数日は前向きな反応を示していた市場も、その後、再びネガティブな方向へと振れていく。・・・やらなければならないことは二つある。一つは、状況を安定化させるための政策を実施することだ。もう一つは、ユーロの将来に向けた説得力のあるビジョンを示すことだ。10年後にユーロが存在すると確信できなければ、誰もがユーロ建てで投資することを躊躇する。

「美しいデレバレッジ」とは
――デフレとインフレの間

2012年11月号

レイ・ダリオ
ブリッジウォーター・アソシエイツLP創業者
兼共同投資責任者

デレバレッジ局面で緊縮財政が実施されると、非常に大きな債務を抱え込んでいることが広く認識されるようになる。その結果、リセッションに陥るだけでなく、危機が発生する。この段階で量的緩和が開始され、デレバレッジ・サイクルが10年程度は続く。・・・(デレバレッジ・サイクルのなかにある)日本やアメリカで強気相場と弱気相場が繰り返されているのは、量的緩和が実施されると強気相場となるが、いずれ量的緩和には問題があると考えられるようになるからだ。そして(量的緩和が作り出す)別のサイクルが生まれる。これは非常に周期が長く、通常は15年にもおよぶ。・・・・債務削減、緊縮財政、量的緩和のバランスをうまくとる必要がある。債務削減と緊縮財政はデフレをもたらす。量的緩和にはインフレ効果がある。これらをうまくバランスさせるのだ。これを私は「美しいデレバレッジ」と呼んでいる。デレバレッジ局面でもっとも重要なのは、十分な資金を供給し、名目金利を上回る名目成長率を維持すること、・・・そして、資金を必要とし、経済を刺激するポイントに資金を行き渡らせられるかどうかだ。

中国と日本の相互認識
―― 歴史的遺産とイデオロギー的遺産の呪縛
(1972年発表)

2012年11月号

チャーマーズ・ジョンソン
日本政策研究所・所長(論文発表当時)

1885年以降、数多くの中国人が近代世界を学ぼうと、日本に留学してきた。しかし、その後日本が帝国主義国家として台頭していくと、中国人が日本の近代化に抱いた憧憬は、嫌悪感へと変化していく。中国人から見れば、日本はもはやアジアではなかった。日本は、紛れもなく帝国主義国家そのものだった。そして、日中戦争が、より一層の敵意と憎悪を生み出し、それが現在の対日観に影響を与え続けている。だが、戦争の影響を、日本軍の残虐性という観点だけでとらえるのは誤りだろう。戦争は両国の知的・イデオロギー的な枠組みに大きな影響を与えている。日本が封建制から資本主義、帝国主義へと突き進むプロセスが、中国のナショナリストたちのマルクス・レーニン主義イデオロギーへの確信をより深めることになったからだ。

独立を求めるスコットランドの真意は

2012年11月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学教授

スコットランドは1997年の住民投票で独自の行政府を持つことを選択し、2014年末には分離独立を問う住民投票が実施される。スコットランド議会の多数派であるスコットランド民族党(SNP)は、イギリスからの分離独立を明確に政治目標に掲げている。現代のスコットランドのナショナリストたちは、「スコットランド人の政治的・社会的価値観はイングランド、ウェールズ、北アイルランドのそれとは異なる」という理由で独立を模索している。世論調査によれば、実際に住民投票が行われても分離・独立派が勝利する可能性は低い。より「高度な地方分権」を認められるのなら、それで人々は満足なのかもしれない。しかし、地方の特質、統合された統治、そして民主的プラクティスは共存できるし、相互に補強しあうという理念を具現する存在だったスコットランドが、今後、力強い地域主義を分離独立主義に変貌させるモデルになっていくとすれば、非常に残念な事態だ。

地域的なパワーバランスの変化が進行するなか、日中両国でナショナリズムが台頭し、これが歴史的な確執を蘇らせている。尖閣諸島をめぐって日中間の緊張がかくもエスカレートしているのはこのためだ。・・・国民感情そして野党勢力が作り出す圧力からみても、日本政府にとって、中国に対して立場を後退させることは選択肢にはならない。一方、北京も手を縛られつつある。国内の抗議行動をあまりに手荒に弾圧すれば、対日宥和策をとったとみなされるし、一方で、このまま混乱が続けば、中国の社会的安定が損なわれ、国際的イメージに傷がつく。・・・目先の打開策は存在するし、危機を収束へと向かわせることはできるだろう。だが、日中が抱える未解決の問題を決着させるには、歴史的な虚構に根ざし、東アジアの将来に対する不透明感ゆえに力を得ている排外的なナショナリズムという怪物と正面から対決する必要がある。

CFR Interview
ユーロ解体、存続の鍵を握るスペイン

2012年10月

ミーガン・グリーン
ルービニ・グローバルエコノミクス、
欧州経済担当ディレクター

ギリシャ、ポルトガル、アイルランドのような比較的小さな周辺国経済の危機はなんとか管理できたが、EUはスペインとイタリア経済の双方を救える規模の資金は持っていない。つまり、スペインのケースは、ヨーロッパが危機を管理できるか、それとも、管理できなくなるかの試金石なのだ。おそらく2013年のどこかの段階で、スペインは市場から資金を調達できなくなり、この段階でスペインは全面的なトロイカの支援、つまり、IMF(国際通貨基金)、欧州委員会、ECBによるベイルアウトのすべてを必要とするようになる。そして、スペインにベイルアウト策がとられれば、今度は誰もがイタリアに注目する。仮に危機がスペインとイタリアに全面的に広がりをみせていけば、ソブリン危機、銀行危機がユーロゾーン全体に広がりをみせ、ユーロ圏は全面的に解体していく。問題は、ユーロゾーンを維持して持続的な成長路線に立ち返るには、各国が構造改革を進める必要があるにも関わらず、政治家は誰もが次の選挙での再選を念頭に政治ゲームを展開し、政府も本腰を入れて構造改革に取り組んではいないことだ。

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