1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

に関する論文

韓国の宇宙開発戦略のジレンマ

2012年12月号

ジェームズ・クレイ・モルツ
ネーバル・ポストグラジュエートスクール教授

日本は人工衛星の初の打ち上げを1970年2月に成功させ、中国は1970年4月に、そしてインドは1980年7月に成功させている。だが、韓国は、造船やエレクトロニクス、自動車産業部門では国際的な地位をすでに確立しているにも関わらず、こと宇宙開発に関しては大きく出遅れている。宇宙分野での技術開発の出遅れを挽回すべく、民主化と国際化が加速した1989年、ソウルは韓国航空宇宙研究院(KARI)を設立した。しかし、当初は米韓ミサイル指針の規定によって、その後も輸出規制に縛られ、韓国はアメリカからの技術供与を得られず、外国の技術を利用して通信や遠隔観測の人工衛星のネットワークを構築せざるを得なくなった。ロシアとの開発契約をまとめたが、結局、これまでのところ、うまくいっていない。韓国が同盟国の水準まで追いつき、競争の激しい宇宙関連市場で商業性のあるサービスを部分的にでも提供できるようになるには、予算の増大を含めて、まだ多くのハードルをクリアーする必要がある。

アジア・リバランシング戦略とは何か
――軍事的リバランシングだけではない

2012年12月

ポーラ・ブリスコエ
米外交問題評議会
ナショナル・インテリジェンス・フェロー

アメリカのアジア・リバランシング戦略に関する声高な発言は、不必要に中国の懸念を高めることになる。事実、中国のある戦略問題の専門家は、ワシントンは「アジア太平洋地域はアメリカの軍事プレゼンスと保護を必要としているという認識を近隣諸国に売り込み、この認識をバックに、中国に対する戦略的対抗バランスの形成を試みている」と批判している。・・・アメリカのアジア戦略のリバランシングは、アジア・太平洋における米海軍力の再編とみなされることが多いが、実際には、リバランシング戦略は単に軍事領域だけでなく、貿易と投資、人権と民主主義などの基本的戦略原則の多くに関わっている。・・・

エジプトの混乱とモルシ大統領の独善
――ムスリム同胞の自負とエリート主義

2012年12月

スティーブン・クック
米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー

大統領権限を強化する憲法令が出されて以降、エジプトは大きな混乱に包み込まれている。ルール、規制、法律が存在しないために、革命を経ても、エジプトは無能な将軍たち、そして現在は権威主義的なイスラム主義者の気まぐれに翻弄されているとみる専門家もいる。だが、問題はより深いところに存在する。モルシ大統領の誤算は、大統領選挙を含む一連の「選挙結果は、有権者がムスリム同胞団への全面的信任を与えたことを意味する」と自分たち同様に、エジプトの民衆が考えていると信じ込んでしまっていることだ。民衆は大統領と自由公正党に、少数意見など気にしなくても済むような、大きな信任を与えたと同胞団は信じてしまっている。もう一つの問題は、「エジプトがどの方向に向かうべきかについては、自分たちが一番良く理解している」と、ムバラク同様にモルシが自負していることだ。この意味で、モルシを「新しいムバラク」と呼ぶ反対派の主張は間違っていないだろう。ムバラクもモルシも唯我独尊的なハイモダニストの世界観をもっている。このエリート意識ゆえに旧体制下では政治改革が進まなかったし、現在も、問題が作り出されている。

論争 日本は衰退しているのか
―― 日本衰退論の不毛

2012年12月

ジェラルド・L・カーチス
コロンビア大学教授

この20年にわたって日本が「停滞」に甘んじてきた時期にも、生活レベルは改善し、失業率は低く抑えられてきた。・・・日本の産業と政府が大胆な政策の見直しを必要としているのは明らかだが、そうした政策の見直しを必要としていない国などどこにもない。・・・日本の内向き志向、特に若者の内向き志向が高まっているという見方もあるが、私のように長く日本に関わってきた者にとって、これほど困惑を禁じ得ない見方もない。むしろ問題は、多くの高齢者層が依然として内向きであるために、若者たちがリスクをとり、何か新しいことを試みるというインセンティブを失っていることだろう。・・・「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という概念は消失している。とはいえ、あなたは、世界第2の経済大国中国と世界第3の経済国家日本のどちらで暮らしたいと考えるだろうか。生活レベル、大気、飲料水、食事の質、医療ケアその他の社会サービスのレベル、そして平均余命など、さまざまな指標からみて、答えははっきりしている。台頭する中国よりも、「衰退途上の」日本で暮らすほうが、はるかにいい。・・・

中国を対外強硬路線へ駆り立てる恐れと不安
―― アジアシフト戦略の誤算とは

2012年11月号

ロバート・ロス ボストン・カレッジ 政治学教授

中国の強硬外交は新たに手に入れたパワーを基盤とする自信に派生するものではなく、むしろ、金融危機と社会騒乱に悩まされていることに派生する中国政府の不安に根ざしている。シンボリックな対外強硬路線をとることで、北京はナショナリスティックになっている大衆をなだめ、政府の政治的正統性をつなぎとめようとしている。その結果、2009―10年に中国は対外強硬路線をとるようになり、近隣国だけでなく、世界の多くの諸国が中国と距離を置くようになった。この環境で、東アジアの同盟諸国は「大恐慌以来、最悪の経済危機のなかにあるアメリカは、自信を深め、能力を高めている中国に対処していけるのか」と疑問をもつようになり、こうした懸念を払拭しようと、ワシントンはアジア地域のパワーバランスを維持できることを立証しようと試み、アジアシフト戦略へと舵を取った。だが、台頭する中国を牽制するはずのアジアシフト戦略は、逆に中国の好戦性を助長し、米中協調への双方の確信を損なってしまっている。

何が経済を成長させるのか
―― 政治体制、地勢、資源

2012年11月号

ジェフリー・サックス
コロンビア大学教授

経済を成長させる要因を政治体制だけに限定できるのか。悪い統治が経済成長を阻む要因の一つであることは確かだ。しかし、地政学的脅威、恵まれない地勢や気候、債務危機、文化的な障壁も経済成長を阻む足かせになる。貯蓄と投資を不可能にする貧困が貧困をさらに深刻にする部分もある。複雑な経済成長のメカニズムを政治体制だけでは説明できない。中国、シンガポール、台湾、ベトナムはすべて抑圧的政治から始めて、結果的に開放的経済制度を実現したが、いまも政治改革にたどり着いていない国もある。経済開発を理解するには、技術革新と拡散のグローバルプロセスの真の複雑さに目を向け、政治、地勢と立地、経済、文化が世界の技術の流れを形作る経路が無限大に存在することを認識する必要がある。経済成長は、気候変動問題や情報・コミュニケーション技術の進化など、今後ますます複雑な要因に左右されるようになる。政治というたった一つの変数で経済成長を説明するやり方では、ますます真実が分からなくなる。

ドイツの覇権という虚構
――追い込まれたベルリン

2012年11月号

ダニエラ・シュワルザー
ドイツ国際政治安全保障研究所ハーバード大学客員スカラー
カイオラフ・ラング
ドイツ国際政治安全保障研究所

2010-11年までは、ヨーロッパの危機対応はベルリンとパリの協調によって主導され、このパートナーシップは「メルコジ」とさえ呼ばれた。だが、いまやフランスのオランド大統領は成長戦略をとることを求め、緊縮財政を求めるメルケルと衝突している。すでにギリシャ、イタリア、スペインでのドイツの評判は悪くなっているし、他の地域でもドイツは悪いイメージでとらえられ始めている。もはやドイツが、支援策をとる見返りに大幅な債務と財政赤字の削減を周辺国に求められる状態にはない。事実、ここまで危機が深刻になると、ドイツが救済パッケージに拒否権を行使すればシステミックな危機が誘発され、共通通貨圏が解体するだけでなく、単一市場のようなより大きな統合の成果さえもが脅かされてしまう。ドイツがヨーロッパ最大のプレイヤーだとしても、自分だけでルールを設定する力はなく、単独で状況を先に進めていくのはもはや無理な状況に陥っている。ヨーロッパの新しい経済・政治行動を形作るのに必要な連帯を組織しようと試みても、ドイツのプランはますます希釈されていく。すでにドイツの指導者たちも、自分たちのビジョンに限界があることを理解し始めている。

次期アジア担当国務次官補の5つの課題

2012年11月

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニアフェロー

「現在の中国の政治制度ではうまく対応できない社会・経済状況が国内で出現しつつある。この状況で、中国政府が国内の安定を重視すれば、その余波が(強硬策として)対外領域に飛び火するために、アメリカとアジア諸国の政策担当者はすでに新しい問題に直面している。この意味において、中国国内の経済的、政治的な不安定化は、地域諸国に直接的な余波をもたらす」

第三の産業革命
―― モノをデータ化し、データをモノにする

2012年11月号

ニール・ガーシェンフェルド
マサチューセッツ工科大学教授

新たなデジタル革命が迫りつつある。今度はファブリケーション(モノ作り)領域でのデジタル革命だ。コミュニケーションや計算のデジタル化と同じ洞察を基盤にしているが、いまやプログラム化されているのは、バーチャルな何かではなく、フィジカルなモノだ。CGデータを元に3次元のオブジェクトを造形する3Dプリンターの登場によって、ベアリングと車軸を、同じ機械で同時に作れるようになった。これをデータからモノを作り、モノをデータ化するための進化する能力と定義することもできるだろう。このビジョンを完成させるにはまだ長期的な研究が必要だが、すでに革命は進行している。だれもがどこででも何でも作れる世界で、われわれはどのように暮らし、学び、仕事をすることになるのか。現在進行中の革命が突きつける中核的な疑問に答えることが、現状でのわれわれの大きな課題だろう。

Page Top