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に関する論文

Foreign Affairs Update
中国の不動産バブルと農民の不満

2013年1月号

ライネッテ・H・オング
トロント大学准教授

中国では依然として政府主導の建設・不動産投資が進められているが、これは、どうみてもリスクの高い投資戦略だ。地方政府は農民から接収した土地を担保に資金を銀行から借り入れ、その後、この土地を売却、あるいはリースすることで得た資金を金利支払いに充てている。北京は、地方政府が負っている債務総額は、中国のGDPの13-36%に相当する5兆―14・4兆元に達すると推定している。民間アナリストのなかには、偶発債務と(地方政府系機関の)間接債務を含めると、債務総額はGDPの50-100%に達しているとみる者もいる。当然、住宅や土地の価格が大きく低下すれば、財政危機と金融危機が起きる。一方で、土地を追われた農民の怒りによって、中国では年間12万件の抗議行動が起きている。

Foreign Affairs Update
中国の経済諜報活動

2013年1月号

ジェームズ・A・ルイス
米戦略国際問題研究所シニアフェロー

中国は、経済諜報活動を、政府系のスパイだけでなく、ビジネスマン、研究者、学生を動員して展開している。そのターゲットには、技術情報はもちろんのこと、企業の契約、合併吸収計画の情報も含まれている。中国だけが経済諜報を行なっているわけではないが、この領域でもっともアクティブな国が中国であるのは間違いない。通信、航空、エネルギー、防衛といった中国の重要産業は、この戦略をうまく追い風にしている。中国が途上国だった当時はこうした国際ルールを無視した行動もある程度は許容できたかもしれない。だが、中国が世界第二位の経済大国となり、軍事的なライバルとなる可能性を秘めている現状では、技術諜報を許容できるはずはない。明確な警告をして報復策をとる必要がある。経済技術諜報という手法が、中国の国際的なリーダーシップと国内の技術開発に悪影響を与えることを北京に理解させる必要がある。

日本衰退論の虚構
――みえない日本の等身大の姿

2013年1月号

ジェニファー・リンド
ダートマスカレッジ准教授

1970―1980年代、われわれは、資本主義の魔法の道筋をみつけた日本はいずれアメリカを経済的に追い抜き、世界的優位を確立するだろうとみていた。だがバブル崩壊とともに認識面での大きな揺り戻しが起き、いまや分析者たちは、日本は末期的な衰退基調にあるとみている。これらはいずれも実像から離れた極端なとらえ方だ。安全保障領域についても、専門家の多くは、日本の抑制的安全保障路線にばかり目を向け、この国が見事な軍事力を整備していることを無視してきた。こうして、「日本は非武装の平和主義国家」とみなされるようになった。そしていまや、対中関係の悪化によって日本の平和主義は終わり、ナショナリズムが台頭していると言われている。問題は、これらの見方が、いずれも日本の実像を見落としていることだ。極端なレンズで日本をとらえようとする人々は間違っているだけでなく、東アジアのパワーバランスを維持する上で日本が果たせる重要な役割を見落としている。アメリカ(そしておそらくは中国を)例外とすれば、日本ほどパワーと影響力をうまく形作れる国もない。

アンゲラ・メルケル首相率いるドイツは、周辺国を支援するには、財政同盟を立ち上げ、政治的統合を深化させる必要があるという立場を明確に示している。一方、国家主権を重視するフランスは政府間交渉によるアプローチに依然としてこだわっている。いまやユーロ危機対応の中枢にあるのは、「ヨーロッパの統合を深化させるかどうか」に関する論争だ。だが、専門家の多くは、ヨーロッパでナショナリズムが高まっている以上、欧州の指導者たちが統合の深化に合意できるとはみていない。仮に財政同盟に必要とされる経済・政治統合を深化させれば、集団的な安全保障政策の基盤も作る必要が出てくる。だが現実には、ヨーロッパの政策決定者が目の前にあるユーロ危機の対応に追われているために、シリア内戦など、全ヨーロッパ的な対応を必要とする外交懸案も放置されたままだ。外交専門家のウォルター・ラッセル・ミードは、すでにユーロ危機はヨーロッパの「経済だけでなく、地政学的重要性」も危機にさらしていると指摘し、CFRのC・クプチャンも、ヨーロッパはうまくいっても、穏当な能力をもつ地域的なプレイヤーにとどまり、下手をすると、地政学的なプレイヤーとしては忘れさられていく運命にあると指摘している。

衰退する日米欧経済

2013年1月号

ロバート・マッドセン
マサチューセッツ工科大学国際研究センター
シニアフェロー

かつては圧倒的なパフォーマンスを誇った日本経済も、バブル経済の崩壊とともに失速し、いまや成長のために、そして再び金融危機に直面するのを避けるために必要な、経済改革に向けた政治的コンセンサスを構築できるかどうかも分からない状態にある。そして、金融危機後のさまざまな対策を通じて「自分たちは日本の二の舞にはならない」というメッセージを市場に送った欧米諸国も、結局、日本の後追いをしている。欧米経済がこの5年間で経験してきたことは、1990年代の日本の経験と非常に似ている。今後の日米欧にとって、社会契約をいかに再定義するかが最大の政治課題になる。予算を均衡させ、再び金融危機に直面するのを回避するには、税率を引き上げ、社会保障支出を削減するしか方法はないからだ。アメリカ、日本、そしてヨーロッパ諸国は、この困難なプロセスとそれが引き起こす社会的緊張への対応に長期的に追われることになるだろう。地政学バランスはすでに東アジアへと傾斜しつつあるが、主役は日本ではない。うまくいけば傍観者として、最悪の場合にはその犠牲者として、日本は東の台頭を見つめることになるだろう。

2013年、世界は中国発の数多くの問題に直面していくと考えられる。CFRのアダム・シーガルは、習近平は政治腐敗対策など国内統治領域の改革に前向きな姿勢を取りつつも、現在進められているサイバー空間の国際的ルール形成をめぐって、より閉鎖的で、主権をベースとするインターネットを促進しようと試みており、欧米との対立は避けられないだろうと予測する。エリザベス・エコノミーは、政治腐敗対策をとり、社会格差の問題に対処し、(輸出・投資主導型)経済のリバランシングを試みることを含めて、中国の新体制は多くの国内課題を抱えていると指摘しつつも、近隣諸国と抱えている領有権問題への対応を余儀なくされるとみる。世界は、習近平が「平和的台頭」や「ウィンウィン外交」にコミットしていると信じる根拠が欲しいと思っていると彼女は言う。

一方、ミンシン・ペイは、(いくぶん緩和されてきているとはいえ)とかく評判の悪い一人っ子政策、そして、治安当局が治安を乱した人物を裁判も経ずに勾留し、強制労働を命じることができる「労働教養」政策を廃止するかどうかが、習近平の改革路線の試金石になるとみる。ヤンゾン・ファンも共産党政府の正統性を維持し、国内消費を刺激するために、中国の新指導層は今後、医療保険制度を含む、社会的セーフティネットの構築に力を入れていかざるをえず、その途上で政治改革が不可欠になると予測している。

トルコのソフトパワーと中東
―― ギュル大統領との対話

2013年1月号

アブドラ・ギュル トルコ大統領

世界的パワーになることが重要なわけではない。重要なのは、可能な限り高いところへと基準を引き上げ、国が市民たちに繁栄と幸せを提供できるようにすることだ。ここで言う基準とは、民主主義と人権だ。これがトルコにとっての究極の目的だ。これらの基準を高度化させていけば、経済はもっと力強くなり、ソフトパワーをもつ国になれる。・・・他の諸国がトルコを模範とし、われわれのやり方に啓発されるとすれば、それは彼らの判断だ。国に浮き沈みはつきものであり、われわれは彼らと連帯する。重要なのは、問題と格闘している人々への連帯を示すことだ。すべての国は平等であり、すべての国家は尊厳をもっている。筋書きを書いた誰かが、その役回りを他の国に押しつけることはできない。(A・ギュル)

サイバー戦争の虚構と現実

2013年1月号

ブランドン・バレリアーノ
グラスゴー大学講師
ライアン・マネス
イリノイ大学PHDキャンディデート

イランのウラン濃縮施設をシャットダウンに追い込んだ「スタックスネット」、テキストやオーディオデータをコピーした上で、ハッキングしたコンピュータ上のすべてのファイルを消し去る「フレーム」。これら洗練されたサイバー兵器の登場で、いずれ、電力供給網、交通システム、金融市場に加えて、政府そのものが脅威にさらされるようになり、今後の国家間関係、外交関係そのものが塗り替えられていくのだろうか。そうなるかどうかは、現状におけるサイバー戦争の抑止と自制のメカニズムが維持されるか、それとも崩れるかに左右される。現状では、いかなる国もまともなサイバーディフェンスを築けておらず、攻撃する側も、もし反撃されたらどうなるかを考えざるを得ず、これが抑止と自制を促している。サイバー戦争が脅威となるのは、それがひどく乱用され、多発するようになった場合、あるいは、サイバー空間の脅威対策に多くの資金がつぎ込まれ、本当の脅威への対応が手薄になった場合だろう。

日本の回転ドア政治を打開するには
――重要なのは経済だ

2013年1月号

ジェラルド・L・カーチス
コロンビア大学教授

欧米にキャッチアップするという目的が達成され、1989-90年にかけて冷戦も終わったために、日本の戦後システムを長く支えてきた支柱は崩壊した。以来、小泉元首相を部分的な例外とすれば、日本の繁栄と安全をいかに維持していくかについて市民を説得できる政治家は登場していない。次から次と政治家が登場して政権を担うが、結局は市民を失望させ、信任を失っている。最大の問題は日本経済が低成長から抜け出せずにいることだ。24時間態勢で紙幣を量産するだけで、経済がどうにかなるものではない。規制緩和、専門職の女性への機会の拡大、移民の受け入れ、社会保障改革、年金改革、税制改革も必要だろう。もっと歳入を増やすと同時に、経済を刺激する方法を見つけなければならない。「どうすれば、失われた20年を経た日本に残されたポテンシャルを開花させ、より迅速に経済を成長に向かわせることができるか。この点について自分たちが何をしているかについて政府が市民を納得させられない限り」、政治プロセスの健全化は望めないだろう。

CFR Update
2013年の世界
― 七つの危機

2012年12月号

ジェームス・リンゼー
米外交問題評議会研究部長

2013年の世界政治を規定する重要な懸案は何か。われわれは、グローバル経済の停滞、アメリカの財政危機、中東での権力抗争、アフガニスタンからの北大西洋条約機構(NATO)軍の撤退、東アジアにおける領有権論争、そしてインターネットの自由をめぐる対立をその主要な懸案として特定した。CFRの予防行動センターは、すでに、2013年における紛争の潜在的帰結をまとめたリポートを公開している。要点を整理すると次のようなものになる。

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