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に関する論文

5年後、アメリカはサウジを抜いて、
世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

2013年2月号

◎スピーカー
ファティ・ビロル /国際エネルギー機関(IEA)、チーフエコノミスト
◎プレサイダー
ゲリー・ロス/PIRAエネルギー・グループ

ヨーロッパの天然ガス価格はアメリカの5倍も高く、アジアの価格はアメリカの8倍にも達する。わずか5年前には、これらの地域の天然ガス価格はほぼ同じ水準にあった。だが、5年間でこれだけの価格差が生じてしまった。価格が高いことが、天然ガスの市場シェアの拡大に歯止めをかけている。たしかに天然ガスは黄金時代を迎えている。だが北米市場を別にすれば、市場シェアの拡大には、ヨーロッパとアジアの価格がアメリカ並みに下がるか、少なくとも、それに近づいていく必要がある。・・・そして、現在からわずか5年後の2017年には、アメリカは、サウジアラビアを抜いて、世界最大の石油生産国になる。これは主に、(シェールオイルなど)非在来型の資源であるタイトオイルを開発できるようになったからだ。こうしたエネルギーシステムの新たな見取り図が、地政学的に何を意味するかを考える段階にきている。

2013年にわれわれが直面する大きな課題は三つあると考えられる。第1はシリア紛争とその余波、そしてイランの核開発問題。第2は、東シナ海、南シナ海の領有権論争が新たな展開をみせることになるかもしれないこと。そして、第3は不安定なグローバル経済だ。・・・東シナ海、南シナ海での領有権問題をめぐって緊張が高まっている環境で、(日中韓に)新指導者が誕生したことの意味合いを考える必要がある。・・・東アジアの新指導者たちは、いずれも権力基盤を固め、支持層に対して問題を処理し、国益を守っていく力があることを示そうと試みるはずだ。当然、各国の指導者が相手国に妥協をするのは非常に難しい情勢にある。・・・しかも、領有権問題にはナショナリズム要因だけでなく、石油、天然ガス、鉱物資源などの経済資源問題も関わっている。・・・グローバル経済も依然として不安定だ。ユーロゾーン経済は失速し、中国経済の成長も減速している。ブラジル経済もインド経済も同様だ。アメリカ経済も非常にゆっくりとしたペースでしか回復していないし、政治対立に足をとられている。・・・

イタリアの緊縮財政拒否でユーロ危機の再燃か

2013年2月号

チャールズ・クプチャン
米外問題評議会シニア・フェロー(ヨーロッパ担当)

反既成政党の立場をとる元コメディアンのベッペ・グリッロ氏率いるポピュリスト運動(五つ星運動)と緊縮財政を批判するシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる自由国民が勢力を伸ばしたことで、イタリア政治は混沌とした状況に陥っている。新政権を組織できなければ、数カ月以内に選挙が再び実施されることになるかもしれない。だが、その間にも緊縮財政への批判が高まり、再度選挙を実施しても、さらに政治的混迷が高まる危険がある。すでに市場は今回の選挙結果にネガティブな反応を示し、株価は下落し、国債の利回りは上昇している。・・・

追い込まれた金正恩
―― 出口のない窮状

2013年2月号

ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授
元米国家安全保障会議(NSC)アジア担当部長

軍務に服することなく、20代後半の若さで権力構造のトップに君臨している金正恩は、現在の体制基盤を強化できるかどうか。それは、彼が権力者としての価値と手腕をもっていることをエリート層に立証できるかに左右される。一連の軍高官の解任劇は、金正恩が、彼らからビジネスの既得権益を奪い取ることで、自らのパトロンネットワークを強化しようとした結果だと考えられる。だがその結果、軍高官の不満は高まっている。韓国に対して強硬策をとって国内的に手腕を示そうにも、すでに、ソウルは北朝鮮の強硬策には大規模な報復攻撃も辞さないと表明しており、軽々に火遊びはできない。中国にさえも見限られた部分がある。しかも、携帯電話の普及とインターネットユーザーの拡大によって北朝鮮社会は変化しつつある。金正恩はいずれ身動きのできない状況へと追い込まれ、アメリカは、北朝鮮の核管理体制の弛緩という悪夢のシナリオに直面する恐れがある。・・・

2013年、米経済の先行きは、わずかながらも明るくなると予測できる。より持続性のある経済成長パターンへと、ゆっくりとながらも構造的適応を遂げつつあるからだ。デレバレッジプロセスもかなり進み、その結果、国内需要が刺激され始めている。とはいえ、失業と格差が、今後も力強い経済への回帰を阻む、足かせであり続けるだろう。(マイケル・スペンス)

ヨーロッパ経済の成長がさらに減速し、周辺諸国における改革路線が圧力にさらされ続け、通貨同盟を強化しようとする試みがほとんど先に進まないようであれば、市場はより厳格なシグナルを発することになるかもしれない。(ロバート・カーン)

マクロ経済政策に関する重要な新トレンドとは、中央銀行が、リセッション下の深刻な失業問題により積極的に対処するために、インフレを一時的に許容するような態度をとり始めたことだ。(マーク・トーマ)

2013年には、中国経済の8%の成長が、失望としてではなく、新しい規範とみなされるようになるだろう。(ユコン・ファン)

2012年末に復活の兆しをみせていた米住宅市場は、2013年には完全な離陸を果たすだろう。(マーク・ザンディ)

シェールガス資源が塗り替える世界の地政学地図

2013年2月号

アビエザー・タッカー テキサス大学オースチン校
エネルギー研究所アシスタントディレクター

非在来型(シェールガス)資源の発見によって世界のエネルギー供給は大きく拡大し、近い将来に、供給が需要を上回るようになる。どうみても、世界のエネルギー価格は今後低下していく。すでに、アメリカの天然ガス価格は、2008年当時と比べて4分の1へと低下し、これが世界的な波及効果を持ち始めている。新技術が可能にしたシェールガス資源の開発によって、いまや経済・貿易領域での国家間の力関係も、エネルギーをめぐる地政学も変化の時を迎えている。これまでよりもはるかに安いエネルギー価格で規定される新しい世界では、石油や天然ガス資源が地政学秩序に与える影響も低下していく。すでにエネルギー供給国・ロシアと消費地域であるヨーロッパの関係は変化しつつあり、ロシアと中国の関係も今後変化していくだろう。この地政学環境の変化によって、資源の富に依存してきた独裁者の命運もいずれ尽きることになるかもしれない。

イギリスのEUジレンマ
――脱退すべきか、踏みとどまるべきか

2013年2月号

ロビン・ニブレット
チャタムハウス ディレクター

「あなたはEUのことが好きですか」とイギリス人に聞けば、「嫌いだ」という答えが返ってくる。「EUから脱退するチャンスがあれば、脱退を支持するか」と聞けば、一部の人は「支持すると思う」と答えるだろう。だが、「イギリスの国内雇用と経済成長をリスクにさらしてもEUから脱退すべきか」と聞けば、人々から明確な答えは返ってこなくなる。つまり、開放的なヨーロッパそして貿易をめぐって、イギリスは主要プレイヤーであり続けたいと考えているが、ユーロのメンバーではないイギリスが、銀行同盟や財政同盟などの経済同盟の深化が必要とするルールに、手足を縛られるのは避けたいと考えている。これが脱退論の背景にある。・・・私はイギリスがEUから脱退する可能性は低いとみている。問題は、仮に国民投票でEU脱退が否決されても、ヨーロッパは「イギリスが本当にヨーロッパにコミットしている」とはもう考えなくなることだ。この場合、イギリスはヨーロッパ政治の傍流に追いやられることになる。(R・ニブレット)

北朝鮮の核実験に中国はどう対処するか

2013年02月

ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授

北朝鮮が核実験を実施するのは、金正日生誕の日である2月16日、あるいは、韓国で新政権が誕生する2月25日前後と言われている。なぜ、国際社会の批判にも関わらず、平壌は核実験を強行しようとしているのか。ブッシュ政権の米国家安全保障会議(NSC)でアジア部長を務めたビクター・チャは、北朝鮮は核実験を通じて国内の権力継承プロセスを進展させ、「核武装国家としての地位を確立したいと考えている」と指摘する。だが、そうした動きは北京との関係も不安定化させている。「平壌は中国国内の貧しい省の一つであるかのように北京に扱われることに反発し」、一方、北京は、「北朝鮮が挑発路線を続け、それを中国は阻止しようとしない」と国際社会から批判されることに困惑している。中国が北朝鮮への支援をすべて打ち切れば、北朝鮮の命運は尽きる。だが、北京は朝鮮半島の統一国家がアメリカの同盟国になるのを望んでいないために、現状で、中国が支援を打ち切るとは考えられない。・・・

先進国社会が高齢化し、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できなくなっている。この現実に、政治が対応できずにいることが世界で多くの問題を作り出している。日本は成長に向けた経済改革についての政治的コンセンサスを構築できるかどうか、いまも分からない状態にあるし、同様に債務と赤字にまみれた米欧も日本経済の後追いをしている。アメリカは、経済的回復へとゆっくりと向かいつつも、依然として政治的膠着で身動きがとれず、ユーロ危機の対応に追われるヨーロッパは、もはや統合の理念さえも見失いつつある。かたや、これまで高成長を維持してきた中国でさえも投資バブルの崩壊で、90年代の日本に似た状況に陥りつつある。問題は、社会、経済の大きな変化に主要国の政府が対応できるようになるまでの混乱期に、対外領域で何が起きるかだ。中国の対外強硬路線は今後も続くのか。日本の防衛戦略はどう見直されるのか。フォーリン・アフェアーズで見通す2013年の世界。

追い込まれた中国共産党
―― 民主改革か革命か

2013年1月号

ヤシェン・フアン マサチューセッツ工科大学教授

これまでのところ、中国が民主体制へと近づいていくのを阻んできたのは、それを求める声(需要)が存在しなかったからではなく、政府がそれに応じなかった(供給しなかった)からだ。今後10年間で、この需給ギャップが埋められていく可能性は十分ある。一人あたりGDPが4000―6000ドルのレベルに達すると、多くの社会は必然的に民主化へと向かうとされるが、すでに中国はこのレベルを超えている。さらに、今後、中国経済がスローダウンしていくのは避けられず、社会紛争がますます多発するようになると考えられる。さらに、中国の政治・経済的未来へのコンフィデンスが低下していくのも避けられなくなり、資本逃避が加速することになる。この流れを食い止めなければ、相当規模の金融危機に行き着く危険もある。政治改革に今着手するか、壊滅的な危機に直面した後にそうするかが、今後、中国政治の非常に重要なポイントになるだろう。

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