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に関する論文

世界経済アップデート
―― 米経済の回復、アベノミクス、中国経済

2013年8月号

◎スピーカー
ルイス・アレキサンダー 野村ホールディングスアメリカ、チーフエコノミスト
シメオン・ジャンコフ 前ブルガリア副首相・財務相
ビンセント・ラインハルト モルガンスタンレー、チーフエコノミスト
◎プレサイダー
セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会地政経済学センター所長

(財政削減のための消極財政による悪影響としての)フィスカル・ドラッグの余波を克服できれば、アメリカ経済は成長軌道に乗り、2014年には3%の成長を期待できると私はみている。・・・現在の日銀と日本政府は、正しい方向に向かっているとみなせるが、日本の場合、(時期尚早に)逆コースをとることも多い。(V・ラインハルト)

私は、今回の新興国経済の変調はターニングポイント的な部分があるとみている。長く続いた新興市場経済にとって非常にポジティブな局面は終わろうとしている。・・・中国経済の成長率が低下していくのは避けられず、投資主導型の成長路線からは離れていかざるを得ないとみている。(L・アレキサンダー)

日本を抑え込む「シルバー民主主義」
―― 日本が変われない本当の理由

2013年8月号

アレクサンドラ・ハーニー 前外交問題評議会インターナショナルフェロー

日本社会は急速に高齢化している。そして高齢者たちには、政治家が現行の社会保障システムに手をつけるのを認めるつもりはない。だが、高齢社会に派生する問題に向き合うのを先送りすればするほど、その経済コストは大きくなる。これが日本の現実だ。事実、政府の年金財源は2032―2038年の間に枯渇するという試算もある。だが、年齢層からみた多数派で、投票率も高い高齢者集団にアピールするようなキャンペーンを実施すれば、政治家はもっとも忠誠度の高い支持基盤を手に入れることができる。こうして、高齢社会が日本経済にどのようなコストを与えることになるとしても、「高齢者に優しい政策」が最優先とされている。高齢層の有権者の支持を失うことに対する恐怖が、政治家が長期的に国の未来を考えることを妨げ、これが若者に対する重荷をさらに大きくしている。1票の格差同様に、世代間の不均衡問題に目を向け、もっと若者の意見を政治に反映させる必要がある。そうしない限り、日本の経済未来は今後も暗いままだろう。

CFR Interview
分裂し、二極化するエジプトの現実

2013年8月号

ジョン・B・アルターマン
戦略国際問題研究所
中東研究ディレクター

軍がモルシを拘束する前段階で、エジプトでは大規模な反モルシ派のデモが起きていた。このデモをめぐって、「民間人の抗議運動と裕福な資本家階級、そして軍や治安組織の一部との間で協力関係が存在した」と報道されている。特にビジネスコミュニティは軍に対してかなり組織的な支援を行っていたようだ。こうしていまやエジプト社会は、軍の行動を支持する人々と、軍は選挙で正当に選出された指導者たちから権力を奪い取ったと考える人々によって二分されている。この現実を前にアメリカは目的を見失い、その外交路線も漂流している。モルシが権力を失った1週間後に、クウェート、サウジ、アラブ首長国連邦が120億ドルの融資を表明したのは偶然ではない。こうした湾岸諸国の資金援助によって、アメリカのエジプトへの影響力はますます低下している。

中国における外国医薬品メーカー黄金期の終わり?――国内産業育成策で変化するビジネス環境

2013年8月号

ヤンゾン・ファン 外交問題評議会シニア・フェロー グローバル・ヘルス担当

多国籍製薬企業にとって中国市場が依然として夢の市場であることに変わりはない。しかし、そのビジネス環境は今や大きく変わりつつある。中国政府は、国内の製薬企業が競争優位に立てるようなルールを選択的に強制しつつあるようだ。すでに、中国政府は特許法を見直し、強制ライセンシング制度を導入して、国内企業による後発医薬品の生産に道を開いている。多国籍企業が当面中国の製薬企業に対する優位を維持するとしても、今後、より困難で複雑なビジネス環境に直面することになるのは間違いない。

Foreign Affairs Update
エネルギーとアメリカのパワー
―― アメリカ衰退論への決別

2013年7月号

トム・ドニロン/前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

エネルギーは国益と国際関係を規定し、国の政策、経済開発、統治、安全保障、環境などの多くに影響を与える。米国内で豊かなエネルギー資源が十分に開発されるようになったことは、アメリカの経済、エネルギー安全保障、地政学的地位にプラスに作用している。だが、世界のエネルギー消費が引き起こす気候変動が、世界環境に桁外れに大きな問題を作りだしているだけでなく、すでに米国家安全保障にとっても脅威になっていることを見落とすべきではない。よりクリーンで持続可能なエネルギーソリューションを各国が模索していく必要があることは、はっきりしている。・・・オバマ政権が発足した当時であれば、アメリカのエネルギーの先行きはその弱点の一つとみなされていたかもしれない。だが、新たな資源が開発されただけでなく、二酸化炭素排出量の削減に成功している以上、いまやエネルギーは永続的なアメリカの強さ、アセットになったとみなせるだろう。

北極圏開発ブームに備えよ

2013年7月号

スコット・G・ボルガーソン / 北極圏サークル共同設立者

夏場の北極圏から氷がなくなるのはいつなのか。その時期は2075年とも2035年とも、あるいは2020年とさえ言われる。これが現実となった段階で北極圏のエコシステムは劇的に変化する。だが、悪いことばかりではない。氷が溶け出すにつれて、世界の石油と天然ガス未確認資源の4分の1と膨大な鉱物資源を含む、北極圏の豊かな資源へのアクセスが開かれつつある。夏場に誕生する北極海の航路によって太平洋と大西洋間の距離は数千マイル短くなり、いずれ北極海がグローバルな海洋ルートの拠点になるポテンシャルも生まれている。さらに、北極海周辺諸国はこれまでのライバル競争をやめて、協調するようになった。アンカレッジやレイキャビクのような都市はいずれ主要な海洋輸送の拠点、金融センターとして、高緯度におけるシンガポールとドバイのような役割を果たすようになるかもしれない。最大の試金石は、環境と開発のバランスをいかにうまくとるかにある。

米陸軍を地上配備型ミサイル戦力へ進化させよ
―― 歩兵・砲兵部隊からの進化を

2013年7月号

ジム・トーマス/戦略予算分析センター研究部長

戦略的にも予算面でも逆風にさらされているため、国防予算削減の多くが米陸軍に押しつけられ、陸軍は今後その価値と役割を失っていくと考えられている。たしかに、第二次世界大戦後に戦艦が空母に取って代わられていったように、装甲部隊や機甲師団は今後衰退していくだろう。だが、陸軍が世界の重要地域に配備される地上配備型のミサイルシステムへと戦力の重心をシフトさせれば、新状況に適応できる。米陸軍は、敵の戦力投射能力を阻む独自のA2ADシステムを確立すべきだろう。特に日本から南シナ海までの島嶼群にミサイルランチャーを配備すれば、日本やフィリピンが中国による潜在的攻撃から国を自分たちで守る助けになるし、有事の際に、中国海軍の行動の自由を制約できる。地上配備型ミサイル戦力を重視すれば、米陸軍はアジア重視戦略にも有意義な貢献ができるはずだ。

経済相互依存で日中紛争を抑え込めるか
―― ナショナリズムかそれとも貿易か

2013年7月号

リチャード・カッツ
オリエンタル・エコノミック・リポート誌編集長

尖閣問題をめぐって緊張が高まっているとはいえ、現状では日中の経済相互依存とワシントンの防衛コミットメントによって、何とか平和が保たれている。もちろん、この海域で武装した(日中の)船が偶発的に衝突すれば、意図しない紛争へとエスカレートする危険もある。だが、より重要なポイントは、日中の経済的相互依存が紛争のリスクを抑え込めるかどうかだろう。安倍晋三首相が、2012年の選挙キャンペーンで表明した強硬路線を手控えているのは、日本が経済的に中国に依存していることで、ある程度説明できる。中国も同様で、その輸出主導型経済は(日本からの)輸入に依存している。2013年3月に北京で開かれた日中経済協議の際に中国の李克強首相はメディアに対して「自分が日本の財界指導者と握手している様子を写真にとらないように」と要請したかもしれないが、それでも、日本の経済指導者たちに対中投資を要請している。雇用と歳入を求める中国各省の政府も、危機が先鋭化した後も、日本企業に中国での事業を拡大するように強く求めている。現状では、相互抑止の経済バージョンがエスカレーションを抑え込んでいる。

中国はドローンを何に用いるつもりなのか

2013年7月号

アンドリュー・エリクソン 米海軍大学准教授
オースチン・ストレンジ  米海軍大学中国海洋研究所リサーチャー

「中国や他の独裁国家がドローンを入手したらどうなるか」と気を揉む段階はすでに終わっている。すでに中国はドローンを保有している。問題は、いつ、どのようにこれを使用するかだ。専門家は、中国空軍だけでも280機以上の戦闘用ドローンを保有しているとみている。これは、アメリカを例外とすれば、中国が世界最大の規模のドローンと洗練された関連技術基盤を持っていることを意味する。引退した彭光謙(ポン・グワンチエン)元少将が2013年に認めたように、中国は、日本との領有権論争を抱える尖閣諸島(中国名―釣魚島)の写真を撮るためにすでにドローンを利用し、北朝鮮との国境地帯の動きを監視するのにもドローンを用いている。たしかに、内政不干渉の原則と主権を重視する中国は、外国に対するドローン攻撃には慎重な立場を崩していないが、偵察・監視を超えて、敵のシステムのジャミングなどの電子戦争支援、ミサイルなどによるピンポイント攻撃のターゲット特定など、中国がドローンを兵器としてではなくとも、軍事行動の支援ツールとして利用する可能性は十分にある。

世俗化する社会とキリスト教一致運動
―― ベネディクト16世の遺産と新教皇

2013年7月号

ビクター・ゲタン
ナショナル・カトリック・レジスター紙記者

キリスト教は11世紀に東方教会と西方カトリック教会に分裂し、16世紀の宗教改革(プロテスタント運動)でさらに分裂した。だが21世紀の現在、キリスト教はこうした過去の亀裂を修復しつつある。2013年に教皇を退任したベネディクト16世は「キリスト教の一致」を強く模索し、2012年の司教会議に招いたゲストの中にはロシア正教会のイラリオン渉外局長、トルコ正教会のバルトロメオ1世がいた。そして、ここで演説を行ったのは英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教だった。この流れは、先進国における世俗化と物質主義の波によってキリスト教の存続が脅かされているという危機感を各派が共有していることによって形作られている。「キリストは神であり救い主であり、隣人を愛することは信仰上の義務である」という信念に比べれば、これまでキリスト教の一致を妨げてきた教理上の違いなど取るに足らないという認識が高まりつつある。

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