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に関する論文

CFR Interview
紛争後のシリア
―― 宗派間の和解を模索せよ

2013年8月号

ダニエル・フィルポット
ノートルダム大学政治学教授

アサド政権はアラウィ派とキリスト教徒を保護しつつも、他の中東の独裁者たち同様に、むしろ、アラブ・ナショナリズムを基盤とする世俗主義を重視してきた。そのアサド政権が倒れれば、シリアはスンニ派のイスラム国家になると考えられる。ここに宗派間紛争のルーツがある。イラクでは、独裁者が社会に強制した世俗主義の重しが、サダム・フセイン政権の崩壊で外れると、宗教や宗派に根ざす熱い感情が一気に噴出した。同じことがシリアでも起きるかもしれない。アサドが倒れた後に、(宗派間紛争だけでなく)世俗派勢力とイスラム主義勢力が抗争を展開するようになる危険もある。外交交渉で紛争を解決できる見込みは乏しく、犠牲者の数が増えるにつれて、人々の心の傷はますます深くなり、憎しみや復讐心も大きくなっていく。こうした敵意にみちた感情を落ち着かせ、人々の心の傷を癒すために、宗教各派の指導者を和解に向けて接触させない限り、シリアにおける安定した平和は望めないだろう。

金融政策と財政政策の間
―― イギリスの失策から何を学ぶ

2013年8月号

◎スピーカー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
J・ブラッドフォード・デロング カリフォルニア大学教授
◎プレサイダー
ギデオン・ローズ フォーリン・アフェアーズ誌編集長

「バーナンキは金融緩和に向けてこれまですぐれた措置をとってきた。だがいまでは、われわれは非伝統的な金融政策からは可能な限り、手を引いていくという立場を示唆している。これは、(われわれ金融当局は十分に手を尽くしたのだから)依然として経済が停滞しているのは議会と大統領のせいだと言っているようなものだ。経済の停滞という現状は、財政当局(政府)に責任があり、いまや金融当局としては、長期的な金融の安定に配慮しなければならない。これがバーナンキの本音だろう」。(B・デロング)

「スペイン同様に、イギリスが自国の経済を袋小路に追い込んでしまったのは、中途半端な金融緩和をとり、一方で財政緊縮策をとってしまったからだ。現在、日本は、当時のイギリスとは全く逆のことをしている。日本銀行はついに、われわれが求めてきたような、大胆な量的緩和策をとり、経済は回復しつつある」。(A・ポーゼン)

イギリスがEUから脱退すれば
―― ヨーロッパもイギリスも敗者となる

2013年8月号

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニア・フェロー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
◎プレサイダー
マイケル・モセティッグ PBSニュースアワー

「外交的なメタファーで言えば、現在のイギリスは、米ソが対立していた冷戦期のドイツ、米中対立のなかの日本のような存在だ。ヨーロッパで起きていること(銀行同盟・財政同盟)に引き込まれてもかまわないと思うほどに近い関係にあるわけではないが、流れから取り残されてもかまわないと思えるほどに遠い存在でもない」。(A・ポーゼン)

「現状では、ユーロを導入しているのは17カ国、導入していないEUメンバー国が11カ国だ。ある意味では、一定のバランスがある。だが、ユーロを導入していない第2集団がますます小さくなり、残されるのがイギリスとブルガリアだけになった場合にどうなるか。・・・イギリスは、最終的にEUからの脱退へとつながる道を歩みつつある。・・・イギリスがEUから脱退すれば、政治史における自己孤立のもっとも顕著な事例として記憶されることになるだろう」。(C・クプチャン)

急速に悪化する米ロ関係

2013年08月

スティーブン・セスタノビッッチ 米外交問題評議会シニア・フェロー(ロシア担当)

いまや米ロ関係のリセット路線は過去の話だ。この6-9ヶ月間に、両国が協議してきた重要な案件、シリア、イランにはじまり、ヨーロッパへのミサイル防衛の強化、新START条約の目標を拡大する戦略核削減の提案、プーチンが重視する貿易と投資など、どれ一つをとっても進展はない。これに加えて、現在の米ロ関係には、人権問題、スノーデン事件など、ネガティブな要素が数多く存在する。これまでリセットを機能させてきた要因が消失してしまっている。スノーデンを受け入れると表明している国への渡航を、ロシアがアレンジする方法は数多くあった。これらのやり方をとれば、ロシアは問題を解決できていたかもしれない。そうしなかったことにオバマ政権は憤慨し、その結果、オバマが面目を保つ形でモスクワを訪問するのは難しくなった。

NSAの無節操なスパイ活動
―― 安全保障とプライバシー保護の間

2013年8月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
アブラハム・ニューマン ジョージタウン大学准教授

NSA(米国家安全保障局)がEU(欧州連合)に対して諜報活動を行っていたことが露見すると、ヨーロッパの指導者たちはアメリカに対する怒りを露わにした。ドイツ政府のある高官は、アメリカのやり方は「冷戦期におけるわれわれの敵の手法を想起させる」と状況を皮肉った。長年にわたって、対テロをめぐる情報共有とプライバシー保護のバランスを協議してきた米欧間には情報活動に関する一定の了解と合意がこれまで存在し、当初、ヨーロッパはアメリカに苦言を呈しつつも、比較的落ち着いた対応をみせていた。だが、テロとは何の関係もないEUの官僚たちをNSAが監視対象にしていたことが発覚すると、ヨーロッパにおける振り子は安全保障から再びプライバシーの保護へと大きく振れ、米欧関係は動揺している。ワシントンが関係修復を望むのなら、アメリカもヨーロッパ同様に、政府から独立したプライバシー保護のための組織を国内で立ち上げ、安全保障とプライバシー保護のバランスをとるべきだろう。

ムスリム同胞団の終わりなき戦い

2013年8月号

エリック・トラガー 近東政策ワシントン研究所 次世代フェロー

「モルシは選挙で選ばれた大統領であり、まだ任期を3年残している。モルシに任期を全うさせた上で、彼が良い大統領だったか、悪い大統領だったか、次の選挙で審判を仰げば良い」。モルシの復権、これがムスリム同胞団の立場だ。一方、エジプト軍にとって、権力の座から一度引きずり降ろした人物を復権させるのは、明らかに自滅的な行動だ。ジハード主義を内包する同胞団は、軍が分裂することを期待しつつ、今後も戦いを挑んでいくだろう。互いに相容れぬ利益をもつエジプト軍とムスリム同胞団は、おそらく、終わりなき抗争を繰り広げることになるだろう。エジプトが先に崩壊するのでない限り、どちらかが倒れるまで紛争は続くだろう。

いまや問われているのは、アメリカがシリアに対する軍事行動を起こすかどうかではなく、どのように行動を起こすかだ。おそらく、船あるいは航空機から巡航ミサイル攻撃が実施されるだろう。ターゲットはシリアの化学兵器能力そのもので、具体的には、化学兵器貯蔵施設、あるいは、化学兵器を使用した部隊などが考えられる。さらに、シリア軍の指揮統制、軍事能力、政治指導者など、他にも攻撃のターゲットの潜在リストは数多く存在する。但し、主要な目的はシリア政府がこれ以上化学兵器を用いないようにすること、そして大量破壊兵器の使用を抑止するグローバルな規範を強化することだ。ワシントンには、シリア内戦の主要なプレイヤーになるつもりはないだろう。・・・・攻撃の国際的正統性は安保理からは得られないとしても、攻撃を支持する外交的な有志同盟は相当な規模に達する。但し、実際にはシリアへの軍事攻撃を試みるのは、アメリカと一握りの諸国にとどまるだろう。

シリアの崩壊を食い止めるには
―― 交渉実現のための部分的軍事介入を

2013年8月号

アンドリュー・タブラー
ワシントン近東政策研究所シニアフェロー

もはやシリア情勢に傍観を決め込むのは許されず、いつ、どのように、どのくらいのコストを用いてシリア紛争の解決を試みるかが問われている。大規模な難民危機が起きたり、危険な兵器がジハーディストやクルド人分離勢力などテロ集団の手に落ちたりすれば、ワシントンの同盟勢力であるイラク、イスラエル、ヨルダン、トルコの安全保障が直接的に脅かされる。さらに、崩壊によってテロリストが、自由に活動できる破綻国家へとシリアが姿を変えていく危険もある。シリアの崩壊を食い止め、肥大化する脅威を封じ込めるには、すべての勢力を交渉テーブルに着かせることを目的とする部分的な軍事介入を試みる必要があるだろう。飛行禁止空域を設定し、イラク国内にいる反体制派と直接的に協力し、国家再建の道を模索する必要がある。

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