パキスタン軍と最高裁と政治
―― 軍事クーデターからソフトクーデターへ
2013年5月号
パキスタンにおけるクーデターはいつも同じ筋書きになっている。軍が権力を奪取する場合、先ず社会的支持を確保するために、政治危機を喧伝し、軍の政治介入(クーデター)に正統性があるかのような演出をする。クーデターに成功すると、陸軍参謀総長が大統領に就任し、戒厳令を敷いて法の執行を停止し、議会を解散する。この段階で、最高裁の判事たちは、新大統領としての陸軍参謀総長への忠誠を誓う。忠誠を誓うのを拒んだまともな判事たちは、引退するか、退職させられ、このポストは軍に忠誠な人物に委ねられる。・・・だがここにきてパキスタン軍も、軍事クーデターを民衆がもはや支持しないことに気づき始めたようだ。しかし、軍と裁判所が対立したチョードリー事件以降も、依然として軍と裁判所は手を組んでいる。そしていまや軍は自分たちの名代として私人を使った「ソフトクーデター」という手法を取り始めている。