1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

に関する論文

なぜアメリカの教育は失敗したか
―― 諸外国の成功例に学ぶ

2013年6月号

ジャル・メータ
ハーバード大学教育大学院アシスタントプロフェッサー

アメリカの小・中・高校生の3分の2以上は読解力や情報の暗記といった基本的スキルは身につけているが、情報の応用や分析をうまくこなせるのは、その3分の1にすぎない。世界的に見ても、高度な思考力という指標では、アメリカの生徒は中レベルの評価に甘んじている。問題は、(生徒の学力について)教師と学校の説明責任を政府が問うことで、子供の学力を高めようとしていることだ。これに対して、実際に子供の学力が高い諸国は、現場に投資することで、教育体制の「品質管理」を実現している。こうした諸国では生徒の学力が高まると、政府の教育投資への世論の支持が高まり、教師という仕事の魅力も高まるという好循環が存在する。工場労働が全盛期の時代に作られたアメリカの学校制度は、21世紀の経済が要求する複雑な学習と批判的思考を生徒たちに身につけさせる内容と体制になっていない。ゼロから新しいシステムを構築し、教師の仕事を高度な専門職として位置づけて、教職を再確立する必要がある。

アフリカの経済ブーム
―― なぜ楽観論と悲観論が共存しているか

2013年6月号

シャンタ・デバラジャン
世界銀行チーフエコノミスト(アフリカ担当)ウォルフガング・フェングラー
世界銀行リードエコノミスト
(エリトリア・ケニア・ルワンダ担当)

力強いマクロ経済政策を導入したアフリカ諸国は、グローバル経済危機前にピークを迎えていた資源ビジネスブームを追い風に成長を続け、ブーム崩壊後も、失速を逃れた。楽観主義者は、このトレンズに注目して、アフリカの経済ブームは今後も続くと考えている。だが、経済成長の多くが政治改革によって刺激されているのは事実としても、より永続的なアフリカ経済の変革を妨げる障害も政治領域にある。こうして悲観論者は、資源輸出が低調になったときに経済を支えるような抜本的な改革をアフリカ各国が実施していないこと、そして、政治腐敗がインフラ、教育、医療面での改善を阻んでいることを問題視している。楽観論、悲観論のいずれも、すべての側面は見通せていない。だが、今後数十年のアフリカを言い当てているのはむしろ楽観論のほうかもしれない。情報とコミュニケーション技術の進化が促す社会的開放によって、アフリカが経済成長を持続し、貧困層の削減に今後も成功する可能性は十分にある。

イラン大統領選挙の政治地図
――ラフサンジャニ・ショックと次期大統領ポスト

2013年6月号

ファリデ・ファーヒ
ハワイ大学教授(非常勤)

保守派候補のなかでもっとも人気があるのはテヘラン市長のモハンマド・バゲル・ガリバフだと考えられている。保守系の候補者たちは、特定の段階になれば、もっとも人気のある候補を残して、他の二人は選挙戦から撤退することにすでに合意している。一方、かつて核問題の交渉を務めた中道派のハッサン・ロウハニも独立系候補として出馬している。ラフサンジャニが出馬を認められなかった以上、ロウハニは、自分を保守派候補に対する代替策として位置づけたいと考えている。だがロウハニはハタミ大統領の第1副大統領を務めたモハンマド・レザ・アレフとライバル関係にある。彼らは先ず候補者を、一人か二人に絞ってまとまることに合意できるかどうかを決める必要がある。・・・ハメネイが、保守派候補が好ましいと考えているのは明らかだが、最高指導者の意中の候補がはっきりしないために、誰が選挙で勝利するのか、ますます分からなくなっている。

CFR Interview
シリア和平への困難な道筋
――米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

2013年6月号

フレデリック・ホフ
大西洋評議会シニアフェロー

アメリカはシリアの反体制派を、ロシアはアサド政権を説得して、紛争の終結に向けた交渉テーブルに着かせようとしている。だが、交渉の目的が、「平和的でうまく管理された完全な体制移行を実現すること」だとすれば、国際会議が成功する見込みはほとんどない。・・・現状では、コミュニティ、都市、町ごとにさまざまな武装集団が存在し、これらのすべてが自由シリア軍を自称している。ワシントンは反体制派、自由シリア軍を一つにまとめようと試み、シリア最高軍事評議会に指揮系統を集中させ、支援とコンタクトの一元的な窓口にしたいと考えている。・・・一方、アサド政権を交渉テーブルにつくように説得するというロシアの任務の難易度は非常に高い。しかも、この数週間という単位でみると、アサド政権の部隊は、反体制派から一部の地域を奪回している。これはイランとヒズボラの戦士が戦術を考案し、攻撃を実施した上で、攻略した地域をシリア軍に明け渡したからだと報道されている。・・・・

Foreign Affairs Update
グローバル貿易を蝕む
――政治腐敗と知的財産の盗用

2013年5月号

パメラ・パスマン/CREATe・org代表

多くの国で政治腐敗と知的財産の盗用がビジネスにつきまとう隠れたコストを作り出し、そのダメージは膨大な規模に達している。2010年に国連が発表した推定によると、政治腐敗によって毎年世界のGDPの5%以上が失われている。別の言い方をすれば、賄賂に1・5兆ドル以上が費やされていることになる。知的財産の盗用も同じく大きな問題となっている。2008年当時6500億ドル規模だった偽造品や著作権侵害被害による経済損失は、2015年には1兆7700億ドルに達すると予測されている。偽造と著作権侵害が犯罪ネットワークの大きな資金源となっていることも問題だ。しかも、偽造医薬品や自動車部品・航空機部品の偽造品はうまく作用・作動しないだけでなく、大きな物理的危険を伴う。これらの問題をめぐって、国際機関にできることは限られており、いまこそグローバル・サプライチェーンにおける「責任あるビジネスプラクティス」を促進する民間主導のプログラムを真剣に検討するタイミングだろう。

米・パキスタン同盟の創造的破壊を
―― 同床異夢同盟の歴史と破綻

2013年5月号

フセイン・ハッカニ / 前駐米パキスタン大使

アメリカとパキスタンの関係はすでに修復不能な状態にある。パキスタン人の80%がアメリカを嫌っており、74%が敵だと考えている。米政府はパキスタンへの援助打ち切りを示唆し、一方、パキスタン軍は米軍のドローンによる領空侵犯から主権を守ると反発している。だが、考えてみれば、アメリカとパキスタンの関係が良好だったことはこれまでも一度もない。アメリカは冷戦期にはソビエトと中国に対する拠点として、9・11以降はタリバーンとアルカイダを叩くために、パキスタンとの同盟関係を望み、一方のパキスタンはインドに対するライバル意識から、ワシントンの軍事援助を確保しようと、アメリカとの連帯と同盟関係に応じてきた。結局のところ、共にその価値を信じていない同盟関係に双方がしがみついているにすぎない。いまや「同盟ではない新しい関係」の構築を模索すべきタイミングだろう。関係を前進させる最善の機会が、その関係が終わったことを認めることで始まる場合もあるのだから。

ラデク・シコルスキはポーランドのビドゴシュチで育ち、1981年春に共産党政権に反対する学生ストライキ委員会を主導した経験がある。その年の後半にヤルゼルスキ政権が戒厳令を敷いたとき、彼はイギリスに留学していた。シコルスキは、1982年から1989年までイギリスで政治亡命者として生活している。オックスフォードを卒業した彼は、ジャーナリストになり、1989年の民主革命後にポーランドに帰国し、政界に身を転じた。1992年にポーランドの国防副大臣に就任した後、1998―2001年に外務副大臣、2005―2007年に国防大臣を務めている。2007年末以降は、ポーランドの外相として活動している。聞き手はギデオン・ローズ(フォーリン・アフェアーズ誌編集長)

CFR Interview
「ビッグデータ」のポテンシャルと文化

2013年5月号

ケネス・クキエル
エコノミスト誌データエディター
ビクター・メイヤー=ションバーガー
オックスフォード・インターネット研究所教授
(オックスフォード大学)

これまでは、事件や人々の感情を知的に分析し、不確実で危険な世界にあっても賢明な対策を示す手腕が人々の敬意の対象とされてきた。・・・だが、いまではわれわれの道具箱にはより多くのツールが入っている。低コストでデータを収集し、分析できるようになった。つまり、外交政策を理解し、実践する上でデータを利用しないとすれば、愚かだし、それは危険なまでに情緒的な判断に依存し続けることを意味する。(K・クキエル)

中国では、道路、鉄道、送電グリッドなどの物的インフラの整備、一方で環境汚染や政治腐敗などの問題対策にビッグデータを利用できると考えられている。つまり、中国におけるビッグデータは、・・・変革を求める社会的流れを作り出すポテンシャルも秘めている。(ビクター・メイヤー=ションバーガー) 

東地中海天然ガス資源と領有権論争

2013年5月号

ユーリ・M・ズーコフ
ハーバード大学ウエザーヘッドセンター・フェロー

東地中海の海洋資源開発に派生する論争が、かねて存在した地域的緊張をさらに深刻にしている。イスラエルのハイファ沖合にあるタマルとリバイアサンという二つのガス田には、合計26兆立方フィートの天然ガス資源が存在すると推定され、キプロスの沖合にあるアフロディーテ・ガス田にも7兆立方フィートの資源が存在すると言われる。しかし、イスラエルの資源海域にはレバノンが、キプロスの資源海域には北キプロスが同様に領有権を主張している。トルコもさまざまな思惑をもっている。この環境では、偶発事件が紛争へとエスカレートしていく危険がある。すでに交渉で地域合意を形成する機会は失われつつあり、おそらく、外的パワーの関与なしには、危機は制御できないだろう。問題は、その外的パワーがどの国になるかだ。

Page Top