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に関する論文

模倣せよ、本物を造れるまで
―― 中国経済のイノベーションとイミテーション

2013年8月号

カル・ラウスティアラ/カリフォルニア大学ロサンゼルス校 国際関係センター所長
クリストファー・スプリグマン/バージニア大学法科大学院特任教授

知的所有権、著作権の侵害行為には破壊的な側面もあるが、生産的な側面もある。中国政府が模倣活動に目をつぶり、ときにそれを奨励しているとしても、欧米企業が直ちに大きなダメージを被ることはない。中国ではまだほとんどの人々が貧しく、欧米製品を買えるのは一握りの富裕層に過ぎないため、コピー商品が必ずしも欧米企業の売り上げを低下させるとは限らないからだ。それどころか、コピー商品は、オリジナル製品の効果的な前宣伝になることが多い。かつてのアメリカも模倣経済国家だったことを思い出すべきだ。ベンジャミン・フランクリンはイギリスの作家の本を許可もなくアメリカで出版し、これに対してチャールズ・ディケンズは、多くのイギリス人作家の感情を代弁して、「アメリカ人が私の本で莫大な利益を上げても、そこから6ペンスも得られないというこの上ない正義」と皮肉ったものだ。だが、アメリカで海賊版が幅広く流通したことが彼の社会的認知度を高め、後にディケンズはアメリカで一財産を築くことになる。中国の模倣活動をうまく管理し、そのマイナス面とプラス面の双方をバランスよくとらえるべきだろう。

CFR Interview
E・スノーデン事件を法的に検証する
―― 米政府の認識にも問題がある

2013年8月号

スティーブン・I・ブラデック / アメリカン大学教授

ロシアへの一時亡命が認められたエドワード・スノーデンが、アメリカに送還されるかどうか。現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、これは、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。仮に告発の意図があったとしても、スノーデンは政府が所有する情報を盗んだだけでなく、告発手続きの相手であるNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、その情報を漏らすべきではない外国メディアに提供することで、手続きを踏み外している。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンはアメリカの内部告発者保護法の適用対象にはならない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常に大きな変数が絡んでくる。陪審制度の大きな機能の一つは、政府と検察の権力をチェックすることにある。仮に送還が実現して、裁判になるとして、スノーデンの運命を左右する12人の陪審員の一部は彼に同情しているかもしれない。・・・外国情報監視法(FISA)によって、政府による情報活動は適切な監督下におかれ、説明責任も果たされているという米政府の認識には問題がある。どのような結果になるにせよ、法律がテクノロジーの進化についていけていないのは間違いない。デジタル時代のプライバシーが何であるかについて、われわれはもう一度考える必要がある。

CFR Briefing
欧州市場は再び不安定化へ
―― ディセンバーサプライズ?

2013年8月号

ロバート・カーン/米外交問題評議会国際経済担当シニア・フェロー

多くの人が指摘するように、ヨーロッパでは危機への対応疲れがみられる。これは、ユーロゾーン全域でみられる各国政府に対する批判の高まり、緊縮財政への反発、あるいは反エスタブリッシュメント政党の台頭などからも明らかだろう。・・・さらに、9月に予定されるドイツの連邦議会選挙が終わるまで(そして、ECBの資産購入プログラムに関する独憲法裁判所の判断が示されるまでは)、依然として困難な状況にあるヨーロッパの周辺諸国に支援が提供されることはあり得ない。今後、銀行と政府に対する圧力がさらに高まっていけば、ECBの債券購入計画はたんなるブラフにすぎなかったという疑問が出てくるかもしれない。ユーロメンバー国がECBによる債券購入の条件(コンディショナリティ)をめぐって、スムーズに合意できるとも考えにくいし、ECBが独自に条件を緩和できるとも考えにくいからだ。・・・秋には、ヨーロッパの金融市場の小康状態は終わり、再び変動期に突入することになるかもしれない。

Foreign Affairs Update
誰がエジプト経済を救うのか
―― 湾岸諸国と変化する援助構図

2013年8月号

マリナ・オッタウェイ/ウッドロー・ウイルソンセンター シニアスカラー

2011年にホスニ・ムバラクが権力を失って以降、エジプトの歳入レベルは大きく低下した。ビジネスは停滞し、混乱する政治状況ゆえに投資も干上がり、一方で、歳出は増大の一途をたどった。外部からの資金援助が必要だったが、エジプトはIMFに背を向けてしまった。「国家としてのプライド」。これが、IMFの条件(コンディショナリティ)の受け入れをエジプトが拒んだ大きな理由だった。一方で、湾岸諸国がこのアラブ世界の中枢国に進んで援助と融資を提供した。だが、いくら援助を確保しても、経済改革をしないことには根底の問題は解決されない。こうして、エジプト社会はいまも不満を抱く材料には事欠かない状況にある。対応が必要なシステミックな問題に直面した諸国にとって、改革を先送りできる援助を友好国から確保できても、必ずしも助けになるわけではない。エジプトはIMFと世界銀行ならうまく提供できるが、湾岸諸国にはできない支援とテクニカルなアドバイスを依然として必要としている。

流動化する中東政治
―― エジプト、シリア、イラン

2013年8月号

エドワード・P・ジェレジャン
ライス大学 ベーカー公共政策研究所所長

エジプトのシシ国防相は、ムスリム同胞団の暫定政権への参加を閉ざさないと表明しているが、同胞団が今回の政変劇を覆すような動きに出れば、エジプト、そして中東地域にとって最悪の事態になりかねない。シリアはすでに破綻国家へと転落しつつあり、政府と反体制派を交渉させない限り、停戦への道は閉ざされたままとなる。だが、依然として国際交渉に向けたアメリカとロシアの立場の違いは埋まっていない。近く穏健派の新大統領が誕生するイランは核開発問題を抱え、シリアを軍事的に支援し、イラク南部への影響力を拡大させている。一方、スンニ派湾岸諸国はイランの覇権が広がる可能性に危機感を募らせている。(エジプト、シリア、イランの)問題や危機のすべては関連している。ワシントンは、中東地域全域への一貫性のある戦略を考案し、この戦略枠組みのもとで、各国への政策を調整し、相互に関連性をもたせる必要がある。

ヨーロッパ連邦の形成を
―― 次なるヨーロッパプロジェクト

2013年8月号

ニコラス・バーググルーエン バーググルーエン統治研究所理事長
ネイサン・ガーデルス ニューパースペクティブ・クォータリー編集長

「世界の人口の7%が暮らし、世界の経済生産の25%を担う現在のヨーロッパは、世界の社会関連支出の50%を拠出している」。メルケル独首相のこの発言が示唆するとおり、(この人口・経済生産・社会保障支出間の不均衡を)改革を通じて是正していかない限り、ヨーロッパの福祉国家を財政面で支えていくのはますます難しくなる。より踏み込んだ制度的改革も必要だ。EU(欧州連合)を構成する欧州委員会、欧州理事会、欧州議会の正統性を強化し、EUを、単一通貨を支える共通の財政・金融政策をもつヨーロッパ連邦へと進化させていかない限り、ヨーロッパはこれまで同様に未来においても不安にさいなまれることになる。さまざまな不確実性のなかでヨーロッパが直面する課題に対応していく唯一の方法は、ヨーロッパの指導者と市民が、前に踏み出すのを嫌がって機能不全状況のなかに身を置き続けるのではなく、ヨーロッパ連邦の形成という壮大な変革ビジョンにコミットし、前に歩き始めることだろう。

CFR Interview
薄熙来公判と中国の法の支配
―― 高まる社会不満と指導層の混乱

2013年8月号

ジェローム・コーエン
ニューヨーク大学教授

中国では、政治腐敗を含めて、とにかく不正に対する人々の反発が高まっている。社会不満を感じる多くの人々は、自分たちの声が社会に反映され、高潔さと社会的調和を重視する裁判を求めている。それだけに薄熙来の公判は人々の大きな関心を集めた。(毛沢東主義的な見せしめ裁判としての思惑と側面があったとしても)、公判中に彼が発言し、自分で弁護することが許されたこと、それが、共産党の政治裁判では非常に珍しいケースであることを、彼の支援者を含む、多くの人が感じたはずだ。さらに、一部検閲されているとはいえ、彼の発言は文書化され公開された。これは中国における法の正義にとっては、画期的な進歩だ。だが、政治腐敗その他への高まる社会不満は政府に圧力として跳ね返ってきており、これが今後、どの程度深刻化していくかわからない状況にある。習近平体制は大きな混乱のなかにある。

E・スノーデン問題を法的に検証する
―― 彼の行動は内部告発とはみなせない

2013年8月号

スティーブン・I・ブラデック アメリカン大学教授

ロシアへの一時亡命が認められたエドワード・スノーデンが、アメリカに送還されるかどうか。現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、これは、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。仮に告発の意図があったとしても、スノーデンは政府が所有する情報を盗んだだけでなく、告発手続きの相手であるNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、その情報を漏らすべきではない外国メディアに提供することで、手続きを踏み外している。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンはアメリカの内部告発者保護法の適用対象にはならない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常に大きな変数が絡んでくる。陪審制度の大きな機能の一つは、政府と検察の権力をチェックすることにある。仮に送還が実現して、裁判になるとして、スノーデンの運命を左右する12人の陪審員の一部は彼に同情しているかもしれない。・・・外国情報監視法(FISA)によって、政府による情報活動は適切な監督下におかれ、説明責任も果たされているという米政府の認識には問題がある。どのような結果になるにせよ、法律がテクノロジーの進化についていけていないのは間違いない。デジタル時代のプライバシーが何であるかについて、われわれはもう一度考える必要がある。

北朝鮮は経済改革を模索している
―― 崩壊か経済改革か

2013年8月号

ジョン・デルーリー 延世大学国際関係大学院准教授

北朝鮮は2030年までに崩壊すると予測する専門家もいるが、平壌はすでに中国流の経済改革導入への道を歩みつつあるとみなすこともできる。これを理解するには、中国はどのような手順で改革へと歩を進めたかを考える必要がある。1960年代に核兵器を獲得した北京は、1970年代に対米デタントによって体制の安定と安全を確保した上で、経済改革路線を優先させるようになった。つまり、今日の北朝鮮は1970年の中国同様に、経済改革に着手する前に、まずワシントンから体制の安全に関する保証を取り付けたいと考えている段階にある。金正恩は「経済建設」の次の局面に進みたいと考えていると示唆し、4月1日には実務派テクノクラートの朴奉珠を首相に登用して、経済成長の舵取りを委ねている。朴奉珠が北朝鮮の首相に抜擢されたこと自体、金正恩が経済を重視し、改革志向を持っていることの現れとみなせる。平壌の穏健派に力を与えるためにも、アメリカは強硬策ではなく、北朝鮮の安全を保証し、経済改革にむけた環境整備に手を貸すべきだ。体制を揺さぶり、崩壊を待つ路線を続ければ、偶発事件によって次なる朝鮮戦争が誘発される恐れがある。

金融政策とその限界

2013年8月号

アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長

金融政策のことを、大きな権限を持つものだけが操れる、何かミステリアスで不可知なものと恐れる必要はないし、その政策を万能薬と考えるのも間違っている。・・・その背後には常に政治が介在し、ときに金融政策の決定プロセスを混乱させ、戦術的な変化を強要されることもある。しかし、政治が金融政策に決定的な影響を与えるのは、金融政策委員会の委員長(総裁・議長)がそれを望んだ場合だけだ。・・・中央銀行のバンカーたちの役割は、結局のところ、薬剤師のそれとさほど変わらない。棚にある薬の量は限られており、法律によって一定量を超える薬を使うのは禁止されている。この条件で異なる専門家が書いた走り書きの処方箋に一貫性をもたせ、適切な調剤薬品を患者に提供する。その人物が薬品を摂取すること以外、何かを知ることも管理することもない。望み得る最善は、副作用を最小限に抑えつつ、患者が時とともに着実に回復していくことだ。

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