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に関する論文

「ロシアか欧米か」に揺れるバルカン諸国 ―― ブリュッセルへの遠い道のり

2014年8月号

エドワード・P・ジョセフ ジョンズホプキンス大学 ポールニッツスクール シニアフェロー
ヤヌス・ブガイスキ 欧州政策分析センター シニアフェロー

シアはバルカン半島の民族対立、そしてNATOとEUへの参加を果たしていない国の脆さにつけ込める状況にある。NATOやEUへのバルカン諸国の加盟をめぐってヨーロッパが優柔不断な態度をとり続け、アメリカもリーダーシップを発揮しないままであれば、バルカンにおけるロシアの選択肢を模索するプーチン大統領を大胆にするだけだろう。ロシアが策略を用いることのできる対象はモンテネグロだけではない。すでにロシアはボスニア・ヘルツェゴビナのスルプスカ共和国(セルビア人共和国)への影響力も強化している。NATOが加盟問題を放置し続けているマケドニアでも状況は不安定化している。民族的に分裂したマケドニアで不満が高まれば、隣国のコソボにもその余波が及ぶ。・・・・

不満と反発が規定する世界

2014年8月号

マイケル・マザー 米国防大学教授

いまや世界の主要な安全保障リスクは、怒りや反発に支配された国や社会、あるいは、社会に疎外され、取り残されて不満を募らせる集団によって作り出されている。今後、安全保障上の脅威は、傷つけられたと感じ屈辱を抱く人々が、それを克服し、自分の価値を取り戻そうと試みるプロセスのなかで出現するようになるだろう。イラク、シリア、パキスタン、そしてヨーロッパ東部における最近の展開には、このトレンドが共通して認められる。ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナにおけるパワープレイも、これまでロシアを軽くあしらってきた欧米に対する積年の恨みを映し出している。中国も例外ではない。不満や反発が中国社会に充満していることは、メディアの報道や大衆文化、さらには教科書の記述やラディカルなネチズンによる過激な書き込みからも明らかだ。さらに日本やインド、そして西ヨーロッパでもナショナリズムが台頭している・・・

ガザ侵攻とイスラエルの戦略的敗北
―― ハマスはすでに勝利を手にしている

アリエル・イラン・ロス イスラエル・インスティチュート エグゼクティブ・ディレクター

ハマスとイスラエルの紛争がいつどのような形で決着しようと、イスラエルが戦術的な勝利を収めること、そして戦略的に敗北を喫することはすでに明らかだ。イスラエル側は、「今回の紛争の終結時に有利な政治状況は作り出せないかもしれないが、少なくともハマスが戦略目的を達成することはない」と考えているようだ。「イスラエル人の犠牲者が少ない以上、それはハマスの敗北を意味する」と。だが、この見方は間違っている。ハマスの戦略目的は「イスラエル人の日常を揺るがすこと」にある。「パレスチナ問題が政治的膠着状態に陥っても、大きなコストを抱え込むことはない」というイスラエル市民の幻想はすでに突き崩されている。しかも、ハマスのロケット攻撃の被害者としてのイスラエルは、侵攻策をとったことでいまや加害者とみなされている。・・・・

ロシアと民間航空機撃墜事件

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

ロシアの指導者、政策決定者、外交官たちは、おそらくこの数十年、あるいは半世紀というスパンでみても、もっとも困難な事態に直面している。プーチンは身動きのとれない状況に追い込まれている。(民間航空機撃墜)事件との関わりを否定したが、前言を覆さざるを得ない状況に追い込まれつつある。これは、血気盛んな軍事要員が軍事ターゲットと民間航空機を誤認して撃墜してしまったとして片付けられる問題ではない。致命的な間違いは、クリミアのケースを前提に、親ロシア派の軍事能力を強化し続けても、代価を支払わされることはないとプーチンが考えてしまったことだろう。結局、今回の事件で、ロシアがウクライナにおける内戦を煽り立てていたことが白日の下にさらされてしまった。(聞き手はバーナード・ガーズマン、consulting editor, cfer.org)

イラクの混乱と石油市場

2014年8月号

ジョン・スファキアナキス MASIC チーフインベストメントストラテジスト

スンニ派武装勢力の攻勢がイラク原油の供給を混乱させ、原油価格は大きく変動することになるのか。すでに原油価格は過去10カ月で最高のレベルへと上昇している。しかし、パニックに陥る必要はない。仮にイラクからの輸出が今後長期的に大きく混乱しても、需給ギャップを埋めるためにできることは数多くある。その最大のツールがサウジの生産調整能力だ。しかも、産油国の財政を均衡させるために必要とされる原油産出(輸出)レベルは上昇し続けている。リヤドは、イラク危機が供給の混乱を生じさせるかどうかに関係なく、自国の財政上の理由から生産を強化せざるを得ない状況にある。・・・

中韓は戦略的パートナーになれるか
――北朝鮮、日本、アメリカと中韓関係

スコット・スナイダー 米外交問題評議会シニアフェロー

東京では、「韓国はアメリカや日本との関係よりも中国との関係を優先させるのではないか」と考えられている。だが、両国の経済関係の深化をバックに、習近平と朴槿恵が今後の中韓関係をどのように形作っていくつもりなのか、そしてその目的をどこに据えているのかは、依然としてはっきりない。韓国は半島統一に向けた主導権をとりたいと考え、一方、中国は北朝鮮を完全に見捨てるのを躊躇っている。日本の歴史問題をめぐっても、中国は韓国との共闘路線に前向きだが、韓国はむしろ日本との問題はアメリカを交えて対処したいと考えている。・・・

米金融政策の国際的衝撃
―― 量的緩和縮小と新興国経済

2014年8月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー

ユーロ圏以外の世界の貿易決済の大部分、そして外貨準備の60%には依然として米ドルが利用されており、当然、FRBの金融政策の変更は、グローバル市場に瞬時に大きな影響を与え、途上国へのキャピタルフローを極端に変化させ、途上国通貨の米ドルに対する価値は激しく変動する。この意味において、途上国の金融政策上の主権は事実上形骸化している。実際、連邦準備制度が資産の買い入れを縮小していくと示唆しただけで、投資家が資金を途上国から引き揚げて米国内の安全な投資先へと移動させたために、途上国の債券・通貨市場は大きな混乱に陥った。問題は、連邦準備制度が政策の判断にその国際的余波を考慮することは法的に想定されていないこと。そして、IMFを別にすれば、その余波を防ぐためのチェンマイ・イニシアティブやBRICS開発銀行構想が依然として実体を伴っていないことだ。・・・

CFR インタビュー
イラクの混迷と流動化
― 分裂か統合の維持か

グレゴリー・ゴース ブルッキングス研究所ドーハセンター シニアフェロー

バグダッドを攻略し、多くの石油資源が存在する南部を支配し、新たに政府を樹立することがイラク・シリア・イスラム国(ISIS)にとっての勝利の定義だとすれば、彼らが勝利を収めることはあり得ない。そうした目的を実現するにはISISの組織規模は小さすぎるし、すでに多数派であるシーア派は対抗戦略をまとめている。問題は、マリキ首相がスンニ派の政治家だけでなく、一部のシーア派の同盟勢力も切り捨て、影響力を抑え込み、権力を一元的に管理していることだ。マリキ個人の問題だけでなく、サダム・フセイン時代に遡るイラクの民族・宗派間の対立が根深いことも考慮する必要がある。要するに、イラクの政治階級は国をうまくまとめられずにいる。今回の危機をきっかけに、互いに対する反感を克服し、ISISの脅威に対抗できる政府を形作れる可能性は低いだろう。(報道によれば、ISISは6月下旬に「カリフ」を指導者とするイスラム国家を樹立すると一方的に宣言し、クルド自治政府も6月下旬に、今後の政治状況を見極めた上で、独立を目指す考えを示している)。・・・・(聞き手はMohammed Aly Sergie、Online Writer/Editor)

漂流するロシアの自画像
―― プーチンとソビエトの遺産

2014年8月号

キース・ゲッセン n+1誌共同編集長

「何が普通の国なのか」について、ロシアにはいまもコンセンサスが存在しない。ゴルバチョフはロシアを普通の国にすることを目標に掲げ、反ゴルバチョフクーデターを試みたゲンナジー・ヤナーエフもロシアを「普通の国に戻すこと」を主張した。ヤナーエフは過去に回帰することを普通の生活を取り戻す道筋と考え、ボリス・エリツィンは「西ヨーロッパの規範」を普通とみなした。しかしエリツィンがその構想の詳細を明らかにすることはなかった。結局のところ、多くのロシア人はスターリン時代に郷愁を感じている。だが、大多数のロシア人がプーチンを支持しているとはいえ、支持者の半分はスターリンを嫌い、残りの約半分はスターリンに心酔している。これはスターリンとは違うからプーチンを支持する人もいれば、スターリンと似ているからプーチンを支持する人もいることを意味する。・・・

ロシアとの新冷戦を管理するには

2014年8月号

ロバート・レグボルド コロンビア大学名誉教授

20世紀の冷戦と現在の危機はその規模と奥行きにおいて大きく違っているが、それでも現在のロシアとの関係破綻を新冷戦と呼んでもおかしくはない。ウクライナ危機がどのような結末に終わるとしても、ロシアと欧米の関係はかつての状態に戻ることはあり得ない。これが目にある現実だ、互いに、厄介な現状の責任は相手にあると考え、非難の応酬をしている。20世紀の冷戦もそうだったが、実際には、一方の行動によってではなく、その相互作用によって緊張と対立の悪循環が作り出されている。この点を認識しない限り、相手の行動を変えることはできない。ウクライナをめぐる現在の危機、そして今後の新しい危機をめぐっても、欧米はモスクワの選択を左右するような流れや環境を形作る必要がある。対決コースが大きなコストを伴うことを双方が理解し、異なる結末へと向かわせることを意識してこれまでとは違う路線をとらない限り、緊張が緩和し、問題が解決へと向かい始めることはない。

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