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に関する論文

CFR Interview
TPPをどうとらえるか
―― 貿易交渉か経済統合の試みか

2013年9月号

ミレヤ・ソリス
ブルッキングス研究所
北東アジア政策研究センター シニアフェロー

TPPの際だった特色は非常に野心的なハイレベルの目的を掲げ、知的所有権、労働基準、環境問題など(貿易領域を超えた)あらゆるものを交渉テーブルに載せると表明していることだ。こうした「WTOプラスアジェンダ」が取り上げられているのは、WTO(世界貿易機関)の交渉ラウンドが事実上停止していることの裏返しに他ならない。ウルグアイラウンドで貿易と投資ルールの見直しが前回行われてからすでに20年近くが経過している。当然、WTOで定義されている以上のルールが必要になっている。・・・TPPを貿易交渉ととらえるか、経済統合の試みととらえるかが人によって違ってくるのはこのためだ。私は、TPPは経済統合へと向かっていると感じている。なぜ貿易以外のルールが議論されているかは、それが経済統合の試みととらえられているためだ。・・・これまでは、日本が交渉に参加するには、一連の条件を満たす必要があるとアメリカが一方的に要求を突きつける立場だった。しかし今後、日本はアメリカ市場の障壁を特定して、これを問題として指摘することになるだろう。事態がどのように展開し、どのようなギブアンドテイクが試みられることになるのか非常に興味深い。

米中に引き裂かれる世界
―― 欧米なき世界と中国なき世界への分裂

2013年9月号

マーク・レナード
ヨーロッパ外交問題評議会共同設立者

冷戦期には、超大国の社会が次第に似た存在になっていくことで、緊張緩和(デタント)が育まれていった。だが、現在の国際的相互依存環境では、このダイナミクスが逆転する。大国間の立場が違えば関係は相互補完的になり、協調へと向かうが、似通った国へと収斂していけば、むしろ対立と紛争のルーツが作り出される。米中関係はまさにこのパターンに符合する。事実、もはや中国には、欧米が主導する国際アジェンダを支持するつもりはなく、中国はすでにグローバル秩序を変化させようと洗練された多国間外交を展開している。欧米も、TPPやTTIPなど、自らの思い通りに国際システムを作り替えようとする中国の能力を制約するような関係と政策を模索している。緊張が高まっていけば、米中関係においてこれまで機会と考えられてきたものが、脅威とみなされるようになる。今後出現するのは、表面的には冷戦構造に似た、新しく奇妙な二極世界になるだろう。

プーチンとシリア
―― 彼はいかにオバマを孤立させ、それを利用していくか

2013年9月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所シニアフェロー

もはやシリア攻撃は避けられないとプーチンが観念し始めたタイミングで、彼に追い風が吹き始めた。英議会が武力介入に反対し、フランスも介入には条件をつけている。オバマも、議会の承認を求めた。G20で孤立していたのは、プーチンではなく、オバマだった。結局のところ、プーチンの目的はアサドを助けることではない。彼は、ロシアの北カフカス地域の過激派とのつながりを持つテロ集団が、シリアのアサド体制に対する攻撃をやめて、槍の矛先をロシアのターゲットに向けることを警戒している。プーチンが学んだ柔道の極意は、相手を床にたたき付けるのではなく、相手のバランスを崩すところにあり、いまや見事にオバマはバランスを失っている。プーチンは自分が何をしているかを理解している。緊張が高まった時に、他の人が無謀にも介入したり、行動したりするのを、彼は背後から見守っている。彼は、相手をからかい、いらだたせることで、相手がバランスを崩し、自分に有利な動きをするようにし向ける術を知っている。

Foreign Affairs Update
蓄電技術の進化が電力供給と経済を変える

2013年9月号

ジェームズ・マニュイカ マッキンゼー・グローバルインスティチュート ディレクター
マイケル・チュイ マッキンゼー・グローバルインスティチュート プリンシパル

風力発電とソーラー発電にとって、電力生産に断続が生じることが大きな弱点だ。だがバッテリーストレージ(蓄電装置)があれば、これら再生可能エネルギーを蓄電し、必要に応じて使うことができるし、蓄電技術はエネルギー産業全体を揺るがすような、急速な技術革新を経験している。バッテリーストレージは、風力やソーラーファームからの電力だけでなく、家庭やオフィスビルに設置されているソーラーパネルからの電力も蓄電できる。さらに、送配電網に蓄電池を設置して、電気を貯蔵するグリッドストレージがあれば供給の信頼性と質を高め、電力価格を引き下げることにもつながる。エネルギー貯蔵技術がもたらす経済価値は2025年にはサウジアラビアのGDPにほぼ匹敵する規模に達すると試算される。18世紀以降この世に存在する電池(蓄電技術)が21世紀の経済の姿を大きく変貌させることになるかもしれない。

Foreign Affairs Update
習近平が質素・倹約を求める理由
―― 儒教的価値と政治的支持

2013年9月号

ジョン・デルーリー
延世大学国際関係大学院
アシスタント・プロフェッサー

中国共産党総書記に就任して以降、習近平は政府官僚に対して質素・倹約を求める一連の緊縮措置を通達している。政府官僚が豪華な晩餐会を主催することは禁止され、デザイナーウォッチを身につけることも、新たに政府ビルを建設することも禁止されている。だが、緊縮財政といっても彼の意図は、経済領域にではなく、政治領域にある。「政治腐敗とは無縁の清廉潔白な官吏」という儒教の古い規範は、現在の資本主義と共産主義が交錯する準儒教的な中国社会でも依然として強く意識されており、習近平は優れた統治に関する伝統的な概念をアピールすることで自分の政治的支持につなげたいと考えている。逆に言えば、習近平は、GDPの成長率以上の何かが危機にさらされていると感じている。一時的には支持は高まるかもしれない。だが長期的には、トップダウンの規律強化路線だけでなく、政府の説明責任を求めるボトムアップの流れが必要だ。この二つを一体化させない限り、政治改革としての緊縮路線は近くその限界に達することになる。

CFR Interview
限定的攻撃ではなく、アサド政権の打倒を
―― ペンタゴンによる反体制派の支援強化を

2013年9月号

フレデリック・ホフ
前米政府シリア問題担当特別顧問
大西洋カウンシル中東研究センター シニアフェロー

サリンガス(化学兵器)の使用によって、すでに1400人近くが犠牲になっていると考えられる。さらに、空爆やスカッドミサイルその他の通常兵器による攻撃で、数万のシリア人が犠牲になっている。この状況ゆえに、国内避難民のほぼ2倍にあたる200万人近くのシリア人が難民として外国に流出している。これはシリアにとって、そして近隣諸国にとって壊滅的な事態だ。米政府は、化学兵器使用に対するペナルティとしての限定的攻撃ではなく、アサド政権を倒し、人々の立場を広く代弁できる内包的で、可能な限り宗派色のない新しい政権に置き換えることを目的とする戦略へと切り替える必要がある。そのためにも、近隣諸国における軍事訓練を含む反体制派の支援を強化し、この任務をCIAではなく、ペンタゴンに委ねるべきだろう。

Review Essay
ナチス分析をワシントンに伝えたマルキストたち
―― フランクフルト学派と戦争

2013年9月号

ウィリアム・E・ショイアーマン
インディアナ大学政治学教授

ルーズベルト米大統領にナチスドイツに関する情報分析機関を立ち上げるように求められたウィリアム・ドノバンは、フランツ・ノイマンを筆頭とする「マルキストのユダヤ系ドイツ人思想家」たちにその分析を依頼した。彼らによれば、「ナチスの急進的反ユダヤ主義は、可能なかぎり多くのドイツ人をナチスによる犯罪の共犯者にすることが狙いだった」。彼らは「自分の手が血にまみれていることをドイツ人が認識していれば、連合国と最後まで戦い抜く」とナチスは考えている、と分析していた。こうして、ノイマンと彼のチームは「反民主的な集団が残存するのを許さない絶対的な勝利でない限り、結局は先の敗戦の再現になる」と提言した。ナチズムの基盤をいかに根絶するかについては、「まず連合国が連帯を維持することが不可欠だ」と指摘した上で彼らは次のように提言した。「ドイツを占領し、第三帝国の犯罪の責任を負うべきエリートたちを去勢し、ナチス党を非合法化し、その指導者は裁判にかける。そして、ドイツには二度と軍事力をもたせるべきではない」。だが、彼らの左派的ビジョンが、ドイツのリモデリングに、小さな影響しか与えないことは運命づけられていた。・・・

模倣せよ、本物を造れるまで
―― 中国経済のイノベーションとイミテーション

2013年8月号

カル・ラウスティアラ/カリフォルニア大学ロサンゼルス校 国際関係センター所長
クリストファー・スプリグマン/バージニア大学法科大学院特任教授

知的所有権、著作権の侵害行為には破壊的な側面もあるが、生産的な側面もある。中国政府が模倣活動に目をつぶり、ときにそれを奨励しているとしても、欧米企業が直ちに大きなダメージを被ることはない。中国ではまだほとんどの人々が貧しく、欧米製品を買えるのは一握りの富裕層に過ぎないため、コピー商品が必ずしも欧米企業の売り上げを低下させるとは限らないからだ。それどころか、コピー商品は、オリジナル製品の効果的な前宣伝になることが多い。かつてのアメリカも模倣経済国家だったことを思い出すべきだ。ベンジャミン・フランクリンはイギリスの作家の本を許可もなくアメリカで出版し、これに対してチャールズ・ディケンズは、多くのイギリス人作家の感情を代弁して、「アメリカ人が私の本で莫大な利益を上げても、そこから6ペンスも得られないというこの上ない正義」と皮肉ったものだ。だが、アメリカで海賊版が幅広く流通したことが彼の社会的認知度を高め、後にディケンズはアメリカで一財産を築くことになる。中国の模倣活動をうまく管理し、そのマイナス面とプラス面の双方をバランスよくとらえるべきだろう。

CFR Interview
E・スノーデン事件を法的に検証する
―― 米政府の認識にも問題がある

2013年8月号

スティーブン・I・ブラデック / アメリカン大学教授

ロシアへの一時亡命が認められたエドワード・スノーデンが、アメリカに送還されるかどうか。現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、これは、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。仮に告発の意図があったとしても、スノーデンは政府が所有する情報を盗んだだけでなく、告発手続きの相手であるNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、その情報を漏らすべきではない外国メディアに提供することで、手続きを踏み外している。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンはアメリカの内部告発者保護法の適用対象にはならない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常に大きな変数が絡んでくる。陪審制度の大きな機能の一つは、政府と検察の権力をチェックすることにある。仮に送還が実現して、裁判になるとして、スノーデンの運命を左右する12人の陪審員の一部は彼に同情しているかもしれない。・・・外国情報監視法(FISA)によって、政府による情報活動は適切な監督下におかれ、説明責任も果たされているという米政府の認識には問題がある。どのような結果になるにせよ、法律がテクノロジーの進化についていけていないのは間違いない。デジタル時代のプライバシーが何であるかについて、われわれはもう一度考える必要がある。

CFR Briefing
欧州市場は再び不安定化へ
―― ディセンバーサプライズ?

2013年8月号

ロバート・カーン/米外交問題評議会国際経済担当シニア・フェロー

多くの人が指摘するように、ヨーロッパでは危機への対応疲れがみられる。これは、ユーロゾーン全域でみられる各国政府に対する批判の高まり、緊縮財政への反発、あるいは反エスタブリッシュメント政党の台頭などからも明らかだろう。・・・さらに、9月に予定されるドイツの連邦議会選挙が終わるまで(そして、ECBの資産購入プログラムに関する独憲法裁判所の判断が示されるまでは)、依然として困難な状況にあるヨーロッパの周辺諸国に支援が提供されることはあり得ない。今後、銀行と政府に対する圧力がさらに高まっていけば、ECBの債券購入計画はたんなるブラフにすぎなかったという疑問が出てくるかもしれない。ユーロメンバー国がECBによる債券購入の条件(コンディショナリティ)をめぐって、スムーズに合意できるとも考えにくいし、ECBが独自に条件を緩和できるとも考えにくいからだ。・・・秋には、ヨーロッパの金融市場の小康状態は終わり、再び変動期に突入することになるかもしれない。

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