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に関する論文

米原油輸出の自由化を

2013年11月号

ブレイク・クレイトン
米外交問題評議会エネルギー担当非常勤フェロー

過去5年間を見ると、アメリカ国内の石油消費量は大きく減少し、一方でアメリカの石油産出量は世界のいかなる産油国と比べても大きく増大している。IEA(国際エネルギ機関)は2020年までに、アメリカはサウジを抜いて世界最大の産油国になるとさえ予測している。さらに(ガソリンやディーゼルなどの)石油製品という側面では、すでにアメリカは世界有数の輸出国の一つになっている。問題は、1970年代に米議会が、ライセンスを得ることなく国内で産出された原油を輸出することを違法とする法律を成立させ、現行の連邦法のもとでは、例外的な状況に陥ったときを除けば、企業が原油を輸出することが認められていないことだ。この輸出規制の目的は国内の石油資源を温存し、外国からの輸入を少なくすることにあった。しかし実際には、原油輸出規制は、この二つの目的の実現には寄与しなかったし、いまでは寄与するどころか邪魔な存在となっている。原油輸出を自由化すれば、米経済が刺激されるだけでなく、アメリカの外交政策を促進することもできる。アメリカから原油を輸入したいと考えている同盟国との関係が紛糾するのを回避できるし、貿易パートナーとしてのアメリカの存在感をさらに高めることもできる。

EU脱退という愚かで危険な火遊び
―― キャメロン英首相の危険なゲーム

2013年10月号

マティアス・マタイス
ジョンズ・ホプキンス・ポール・ニッツスクール准教授(国際政治経済学)

キャメロン首相は2013年1月、イギリスの欧州連合(EU)との関係を規定する条約内容を再交渉し、2017年末に国民投票を実施してEUへの残留か離脱かを決定すると発表した。イギリスのEU懐疑論は、国家主権という時代遅れの概念にしがみつく英保守党内グループの、ブリュッセルに対する理屈抜きの嫌悪感に根ざしている。合理的な政治的・経済的計算をすればロンドンがEUとの関係を絶つというシナリオが出てくるはずはない。キャメロンは、時代遅れの孤立した国への軌道にイギリスを載せようとしている。イギリスがヨーロッパと関係を絶つ可能性、つまり真のパワーを捨てて国家主権という幻想を選ぶ悲劇的な過ちを犯す可能性は、いまやかなり現実味を帯びてきている。

CFR Meeting
放置されたシリア内戦
―― 問題は化学兵器だけではない

2013年10月号

◎スピーカー
ジョン・マケイン
米上院議員
◎モデレーター
マーガレット・ワーナー
PBSニュースアワー

化学兵器によって1400人が殺害された。・・・だが、この他に11万人が銃弾、ナイフ、棍棒で惨殺されていることを忘れてはいけない。この殺戮行為に目を向けないのは間違っているし、いまやアサドは空からの攻撃に力を入れている。・・・シリアの化学兵器廃棄に関するロシアとの合意は、シリア内戦についての言及がなく、何の解決策も示されていない。実際、アサドがシリアの民間人にさらに過酷な作戦をとるようになれば、シリアはさらに混沌とした状況に陥り、化学兵器を廃棄するのも不可能になる。要するに、アサドは、合意受諾を反故にすることなく、合意を無力化できる立場にある。シリア内戦を終結に向かわせるには、シリア政府軍の軍事能力を低下させ、穏健派反政府武装勢力の軍事能力を強化しなければならない。ロシアは、反政府勢力や民間人を殺害するのに用いられる兵器を、いまもシリアへと飛行機で送り込んでいる。・・・

CFR Interview
イランとの関係改善は実現するか
―― 核協議とシリア危機の新ファクターとは

2013年10月号

モフセン・M・ミラニ
南フロリダ大学戦略外交センター所長

オバマ大統領は「アメリカはイランの体制変革を模索していないし、イランは(核不拡散条約で認められた)原子力の平和利用を試みる権利を持っている」と国連演説で語り、ロウハニ大統領も「イランの国防ドクトリンのなかに核兵器という言葉は存在しない」と明言した。ただし、オバマは、イランが国内でウラン濃縮を進めることを認めるつもりはない。ここが重要なポイントだ。今後、両国の立場をいかに交渉で埋めていくか。イランにはアメリカとの和解を望んでいない力強い強硬派集団が存在するし、ロウハニの動きを監視している。微妙な問題をめぐって拙速な動きをみせれば、彼は国内的に障害を抱え込むことになる。アメリカは、シリア問題をめぐるジュネーブ2にイランを招待するとともに、5プラス1(国連安保理5常任理事国とドイツ)とともにイランとの二国間交渉を試み、外交チャンネルを増やすことで、イランの意図を見極めるべきだろう。・・・・・・

イランは対話・交渉路線を模索する
―― 最高指導者ハメネイの思想

2013年10月号

アクバル・ガンジ
ジャーナリスト

イランの最高指導者、アヤトラ・ハメネイは聖職者としては、一風変わった過去を持っている。青年期に世俗派の反体制指導者たちと交流し、イスラム革命前に彼らの思想を吸収しているだけでなく、西洋の文学を耽読する文学青年でもあった。レフ・トルストイやミハイル・ショーロホフの作品を絶賛し、バルザックやゼバコの小説を愛読した。なかでもビクトル・ユーゴの『レ・ミゼラブル』が大のお気に入りだった。ムスリム同胞団の思想的指導者サイイド・クトゥブの著作からもっとも大きな影響を受けているとはいえ、ハメネイは、科学と進歩は「西洋文明の真理」であり、イランの民衆にもこの真理を学んで欲しいと考えている。彼はクレージーでも、支離滅裂でも、攻撃のチャンスを模索する狂信者でもない。核兵器の開発も望んでいない。ハメネイは「核兵器は人類に対する罪であり、生産すべきではないし、すでに存在する兵器は解体すべきだ」と考えている。ハメネイは欧米はイランの体制変革を狙っていると確信し、欧米への根深い猜疑心を持っているが、その思想にも変化がみられる。・・・・

アメリカか中国か
―― 韓国のジレンマ

2013年10月号

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

中国の台頭を前に、韓国は戦略ジレンマに直面している。経済成長の多くを中国との経済関係に依存しつつも、安全保障領域では依然としてアメリカとの同盟関係を必要としているからだ。ソウルは、ワシントンと北京のいずれかを選択するような事態を回避するのが戦略的に好ましいと考えているようだ。当然、韓国は、良好な米中関係が維持されることに大きな利益を有している。だが、仮に韓国がアメリカではなく、中国との関係強化を戦略的に優先させるとすれば、それはどのような環境においてだろうか。

Foreign Affairs Update
ロシアのアジアシフト戦略という幻想

2013年10月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェローボボ・ロー
英チャタムハウス アソシエートフェロー

アメリカに続いてロシアもアジアへと軸足を移そうと試みている。伝統的なヨーロッパ市場ではなく、アジア太平洋市場との関係を強化することで、ロシアの経済成長を刺激したいとプーチンは、考えている。モスクワのアジアシフト戦略は、アジアに影響力を行使したいという願いだけでなく、極東ロシアの人口がまばらであることへの恐れにも突き動かされている。この意味で、その鍵を握るのが中国との関係だ。だが、モスクワにとって中国との貿易関係は、次第に(中国による)新植民地主義的な様相を帯びてきている。ロシアからの主な輸出は原材料で、中国からは製品や消費財を輸入しているからだ。北京は、兵器を別とすれば、ロシアから工業製品を輸入することに関心はなく、武器輸入でさえも、近年は低調で、2006年以降、大がかりな武器貿易契約は交わされていない。アジアシフト戦略をとれば、いずれロシアは「自国の帰属しない東」と「うまく適合できない西」の間で漂流していることを見いだし、失望することになるだけだろう。

Foreign Affairs Update
米LNG輸出がエネルギー市場を変える

2013年10月号

エイミー・マイヤース・ジャッフェ カリフォルニア大学デービス校
エネルギー&持続可能性研究所 所長
エドワード・モース
シティ・グループ コモディティリサーチ部門
グローバル・マネージングディレクター

2020年までに、アメリカは年間6170万トンの液化天然ガス(LNG)を輸出し、カタールに次ぐ、世界第2のLNG輸出国に浮上していると予測される。アメリカがLNG輸出を増やし、世界市場からの石油輸入を減少させれば、この半世紀に及ぶOPEC(石油輸出国機構)による原油価格の管理能力は否応なく低下する。つまり、アメリカのエネルギー輸出が、石油や天然ガスに関する世界のゲームルールにどのような衝撃を与えるかが重要なポイントになる。1973年のOPECによる価格引き上げと禁輸以降の40年にわたって、石油と天然ガス市場は高度に政治化されてきた。だが、アメリカが主要なエネルギー輸出国になれば、グローバル経済における最大の産業であるエネルギー部門で突然、自由貿易が実現する。アメリカのLNG輸出は、世界の炭化水素資源貿易から政治を排除する最初のステップにすぎない。グローバルな天然ガス市場で起きていることは、いずれグローバルな石油市場でも必ず起きる。

アサド勝利後のシリア
――戦後シリアの荒涼たる現実とは

2013年10月号

アンドリュー・タブラー
ワシントン近東政策研究所シニアフェロー

戦闘で敗れ去るのをアサドが回避できる可能性は高まっており、はっきりとした勝利をいずれ手にするかもしれない。もちろん、アサドが権力を維持できるとしても、彼が内戦前のような国家レベルでの統治を再確立することはなく、テロ集団を含む反政府勢力は、シリアの一部を今後も掌握し続けるだろう。アサドは(シーア派の)イラン、ヒズボラとの関係をさらに強め、一方、中東のスンニ派諸国は、反政府武装勢力による抵抗を今後も支え続けるはずだ。だが、アサドが全面的な内戦を展開し、化学兵器を民間人に対して使用したことが、民衆の支持をとりつける上で今後も大きな障害となる。内戦を経たシリア政府は、戦争前に存在した残忍ながらも安定した政府以上に、抑圧的で法を顧みなくなるだろう。シリアは今後長期的に不安定化し、人道に対する残酷な犯罪が繰り返される場所になるだろう。

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