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に関する論文

ヨーロッパかロシアか、それが問題だ
―― ウクライナのナショナリズム

2014年4月号

オーランド・フィゲス
ロンドン大学バークベックカレッジ教授(歴史学)

ウクライナが現在直面している苦悩の中枢には、ロシアとの「戦略的パートナーシップ」に対する抵抗感と、「腐敗した政府からウクライナを政治的・経済的に救えるのはヨーロッパだ」という認識の間の葛藤がある。短期的には、ウクライナはロシアと仲違いするわけにはいかない。ロシアはウクライナのエネルギー供給を支配している上に、債務の大半を所有している。両国は産業面でも深く結びついている。だが長期的には、ウクライナにとって最大の期待はヨーロッパだ。街頭で抗議を行っている人々が求めた改革を実現するにはヨーロッパに目を向けるしかない。ただし、ウクライナのナショナリストたちは、ヨーロッパへの期待も幻想に過ぎないかもしれないことを忘れてはならない。「ヨーロッパかロシアか」という選択をめぐってウクライナ人が深く分裂していること、そしてウクライナを手放したくないロシアの思いが、ウクライナを受け入れたいというEUの思いよりずっと強いことを考えると、ウクライナは東欧諸国の先例にならって国の運命を国民投票で決めるべきなのかもしれない。

自然をテクノロジーでネットワークする
―― テクノロジーが変えた自然保護アプローチ

2014年4月号

ジョン・フークストラ
世界自然保護基金(WWF)主任サイエンティスト

技術革新が自然保護の手段を革命的に変化させている。テクノロジーの進化によって自然環境の実態をこれまでになく詳細に把握できるようになり、より多くの場所で、より多くの人に、より多くのデータがもたらされるようになった。ゾウの移動をGPSで把握し、熱帯雨林の状態をレーザーで測定することも、合成生物学で絶滅危惧種を救える可能性も出てきている。リモートセンサーで森林の立体構造を描き出し、アマゾンの熱帯雨林を含む、特定地域の生態系管理をほぼリアルタイムで監視できるようになった。もちろん、これを悪用することもできるが、これらのデータは、動物の生息地喪失や絶滅の危険を低下させ、気候変動を緩和させる手がかりになる。

オンライン個人情報とプライバシー
―― ビッグデータの恩恵とプライバシー侵害の間

2014年3月号

クレイグ・マンディ 米マイクロソフト・最高研究戦略責任者

もはや、個人データがオンライン上で収集され、蓄積されるのは避けようがない。しかも、一体どのくらいのデータがオンライン上に存在し、それがどこに蓄積されているかを正確に知ることはできない。一方で、ますますパワフルになったプロセッサーとサーバーで、オンライン上の個人データのすべてを分析できるし、その結果、個人の嗜好と行動に関する新しい洞察と推定を得ることができる。これが「ビッグデータ」時代の現実であり、個人のプライバシーと市民的自由を守る現在のアプローチはすでに時代遅れとなっている。現在の法律と規制は「個人データの収集と保有を管理すること」を重視しているが、実際には、多くの人は「個人情報がどのように用いられているか、その結果何が起きるか」を心配している。ビッグデータのポテンシャルを抑え込む「データ収集と保有を制限する」これまでのやり方から、「データ使用の管理」へと法と規制の焦点をシフトさせることが、ビッグデータ時代のプライバシーを守る対策の第一歩になる。

イスラエルがイラン強硬策を放棄しない理由
―― 外交交渉と空爆オプションの効果とリスク

2014年3月号

ドミトリ・アダムスキー
IDCヘルツリーヤ・政治外交大学院准教授

「イランは、現在の外交プロセスを核兵器の野望を覆い隠すために利用している。テヘランは最低限の妥協で、最大限の制裁緩和を引き出すことに成功した」。これが欧米とイランが交わした暫定合意に対するイスラエルの見方だ。さらにエルサレムは、欧米の経済制裁だけでなく、空爆を示唆するイスラエルの強硬策も、暫定合意に貢献しているとみている。今後の包括合意についても、「それに応じた方がましだとイランが考えるような状況を作り出す必要がある」とイスラエルは考えている。外交交渉で結果を出すには、一方で、イスラエルによる空爆リスクがあることをテヘランに常に意識させなければならない、と。だが空爆リスクを過度に強く意識させると、「合意に応じた方がましだ」と考えるのではなく、「どのみち攻撃してくるのだから、もはや何も失うものはない」と考え、むしろイランを先制攻撃へと走らせかねない。適切な抑止と過剰抑止のバランスを見極める必要がある。・・・

勝者なきウクライナ革命
―― キエフからの報告

2014年3月号

アナブル・チャップマン
ジャーナリスト

ヤヌコビッチはウクライナの政治から退場したかもしれないが、これをウクライナ政治の夜明けと考えるのは間違っている。確かに、オレンジ革命期の政治家ティモシェンコが釈放 され、多くの人はこれを歓迎しているかもしれない。だが、彼女の政界復帰はこれまで抗議運動を主導してきた3人の野党指導者間の不安定なバランスを覆すかもしれないし、そもそも、ティモシェンコはヤヌコビッチと同世代の政治家とみなされている。独立広場に集まった人々にとってティモシェンコが刑務所から釈放されたことと、彼女が政界に復帰することはまったく別の話なのだ。結局のところ、人々は「説明責任を果たし、法の支配を尊重し、政治腐敗と戦う」政治家の出現を待ち望んでいる。この思いが満たされるには、今回の革命以上に長い時間がかかるだろう。

CFR Interview
プーチンの意図とアメリカの対応

2014年3月号

リチャード・ハース
米外交問題評議会会長

プーチンが今後をどう読んでいるのかはっきりしない。ロシア軍によるクリミア掌握という現実を、プーチンは今後の交渉カードにするつもりなのか、それとも、ウクライナ全土への影響力拡大の布石とするつもりなのか。一方で、この曖昧な現状でNATOをウクライナに関与させれば、それこそ、多くの人が懸念する新冷戦という事態に陥っていく。だが、G8サミットをボイコットしたり、国務長官をキエフに派遣したりする以外にも、アメリカにはできることがある。それは、ウクライナのロシアへの経済依存を軽減するためにもアメリカからウクライナへの天然ガス輸出を拡大し、ポーランドなどの近隣諸国への軍事援助を拡大することだ。もちろん、最悪のシナリオにも備えておくべきだが、ロシアの面目を保つ形で部隊をウクライナから撤退させ、EU、アメリカ、IMFがウクライナへの経済援助をロシアとともに実施することへの合意をまとめることを、まだ断念すべき段階ではない。(聞き手はバーナード・ガーズマン コンサルティングエディター@cfr.org)

タイの政治的解体
―― 崩壊した密約と終わらない混迷

2014年3月号

ダンカン・マッカーゴ
英リード大学政治学教授

2011年7月の総選挙で、タクシン元首相の妹インラック・チナワットが首相に選ばれると、反タクシン派とタクシン派の対立は一時的に後退した。現実的で物腰の柔らかなインラックは、妥協を受け入れる柔軟な路線をとって批判者を当惑させ、旧敵である王室と軍のいずれともうまくやっていけることを立証した。特に軍は国防大臣ポストに人材を提供してインラック政権を支えてきた。インラックの働きかけで、政府と既得権益層は政治取引を交わした。インラックが王室の権威や軍事予算などのデリケートな問題をめぐって強引な行動をとらない限り、既得権益層は、彼女が政権を維持することを認めた。ドバイで逃亡生活を送っているタクシンがタイに帰国するのを認めないことも暗黙の了解とされた。取引が公にされることはなく、野党の民主党、黄シャツ隊・赤シャツ隊の指導者もこの取引の存在は知らなかった。2013年後半までは、すべてがうまくいっているかにみえた。少なくとも表面的にはタイは平常を取り戻していた。だが、それを揺るがす二つの展開があった。・・・

ウクライナのジレンマ

2014年3月号

エイドリアン・カラトニッキー
アトランティックカウンシル シニアフェロー

プーチンは、ヤヌコビッチ大統領に経済的支援を与えることで、EU(欧州連合)との連合協定の調印を見送らせ、ウクライナにおけるロシアの影響力を取り戻そうとした。だが、プーチンの意向に応じたヤヌコビッチにウクライナ市民は強く反発し、これが大規模な反政府運動へとつながっていった。いまやウクライナは「内戦に陥りかねない危機的な状況にある」。・・・ウクライナが直面しているのは、オレンジ革命時のように、政権崩壊後の権力の空白を野党勢力が埋めるといった簡単な流れではない。ヤヌコビッチを支持してきた現在の既得権益層には有力な財界指導者も含まれている。(訳注 2014年2月22日、デモ隊がキエフを掌握し、議会はヤヌコビッチ大統領の解任と大統領選挙を5月25日に行うことを決議した)  (聞き手はロバート・マクマホン Editor@cfr.org)

CFR Meeting
ウクライナ危機とロシア
―― プーチンはどう動くか

2014年3月号

◎スピーカー
スティーブ・セスタノビッチ
米外交問題評議会ロシア担当シニアフェロー
アレクサンダー・モティル
米ラトガース大学教授
◎モデレーター
ロバート・マクマホン
エディター CFR・ORG

東部のルハーンシク、ヤヌコビッチの地元のドネツィク、そしてクリミアは、全般的には親ロシアの政治が今後も続くこと望んでいると考えることもできる。だが、ルハーンシク、ドネツィクでもっとも大きな影響力をもつ人物は富豪のリナ・アクメトフ。彼は欧米とのつながりに大きな利益を有している。つまり、この二つの地域の人口の一部は分離独立を望んでいるが、経済エリートたちは分離独立には反対している。・・・クリミアも一般に言われるほど親ロシア的ではない。・・・ウクライナの分裂は起きないだろう。(A・モティル)

ウクライナ経済は昨年の11月の時点ですでに危機的な状態にあったし、その後、3カ月に及んでいる革命が、この国の国債の格付けとGDP(国内総生産)にプラスに作用しているはずはない(すでにS&Pはウクライナのディフォルトリスクを警告している)。政治的打開策だけでなく、経済的解決策を考案する必要がある。(S・セスタノビッチ)

CFR Meeting
ウクライナ危機の外交・経済・軍事的衝撃を検証する

2014年3月号

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン/ヨーロッパ担当シニアフェロー
ロバート・カーン/国際経済担当シニアフェロー
ジャニン・デビッドソン/国家安全保障担当シニアフェロー
◎モデレーター
アニヤ・シュメマン/アメリカン大学国際関係大学院/アシスタント・ディーン

ロシアのナショナリストたちは、スラブ民族と東方(ロシア)正教系諸国の連帯を求めるユーラシア連合を通じてロシアを再建したいと考えている。・・・だが、ウクライナはヤヌコビッチ政権を倒すことで「われわれにはスラブ民族、東方正教会のつながりを基盤するユーラシアブロックに入るつもりはなく、ヨーロッパの一部になりたい」というメッセージをプーチンに送ったことになる。今回の事態は、これに対するプーチンのウクライナへのメッセージとみなせる(C・クプチャン)

IMFによる融資をまとめるには時間がかかるし、ウクライナの暫定政権はIMFが求めるような改革を遂行していく政治的基盤をもっていない。「当面の措置として、第2ステージに進むためのつなぎ融資を多くの条件をつけずに提供する必要がある」(R・カーン)

プーチンが大きな野心を露わにしてクリミアだけでなく、他のウクライナ地域に侵攻すれば、制圧地域を維持する一方で、親欧米派の激しい抵抗に直面する。彼が制圧しようとする地域で、抵抗運動だけでなく、ゲリラ戦が起きる。(J・デビッドソン)

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