1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

に関する論文

Foreign Affairs Update
東シナ海における中国の現状変革路線
―― 同盟関係とアメリカの立場

2014年1月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所アジア担当上席副会長

中国は地域的現状を少しずつ変革し、東シナ海と南シナ海におけるより大きな影響圏を確立しようと試みている。(日本の尖閣諸島の国有化が緊張を高めたと中国側は主張しているが)尖閣問題を棚上げするとした了解を何度も破って、日本に危機感を抱かせたのは中国の方だ。両国の路線の大きな違いは、尖閣諸島を施政下に置く日本が現状を維持しようと試みているのに対して、中国は強制的圧力を行使して、現状を変革しようと試みていることだ。すでに中国は、フィリピンのスカボロー礁を、強制力を通じて事実上管理下においている。専門家の多くは、中国は同じ戦略を日本に対してもゆっくりと行使するつもりだと考えている。・・・オバマ政権は状況に対するアメリカの決意と同盟国を安心させる秩序だったメッセージを今後も表明していくべきだし、そのためにも、北京の戦略的意図を的確に分析しなければならない。

CFR Meeting
世界エネルギーアウトルック
―― 中東原油の重要性は変化しない

2014年1月号

ファティ・ビロル 国際エネルギー機関チーフエコノミスト、セオドア・ルーズベルト バークレーキャピタル・クリーンテク・イニシアティブ マネジングディレクター

エネルギー市場における各国の役割が変化しつつある以上、急速な変化のなかで市場の流れを読み、自国を適切な場所に位置づける必要がある。そうしない限り、敗者になる。アメリカは天然ガスの輸出国に姿を変え、中東諸国は石油消費国への道を歩みつつある。ヨーロッパ、アメリカという輸出市場を失いつつあるロシアとカナダは、天然ガス輸出のターゲットを次第に中国や日本などのアジアに向け始めている。そして、シェールガス革命が進展しても、世界の天然ガス価格の地域格差は、今後20年はなくならない。もっとも重要なのは、アメリカ国内における原油生産の増大を前に、「もはや中東に石油の増産を求める必要はない」と考えるのは、政治的にも分析上も完全に間違っていることだ。生産コストが低くて済む、中東石油へ投資しておかなければ、アメリカの石油増産トレンドが終わる2020年頃には、世界は大きな問題に直面する。中東石油の投資を止めれば、原油価格の高騰は避けられなくなる。

途上国経済は比較的高成長を遂げ、アメリカ経済は実質プラス成長を維持し、ヨーロッパ経済は低成長に甘んじる。2014年の世界経済も金融危機後のこのパターンが続くと考えられる。先進諸国は、貿易部門を中心に経済成長のポテンシャルを一部で回復するかもしれないが、ヨーロッパ市場が依然として不安定なために、そのタイミングは2014年ではなさそうだ。・・・(一方)いわゆるアフリカの「フロンティア」市場が、規模はそれほど大きくないが、柔軟性に富む世界のスター経済として浮上しつつある。(M・スペンス)

緊迫した危機局面は去り、成長の兆しも見え始め、資本も戻ってきている。だが、依然として困難な局面を脱したわけではない。再び危機へと舞い戻る危険は一般に考えられている以上に高い。・・・2014年のヨーロッパにとって、もっとも深刻な課題はおそらく政治領域に存在する。・・・(R・カーン)

中国が「中所得国の罠」に陥るのを避け、今後10年にわたって7%の成長を維持するつもりなら、肥大化する債務問題に対処し、生産性を強化していかなければならない。そのためには、都市化プロセスの効率を高めるとともに、国有企業の2倍の配当を出せる民間企業の役割を高めていくことだ。(Y・ファン)

Foreign Affairs Update
国際政治と謝罪のリスク

2014年1月号

ジェニファー・リンド
ダートマスカレッジ准教授

日本を批判する人々は、公式に何度も謝罪し、かなりの規模の賠償を行い、第二次世界大戦の残虐行為に関する実直な歴史教科書を出版したドイツと比べて、日本のやり方は十分ではないと考えている。だが、謝罪は和解の前提ではないし、日本だけが例外的な行動をとっているわけではない。ドイツではなく、日本のスタイルが世界の規範なのだ。多くの国は、過去の残虐行為を取り繕い、自国の戦没者を弔ってきた。そして東京だけでなく、ワシントン、ロンドン、テヘラン、テルアビブを含む、世界各国の保守派は、謝罪を求める声に強い反発を示してきた。だが謝罪が必要でもなければ、関係改善の助けにならないことが多いとしても、国際的な和解を実現するには、相手国に大きなダメージを与え、苦しみを強いたことを認めなければならない。・・・

政治的正統性の危機

2014年1月号

イアン・ブレマー ユーラシアグループ代表

政治エリートたちは大きな課題に直面している。市民たちが新しいツールを用いて新たな要求をし、抗議行動を組織化し、集団としてのパワーを培いつつあるからだ。各国政府が次の景気のサイクル、次の選挙、次の政治的移行期までの短期的な問題にばかり目を向けているために、グローバル規模での政府の正統性の危機という事態にわれわれは直面している。アメリカ政治は党派対立に縛られて身動きできず、ヨーロッパでは反EU感情が高まっている。新興国政府も経済成長率が鈍化する一方で、市民の要求が高まり、政府は追い込まれている。政府の指導者たちが適切と考える以上の情報公開を求める市民の圧力が、政府の正統性をさらに脅かしている。しかも、情報を共有するのがきわめて簡単になり、一方で情報漏洩を阻止するのが難しくなっている。・・・

フィリピンとインドネシア
――何が軌道を分けたのか

2014年1月号

カレン・ブルックス
米外交問題評議会非常勤シニアフェロー(アジア研究)

いまやASEANの主要5カ国は、世界のいかなる地域経済圏よりも急速な成長を遂げている。なかでも有望なのがインドネシアとフィリピンだ。巨大な市場をもつインドネシアは、この5年で大きな経済成長を遂げた。しかし、資源に依存し、構造改革を先送りしてきた経済はここに来て雲行きが怪しくなり、最近では(通貨危機リスクの高い)「脆弱5カ国」の一つへと転落してしまった。一方、フィリピン経済は多くのエコノミストの予測を上回る成長をみせ、2013年上半期も7・6%と、世界有数の成長を遂げている。フィリピンは家電輸出に加えて、いまや世界有数のアウトソースビジネスの拠点へと変貌している。出稼ぎ労働者の仕送りが貧困層の消費と通貨の安定を支え、改革志向の大統領もいる。今後のインドネシア経済は2014年の大統領選挙に、一方、フィリピンの今後は、構造改革で外資を魅了できるかどうかに左右されることになるだろう。・・・

Foreign Affairs Update
イランとの論争は続く
―― NPTとウラン濃縮の権利

2014年1月号

ゲリー・セイモア
前ホワイトハウス調整官
(軍縮・大量破壊兵器担当)

核開発交渉の中核テーマは、これまでも、そしてこれからも、「イランがウランを濃縮する権利をもっているかどうか」だ。イランは、「IAEAの保障措置を受け入れる限り、核不拡散条約(NPT)加盟国が平和目的(つまり、原子炉の核燃料生産や医療用アイソトープ生産)のためにウラン濃縮を行うことは認められている」と解釈している。一方、アメリカ、フランス、イギリスは、条約は原子力エネルギーの「平和的な利用」を認めているだけで、「それがどのような権利を内包するかは明示していない」と主張してきた。要するに、ウラン濃縮によって原子炉を動かす核燃料や医療用アイソトープだけでなく、兵器級ウランの生産に道が開かれることが問題なのだ。P5+1(アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスとドイツ)は、依然として「イランは核兵器開発に向けたオプションを作り出そうとしている」とみている。今後想定しておくべきシナリオは二つある。イランが合意を破棄して、唐突に核兵器生産を公言するブレイクアウトシナリオ、そして、水面下で核兵器生産を試みるスニークアウトシナリオだ。

中国の台頭で変化した日ロ関係
―― 和解を模索しつつも、不透明な未来

2014年1月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェロー

いまや中国の台頭が、あらゆる地域関係を緊張させている。ロシアはオホーツク海、北極海での中国の活動に神経をとがらせ、一方の日本は尖閣問題を憂慮している。東京は、尖閣問題をめぐって軍事衝突が起きるのではないかと憂慮している。中国だけでなく、韓国との関係も不安定化しているために、東京はアメリカとの同盟関係を補完するために、北東アジアでもう一つの友好関係を確立したいと考えているようだ。中国の台頭を前に変化する地域環境のなかで、2013年に開かれた日ロ「2プラス2」会合は、両国の関係を先に進める大きなステップだった。日ロ間の懸案である北方領土問題にも変化の兆しがある。・・・ソチオリンピック後に、プーチンは日本を訪問する予定であり、2014年に大きな展開があるかもしれない。だが、この変化が直線的に進むとは考えにくい。・・・

CFR Briefing
WTOと地域貿易構想
―― TPPとTTIPの可能性

2014年1月号

ジェイミー・ザブルドフスキー・クーパー
メキシコ国際問題評議会(COMEXI)代表
セルジオ・ゴメス・ローラ
IQOM、CEO

多国間貿易ラウンドが大きな危機に瀕しているため、その空白を地域およびサブ地域レベルでの貿易交渉が埋めつつある。少なくとも短・中期的には、国際貿易の未来はこれら地域レベルでの交渉の結果にかかっていると言えよう。なかでも環太平洋パートナーシップ(TPP)は、その経済的・戦略的な重要性において際立っている。仮にTPPで国際規格(TBT)や規制の標準化、反政治腐敗、Eコマース、環境などの「WTOプラス」に該当する交渉アジェンダに合意されれば、そのアレンジメントは、今後環太平洋および環大西洋の市場統合に関するプラットフォームとしての役割を果たすことになる。TPPと環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)という二つの重要な貿易交渉が成功すれば、WTOプラスに積極的に取り組む国、現行のWTOルール以上の自由化を受入れる準備ができていない国の二つへ分かれていくだろう。この段階で、WTOの役割を再検証する必要がある。・・・

CFR Briefing
教育ローンは将来への投資か、
未来を抑え込む債務か

2013年12月号

スティーブン・J・マルコビッチ contrubuting editor@cfr.org

アメリカの一流私立大学の場合、授業料と寮費で年間600万円程度の資金が必要になる。家計所得よりも大学学費の方がはるかに高いペースで上昇しているため、いまや「高等教育バブル」が起きるのではないかとさえ懸念されている。当然、教育ローンに頼る人は増えている。だが、その結果、大学卒業時に大きな債務を抱え込むことになる。2011年でみると、米大学卒業生の3分の2が教育ローンを抱えており、平均すると一人あたり2万6600ドルの債務を抱えている。これが将来に向けた良い投資なのか、それとも、未来を拘束する債務なのかをめぐって、論争が起きている。教育ローンは人的資源の育成と将来的な経済投資になり、その恩恵はコストを上回るとする考えがある一方で、その後の経済生活を大きく制約するという批判もあり、社会問題化している。

Page Top