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に関する論文

殺人ロボットを禁止せよ
―― 人間を殺すロボットの脅威

2014年6月号

デニス・ガルシア ノースイースタン大学政治学部准教授

殺人ロボットによる戦争はもはやフィクションの世界の話ではない。近い将来、映画の世界から抜け出して現実になる可能性は十分にある。中国、イスラエル、ロシア、イギリス、アメリカを別にしても世界の50カ国が、殺人ロボットを含むロボット兵器の開発計画をもっている。この領域でもっとも早い進化を遂げているのが中国だ。韓国も赤外線センサーで標的を感知できる安全監視ロボットを北朝鮮との非武装地帯に配備している。各国の軍部は、殺人ロボットがあれば、兵士を危険にさらすことなく、任務を遂行できると考えている。しかしそこにはソフトウエアの欠陥、あるいはサイバー攻撃による誤作動という、これまではなかった新しい問題がつきまとうし、道義的、法的問題も伴う。殺人ロボットが受け入れがたい現実を作り出す危険に今備えない限り、手遅れになる。











「変われない日本」の変化を読む
―― ナナロク世代と改革のポテンシャル

2014年6月号

デビン・スチュワート カーネギー国際問題倫理評議会 シニアフェロー

ここにきて、日本人の多くが「停滞し、変われない日本」も、もはや変わるしかないと考えるようになった。こうした変化を象徴するのがナナロク世代だ。親の世代よりずっとグローバルな感覚をもち、リベラルで個人主義的、しかも起業に前向きな、現在30―40歳代の彼らは、いまや社会的な影響力をもつほどに台頭している。これに呼応して、女性の社会進出が進み、教育制度が開放的になり、市民社会も力強さを増している。右派のナショナリストではなく、新しいエリートたちが成功すれば、日本の政治も永久的に変わるかもしれない。既成政党の指導者が年をとり、ナナロク世代がさらに社会的足場を築いていけば、彼らが今後の選挙で当選できる見込みも大きくなる。日本の政治は、新しい人材と思想を必要としており、ナナロク世代は双方において大きな貢献ができる立場にある。

欧州が対ロ制裁へ踏み込めない理由
―― ロシアとの経済関係か欧州安全保障か

2014年6月号

トム・キーティング 金融・安全保障アナリスト

最終的に、ロシアに対する欧米の経済制裁は十分なものにはならないだろう。厄介なのは、ヨーロッパの指導者たちが直面しているのがロシアからのエネルギー供給の問題だけではないことだ。この20年にわたってロシアとの関係に多くを投資してきたヨーロッパの企業は、ロシアとの経済的つながりを失うことを心配している。政治指導者たちも、経済制裁を通じてプーチンの対外路線を変化させる必要があると感じつつも、「制裁によって自国が経済的やけどを負うのではないか」と心配している。こうして、ヨーロッパはロシアに対する経済制裁をめぐって分裂し、結局は消極的な態度に終始している。他に選択肢がない状況に陥らない限り、ヨーロッパの政治家たちは自国の企業と産業を守ることを優先するだろう。

民主化から遠ざかる東南アジア
――タイのクーデターだけではない

ジョシュア・クランジック 米外交問題評議会フェロー(東南アジア)

タイが軍政へと逆戻りすることが運命づけられていたわけではない。むしろ、専門家の多くは、1980年代末から2000年代末まで、東南アジア諸国の多くを「途上世界における民主化の優等生」とみなしてきた。だが、この時期以降、東南アジアの民主化プロセスは停滞し、この地域で経済的、戦略的にもっとも重要な諸国が民主化からの逆コースをたどり始めた。この10年で、タイは急速に民主化からの逆コースをたどり、いまや軍事政権がこの国を支配している。マレーシアの民主的制度と文化もこれまでの民主化の流れから逆行している。カンボジアとミャンマーでも、劇的な民主化への期待はいまや色あせつつある。

CFR Briefing
ドライバーレスカーの未来

2014年6月号

スティーブン・J・マルコビッチ コントリビューティング・エディター

ドライバーを必要としない自律走行車は、サイエンスフィクションの世界から実証段階へと急速に進化しているが、正確には今後何が起きるのだろうか。すでに一部の自動車メーカーは、2020年までに、高速道路での走行や交通渋滞といった、一定のシナリオの下で車を完全に操作する自動運転モード付きの車を本格的に売り出す計画を発表している。時とともに、自動運転モードはわずかな人間の関与でより多くの状況に対処できるようになり、コストが低下するとともに、自動運転技術は、高級車から普通車へと広がりをみせていくだろう。アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アジアの主要国も、研究資金を提供し、実証コンペを主催し、大規模な路上試験を実施することで、技術革新の先頭に立とうと競い合っている。だが、自動運転モードの限定的な導入でさえも、大きな恩恵とともに、一方では厄介な法律問題と業界再編を引き起こすはずだ。・・・

シェール革命で変化するエネルギー市場と価格

2014年5月号

エドワード・L・モース シティグループ原材料担当グローバル統括者

ロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国の地位を手に入れたアメリカは、2015年までには、サウジアラビアを抜いて最大の原油生産国になると考えられている。2011年に3540億ドルの赤字だったアメリカの石油貿易収支も、2020年には50億ドルの黒字へと転じる。一方、シェール資源の開発技術は外国にも移転可能であり、今後、シェール資源開発は世界的に広がっていくだろう。実際、シェール資源は世界各地で発見されており、多くの国がこの分野でアメリカに続きたいと考えている。アメリカの開発可能なシェール資源が世界全体の資源の15%程度である以上、世界的な開発が進めば、これまでになく安いコストでエネルギー資源が供給されるようになる。40年にわたって市場を支配してきたOPECが恣意的に原油価格を設定し、世界経済を苦しめてきた時代にもいずれ終止符が打たれ、世界経済は大きな成長を遂げることになるだろう。・・・・

北東アジアにおける歴史戦争
―― アメリカの関与がなぜ必要か

2014年5月号

ギウク・シン
スタンフォード大学教授(社会学)
ダニエル・C・シュナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター
アソシエート・ディレクター

第二次世界大戦に由来する未解決の歴史問題が、北東アジアの地域的緊張の背景に存在する。歴史問題が日本と韓国というアメリカの主要な同盟国を反目させ、日本と中国のライバル関係を再燃させている。だが、この現状をめぐって、東アジアの戦後秩序を形作ったアメリカにも責任があることを認識する必要がある。アメリカは、冷戦という特有の環境のなかで戦後処理を行い、以来、状況を放置してきた。日本は「ドイツがいまも謝罪の必要性を認識し、自己検証の試みを続けていること」から教訓を学ぶ必要があるし、アメリカも戦争と過去に正面から向き合い、米大統領はヒロシマあるいはナガサキを訪問し、日本に原子爆弾を投下した結果、非常に多くの人命が奪われたことに対する自らの考えを示すべきだ。そうしない限り、北東アジアの歴史問題にアメリカが介入することは正当化できない。・・・・

プーチンの思想的メンター
―― A・ドゥーギンとロシアの新ユーラシア主義

2014年5月号

アントン・バーバシン 在モスクワ国際関係研究者
ハンナ・ソバーン 米フォーリン・ポリシー・イニシアティブ (ユーラシア分析担当)

2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。ユーラシア国家(ロシア)は、すべての旧ソビエト諸国、社会主義圏を統合するだけでなく、EU加盟国のすべてを保護国にする必要があると彼は考えている。プーチンの保守路線を社会的に擁護し、政策を理論的に支えるドゥーギンの新ユーラシア主義思想は、いまやロシアの主要なイデオロギーとして位置づけられつつある。・・・・

アジア重視戦略の本質

2014年5月号

カート・M・キャンベル
前米国務省国務次官補
(東アジア・太平洋担当)イーライ・ラトナー
新アメリカ安全保障センター シニアフェロー

東シナ海での問題を超えて、日本の安倍晋三首相は、日本を数十年に及ぶ経済停滞から解き放ち、市民に国にもっと新たなプライドと、影響力ある国としての自覚をもたせたいと考えている。安倍首相は、第二次世界大戦の戦犯を含む戦没者を称える靖国神社を2013年末に参拝した。その国際的コストは高かった。日本と韓国の関係はさらに険悪になり、中国は安倍首相が権力ポストにある限り、日本との直接交渉には応じないという路線をさらに固めた。・・・・外交的緊張が高まっているとはいえ、アメリカは、日本がもっと地域的にも世界的にも積極的な安全保障上の役割を担えるように、自衛隊との協力関係を強化していくだろう。実際には完全に合理的な措置であり、むしろもっと早く手をつけてもおかしくなかった「日本憲法の再解釈と軍事的の近代化」を「反動的で軍国主義的だ」と批判する中国のプロパガンダに対抗していくことも必要だ。一方で、アメリカは日本と韓国の関係を改善するためにかなりの政治資源を投入する必要がある。・・・

変化した日本の政治とナショナリズム

2014年5月号

マルガリータ・エステベズ・アベ
シラキュース大学政治学部准教授

安倍首相の人気の高さと政治的影響力のどの程度が、ナショナリスティックな外交政策を求めるようになった日本の大衆の立場の変化を映し出しているのかは分からない。たしかに、尖閣問題もあって、2012年には、日本人の81%が中国には親近感がないか、どちらかといえばそうした感情を覚えないと答えている。安倍首相がこれまでの政治キャリアを保守主義や国家主義に即して積み上げてきたのも事実だ。だが、ナショナリスト路線を検証するには選挙制度改革が作り出した政治環境、普通の国への道筋をめぐる論争、そして中国の台頭が与えている影響も考える必要がある。選挙制度改革の結果、野心的な政治家が重要な国家アジェンダに特化できる環境が作り出され、国家安全保障とそれに付随するナショナリズムが有権者への訴求力を持っていることにいち早く気づいたのが自民党の政治家たちだった。・・・・

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