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に関する論文

中国は第2の経済改革・開放路線へ
―― 管理・統制国家からルールに基づく規制国家へ

2014年2月号

エヴァン・フェイゲンバーム シカゴ大学ポールソン研究所副所長、ダミアン・マ シカゴ大学ポールソン研究所フェロー 

習近平体制は、市場経済の確立に向けた経済改革へとすでに踏み出している。エネルギー価格の統制、金利や為替の管理策は今後弱められ、その多くが市場メカニズムに委ねられるようになる。民間企業を交えた、新たな社会保障制度も整備され、財産権の保障も強化されるだろう。たしかに、国有企業が経済における支配的優位をもつ状況で、国が経済構造を変革できるのかと疑問に感じる人もいるだろう。だが、国内外からの激しい競争に直面すれば、国有企業も、もっと市場規律に則した行動をとるようになるだろう。もちろん、9兆ドル規模の経済を構造的に改革していくのは容易ではないし、しかも、金融、労働、産業市場の改革は相互に密接に関連している。改革を成功させるには、国の形を作り替える必要がある。最終的に改革は経済というよりも政治領域の問題になる

中国の対外強硬路線と TPP交渉

2014年2月号

トマス・ボリキー  米外交問題評議会シニアフェロー(経済・開発担当)

2014年11月の米中間選挙が近づくにつれて、米議会のメンバーは政治的反発が予想される貿易協定への批准をためらうようになる。それだけに、交渉で残された難題を解決するには、現時点でハイレベルな外交努力を行う必要がある。中国は、TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉が山場を迎えつつあったタイミングでADIZ(防空識別圏)の設定を発表し、そうした必要性への各国の政治家の意識を一時的に遠のかせた。だが、中国が地域的影響力を強めていることへの対抗バランスを形成するという思惑からTPPを含む一連の貿易合意を模索している東南アジア諸国にとって、中国によるADIZの設定は、そうした貿易合意の必要性を再確認させたことになる。・・・今後、中国がリスクを冒して、南シナ海に新しいADIZを設定するかどうかも予断を許さない状況にある。・・・中国の指導者は、東シナ海におけるADIZ設定に対して(国際的に)大きな反発が起きたことに驚いているようだ。だが、北京は中国市民のナショナリズムが高揚していることも考慮する必要がある。・・・

日中の政治対立と経済関係
―― 政治対立から経済関係を救い出せるか

2014年2月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

中国は日本との政治対立から経済を切り離そうと試みている。2012年当時は、「日本が中国市場に依存していることを利用して、東京から領土上の妥協を引き出せる」と北京が考えていたことを思えば、これは中国側の大きな路線見直しだろう。中国が対日戦略を見直したのは、日本同様に中国も日本を必要としているという経済的現実を再認識したからだ。中国の輸出部門は日本からのパーツ輸入に依存しているし、省政府は、中国に進出している日本企業がもたらす雇用、投資、技術移転という恩恵を手放したくないと考えている。重要なのは、政治から経済を切り離す構想が北京でなく、日本の中国への直接投資(FDI)が減少していることを憂慮する中国のビジネスコミュニティ、そして省や地方レベルの政治指導者のイニシアティブで進められていることだ。政治対立が経済関係に影を落とすのを放置するのか、相互依存で日本との関係を包み込むのか。中国は分裂しているようだ。

ポーランドという名のドイツ経済―― 政治的悲劇から経済的成功への道

2014年2月号

マイケル・A・オレンシュタイン ノースイースタン大学教授(政治学)

ポーランドの歴史を知る者なら、この国がトラウマに満ちた過去を克服して台頭している現実を前に驚きを隠せないはずだ。数世紀に及んだ戦争と支配の時代を経て、ポーランドはこの25年以上にわたって平和を維持しているだけでなく、経済の安定と成長を実現し、EU(欧州連合)に加盟して「ヨーロッパ」との統合も果たした。実際、共産主義体制が崩壊して以降の20年にわたって、ポーランド経済はヨーロッパでもっとも高い年平均4%を上回る急速な成長を遂げ、いまや、ヨーロッパで6番目の規模をもつまでに拡大している。成功の多くは、ポーランドの欧米志向が歴史に根ざしていること、そして、この国がドイツの生産能力のニッチェ部門を担い、ドイツ製品の安価なパーツ工場の役割を果たしていることで説明できる。ポーランドの経済的台頭をうまく管理していくには、政治家たちは有権者の懸念に配慮しつつ、安価な賃金をいかに維持していくかという非常に難しいバランスを見極める必要がある。

大陸部東南アジアの統合と成長
―― メコン流域地帯のポテンシャル

2014年2月号

ティティナン・ポンスティラク チュラロンコン大学准教授

地理的なロケーションと天然資源に恵まれた大陸部東南アジアは、内的な結びつきを深め、統合されつつある。だがそのポテンシャルを理解するには、地域内の相互的なつながりの強化だけでなく、その人口動態にも目を向ける必要がある。すべてを合わせると、大陸部東南アジアは3億を超える人々で構成される消費市場、労働市場をもち、所得レベルも上昇している。地域的なGDP合計は、2020年までに1兆ドルを上回ると予測されている。たしかに、教育や医療部門、そして格差や政治腐敗という深刻な問題を抱えているし、援助の呪縛という罠も待ち受けている。だが、中国南部とタイが資本と専門知識を提供し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムが労働力、土地、天然資源を提供するという棲み分けが存在する。インフラプロジェクトや製造業は外国投資家に魅力的な投資機会を、そして外国企業は現地が切実に必要とする専門知識と技術を提供できる。大陸部東南アジアの未来は大きく開かれている。

トルコ経済の成長は幻か ―― 成長基盤を安定化させるには

2014年2月号

ダニエル・ドンビー フィナンシャル・タイムズ紙トルコ特派員

2013年5月にアンカラは巨大な建設プロジェクトを進める一方で、国際通貨基金への残りの債務を返済し、トルコ人の多くにとって、(2001年の銀行危機以降の)長い屈辱の時代にも終止符が打たれた。2005年にEU加盟交渉が開始され、また先進国が量的緩和政策をとったことで、トルコに大きな資金が流れ込み、2010年の成長率は9・2%、2011年の成長率は8・8%に達した。だが、このために見えなくなっている構造的な問題をトルコは抱えこんでいる。外資への過剰な依存体質、そして、経済領域への政治の行き過ぎた介入という二つの課題をトルコは克服していかなければならない。政府にとって好ましくないニュースを流す放送局に今後も政府がペナルティを課し、大きな決定がエルドアン首相の気分で左右され、そして、企業が略奪的な罰金に怯えるようになれば、トルコがこれまでのような経済成長を続けるのは難しくなる。・・・

自由貿易協定、20年後の現実 ―― NAFTAとメキシコ

2014年2月号

ホルヘ・G・カスタニェーダ 元メキシコ外相

NAFTA(北米自由貿易協定)が発効してから20年後の現在、おそらくあらゆる人が唯一同意できるのは、「あらゆる議論・主張が誇張されていたこと」だろう。貿易合意としては、NAFTAはメキシコにとって否定しようのないサクセスストーリーであり、輸出の劇的な増大をもたらすきっかけとなった。しかし、NAFTAの目的が経済成長を刺激し、雇用を創出し、生産性を改善し、所得水準を引き上げ、移民流出を減らすことだったとすればどうだろうか。判断は分かれるはずだ。一人当たりGDPもこの20年で2倍になった程度で、年平均成長率でみれば1・2%にすぎない。この時期にNAFTAに参加していないブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、ウルグアイは、メキシコよりもはるかに高い一人当たりGDPの成長を実現している。しかし、だからといって、NAFTAは失敗だったと決めつけることもできない。むしろ、メキシコは、エネルギー、移民、インフラ、教育、安全保障など、1994年の交渉テーブルに置き去りにしてきたアジェンダに今後取り組んでいくべきだろう。NAFTAは失望を禁じ得ない結果しか残せていないが、メキシコは、さらなるNAFTA的な路線、つまり、地域的経済統合路線を必要としている。

イラン攻撃論の再浮上という迷走

2014年2月号

ジョージ・パーコビッチ カーネギー国際平和財団副会長(研究担当)

米上院のタカ派集団が、イランにウラン濃縮の能力や施設を維持することを認めるようないかなる最終合意も認めないという内容の法案(イラン非核法案)を提出したことをきっかけに、軍事攻撃論が再浮上している。だが、軍事攻撃を含む、いかなる手段を通じても、イランのウラン濃縮を完全に止めさせるのは不可能だ。むしろ、イスラエルがイランに対する軍事攻撃を実施すれば、イスラエルの国際的正統性は地に落ち、イスラエルの核解体を求める圧力が大きくなるだけでなく、対イラン経済制裁への国際的支持は解体していく。交渉の最終目的はイランのウラン濃縮を完全に止めさせることではない。短期間で核兵器を生産できる能力をイランに与えないようにその能力を枠にはめることだ。オバマ政権の戦略が、イスラエルやうまく考案されていない米議会の冒険主義で損なわれるのを放置すべきではない。

依然として重要なサウジ石油
―― 米シェール資源はライバルではない

2014年2月号

ジョン・スファキアナキス
MASIC チーフインベストメント・オフィサー

アメリカのシェール資源ブームは世界最大の産油国サウジアラビアにとって厄介な事態だと考える人もいる。だがこれは、リヤドにとってもグッドニュースなのだ。市場の先行き不透明感をひどく嫌がるリヤドにとって、シェール資源を含む多様なエネルギー生産が進めば、市場の不透明感と急激な変動を抑えることにつながるからだ。さらに、いかなる国もサウジのような大規模な余剰生産能力を提供できない以上、これまでサウジに多くを依存してきた石油市場の構図は今後も変化しないだろう。むしろ、サウジにとって厄介なのはイラク、イラン、リビアが今後石油供給を増大させていくと考えられることだ。この場合、原油価格の下落を阻むために、サウジが減産を求められる可能性もある。サウジ国内の石油消費が増えていることも問題だ。2020年代末までには、サウジの国内消費量が輸出量を上回るようになると考えられる。・・・

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