クリミアは歴史的にみても、ロシアとトルコのパワーバランスを左右する戦略的要地だった。18世紀のクリミア・ハン国併合によってクリミアを手に入れたロシアは、海軍の活動範囲を黒海からエーゲ海、地中海へと急速に拡大していった。一方、ヨーロッパ諸国は、ロシアの拡大主義の動きをボスポラス海峡、ダーダネルス海峡へと押し返そうとした。このせめぎ合いが、1853―56年のクリミア戦争につながっていく。トルコの視点でみれば、今回のロシアのクリミア編入はロシアの歴史的拡大主義のパターンに合致している。今後、ロシアがともに資源地帯である黒海から地中海へと活動範囲を増強していく可能性は十分にある。トルコが生き残るための唯一の選択肢は、今も昔も同盟国と協調することであり、そのためには、欧米から信頼できるコミットメントを引き出す必要がある。