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に関する論文

CFR インタビュー
イラクの混迷と流動化
― 分裂か統合の維持か

グレゴリー・ゴース ブルッキングス研究所ドーハセンター シニアフェロー

バグダッドを攻略し、多くの石油資源が存在する南部を支配し、新たに政府を樹立することがイラク・シリア・イスラム国(ISIS)にとっての勝利の定義だとすれば、彼らが勝利を収めることはあり得ない。そうした目的を実現するにはISISの組織規模は小さすぎるし、すでに多数派であるシーア派は対抗戦略をまとめている。問題は、マリキ首相がスンニ派の政治家だけでなく、一部のシーア派の同盟勢力も切り捨て、影響力を抑え込み、権力を一元的に管理していることだ。マリキ個人の問題だけでなく、サダム・フセイン時代に遡るイラクの民族・宗派間の対立が根深いことも考慮する必要がある。要するに、イラクの政治階級は国をうまくまとめられずにいる。今回の危機をきっかけに、互いに対する反感を克服し、ISISの脅威に対抗できる政府を形作れる可能性は低いだろう。(報道によれば、ISISは6月下旬に「カリフ」を指導者とするイスラム国家を樹立すると一方的に宣言し、クルド自治政府も6月下旬に、今後の政治状況を見極めた上で、独立を目指す考えを示している)。・・・・(聞き手はMohammed Aly Sergie、Online Writer/Editor)

漂流するロシアの自画像
―― プーチンとソビエトの遺産

2014年8月号

キース・ゲッセン n+1誌共同編集長

「何が普通の国なのか」について、ロシアにはいまもコンセンサスが存在しない。ゴルバチョフはロシアを普通の国にすることを目標に掲げ、反ゴルバチョフクーデターを試みたゲンナジー・ヤナーエフもロシアを「普通の国に戻すこと」を主張した。ヤナーエフは過去に回帰することを普通の生活を取り戻す道筋と考え、ボリス・エリツィンは「西ヨーロッパの規範」を普通とみなした。しかしエリツィンがその構想の詳細を明らかにすることはなかった。結局のところ、多くのロシア人はスターリン時代に郷愁を感じている。だが、大多数のロシア人がプーチンを支持しているとはいえ、支持者の半分はスターリンを嫌い、残りの約半分はスターリンに心酔している。これはスターリンとは違うからプーチンを支持する人もいれば、スターリンと似ているからプーチンを支持する人もいることを意味する。・・・

ロシアとの新冷戦を管理するには

2014年8月号

ロバート・レグボルド コロンビア大学名誉教授

20世紀の冷戦と現在の危機はその規模と奥行きにおいて大きく違っているが、それでも現在のロシアとの関係破綻を新冷戦と呼んでもおかしくはない。ウクライナ危機がどのような結末に終わるとしても、ロシアと欧米の関係はかつての状態に戻ることはあり得ない。これが目にある現実だ、互いに、厄介な現状の責任は相手にあると考え、非難の応酬をしている。20世紀の冷戦もそうだったが、実際には、一方の行動によってではなく、その相互作用によって緊張と対立の悪循環が作り出されている。この点を認識しない限り、相手の行動を変えることはできない。ウクライナをめぐる現在の危機、そして今後の新しい危機をめぐっても、欧米はモスクワの選択を左右するような流れや環境を形作る必要がある。対決コースが大きなコストを伴うことを双方が理解し、異なる結末へと向かわせることを意識してこれまでとは違う路線をとらない限り、緊張が緩和し、問題が解決へと向かい始めることはない。

トルコ国境とシリア内戦
―― なぜトルコはシリア政策を見直しているか

2014年8月号

カレン・レイ シリア・ディープリー編集長

シリアが内戦に陥って以降、トルコ政府はシリアの反政府勢力がトルコ南部を兵士や物資の調達ルートとして利用することを認めてきた。問題は、穏健派集団とヌスラ戦線やイラク・シリア・イスラム国(ISIS)などのジハード主義集団を区別しなかったことだ。これによって、トルコと欧米との関係も悪化した。ここにきてアンカラがヌスラ戦線をテロ組織と認定したことで、欧米との関係は少しばかり改善するかもしれない。だが、ヌスラ戦線をこの段階で切り捨てても、もはや、シリアにおけるイスラム過激派の拡大を抑え込むのは難しいだろう。一方では、シリア難民の大規模な流入によって、トルコは大きなコスト負担を余儀なくされており、トルコ市民の苛立ちは高まっている。・・・・

なぜ国は分裂するのか
―― 国境線と民族分布の不均衡

2014年8月号

ベンジャミン・ミラー ハイファ大学教授(国際関係論)

「戦争か平和か」が問われる事態となると、民族集団は、国内のライバル集団よりも、他国における宗教・民族的な同胞と共闘しようとする。ウクライナ市民の多くは、自分たちにとって「異質なロシア」の支配から独立することを望んでいるが、一方でクリミアやウクライナ東部に暮らす人々は、(欧米志向の)「異質なウクライナ」による支配からの解放を望み、ロシアの一部となるか、ロシアと深く結びついた国を作る必要があると考えている。中東でも同じストーリーが展開している。すべてのレバント諸国は、シリアの内戦をめぐって内に分裂を抱えている。スンニ派国家はスンニ派率いる武装勢力に戦士、武器、資金を供給し、シーア派国家は、(シーア派の分派とみなせる)アラウィ派のアサド政権に同様の支援を提供している。こうした国と民族の間の不均衡を解決するには、さまざまな方法があるものの、厄介なのはそのすべてが問題を伴うことだ。

ウクライナにおけるロシアの戦争
―― 撃墜事件が明らかにしたロシアの軍事介入

2014年8月号

アレクサンダー・J・モティル ラトガース大学教授(政治学)

マレーシアの民間航空機撃墜事件によって、アメリカとヨーロッパは不快な現実を直視せざるを得なくなった。それはロシアが実質的にウクライナとの戦争に関与していることだ。もはやウクライナ軍が戦っている相手は、国内の武装勢力・分離主義勢力ではない。そこにいるのはロシア軍の指揮統制下にあるロシアの兵器で武装したロシア兵だ。これまでヨーロッパ人が長く想定していなかった本当の戦争が、現にヨーロッパ大陸の東端で起きている。

ネットプライバシーと「忘れられる権利」

2014年7月号

ヘンリー・ファーレル  ジョージ・ワシントン大学政治学准教授
アブラハム・ニューマン  ジョージタウン大学政治学准教授

2014年5月、欧州司法裁判所は、あるスペイン人の名前を入力すると示される検索結果を削除するようにグーグルに命令した。こうして、(欧州司法裁判所は、「忘れられる権利」、例えば、かつての負債や不適切な写真といった特定の情報について、市民がグーグルを含むインターネット企業に対して公共空間からの削除を求める権利を尊重することを義務づけた。これによって、プライバシー保護を求めるヨーロッパの流れは今後さらに大きくなり、必然的に、「蓄積された膨大な個人データを利用して、広告や消費者行動分析に利用しているアメリカのeコマース企業のビジネスモデルそのものが問題視されるだろう。今後、ヨーロッパの主要市場で、米企業がこれまでのような行動をとることは次第に難しくなっていく。当然、米企業はヨーロッパの立場に歩み寄る必要があるし、今後、デジタル時代におけるプライバシー論争は二つの競合するビジョンによって規定されるようになるだろう。

イラク・シリア問題にどう対処するか ―― 分割による連邦国家化を

2014年7月号

レスリー・ゲルブ 米外交問題評議会名誉会長

オバマ政権は明確な戦略をもつ必要がある。包括的な戦略枠組みを意識した行動をとらない限り、結局は何をしてもうまくいかない。先ず、イラクの混乱に関連する本当の脅威を作り出しているのが誰であるかを特定しなければならない。答えは、シリアでもイラクでも脅威を作り出しているのは(スンニ派の)ジハーディストだ。したがって、この脅威に対抗することに利益を見いだす勢力を特定し、連帯を組織する必要がある。それは皮肉にもアサド政権やロシア、イランに他ならない。アサド政権もイランもロシアも、スンニ派の過激主義集団を敵視している。私なら、現在の問題に対処するためにイランと取引する。スンニ派のジハード主義者がイラクとシリアで大きな影響力を手にすれば、将来における和平への道筋を描くための政治的解決策を模索するのは不可能になる。実際、シリア、イラク双方における見込みのある平和への道筋を描くには、(ジハード主義勢力を抑え込んだ上で)連邦制を導入するしかないだろう。(聞き手はバーナード・ガーズマン、consulting editor@cfr.org)

米中露・新戦略トライアングルで 何が変わるか

2014年7月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・ グローバルマクロ分析ディレクター
ジョーダン・シュナイダー  ユーラシアグループ リサーチャー

冷戦期を思わせる戦略トライアングルが再び復活しつつある。冷戦期の米中ロ戦略トライアングルを巧みに利用したのはアメリカだったが、今回のトライアングルで強い立場を手にしているのは中国だ。北京は、ウクライナ危機に派生する米ロ対立をうまく利用できる立場にある。中国はロシアからのエネルギー供給を確保するだけでなく、ロシア市場へのアクセスの強化、ロシアからの軍事技術の供与を望んでいる。もちろん、戦略トライアングル内部の対立構図をはっきりと区分できるわけではない。中国にとってアメリカは依然として重要な経済パートナーだし、住民投票で国境線を変えたロシアのやり方を、国内に大きな火種を抱える中国が認めることもあり得ない。だがそれでも、この新環境のなかで大胆になった中国が、現在の東アジアにおける地域バランサーとしての役割をアメリカが遂行していくのを難しくするのは避けられないだろう。・・・

ロシア、中国と新しい外交課題

2014年7月号

ロバート・ゲーツ 元米国防長官、 ファリード・ザカリア CNNファリード・ザカリアGPS ホスト

プーチンにとって、ウクライナにおける最終目的はキエフに親ロシアの政権を誕生させることだ。ヤヌコビッチほど、はっきりとした親ロ派である必要はない。東部がモスクワに目を向け、独立に近い大きな自治権を確保し、しかもウクライナがNATOやEUにこれ以上近づいていかなければ、おそらくプーチンはその状況で満足するのではないかと思う。すくなとも、当面はそうした状況で十分のはずだ。

そこに戦略的空白が存在すれば、(台頭する国家は)自分たちのナショナリスティックなアジェンダを模索するチャンスがあると考える。そしてひとたび行動を起こせば、それは自律的にエスカレートしていく。防空識別圏の設定、単なる監視船ではなく、戦闘機まで投入し始めた尖閣諸島をめぐる対日アプローチの激化、さらには南シナ海における石油掘削プラットホームの設置に象徴される、この18カ月から2年間の中国の攻撃的なアプローチを、私はこの文脈で捉えている。

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