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に関する論文

紛争後のガザを誰が統治するのか
―― 紛争から外交への長い道のり

2024年1月号

ヨースト・ヒルターマン 国際危機グループ プログラムディレクター(中東・北アフリカ)

ハマスの軍事能力とガザの統治体制を破壊するという目標だけでなく、イスラエルは、ガザを再占領し、ガザ住民を直接統治することにも行き詰まるだろう。結局、国連その他の人道支援機関が基本的なアメニティーを提供し、ほとんどのガザ住民が避難生活を続けることになると考えられる。ハマスの粉砕を最優先課題としているために、イスラエルは、もっとも必要で価値あるもの、つまり、安全な環境、治安をいかに取り戻すかという目的を見失っている。しかも、イスラエルが2国家解決策を拒否しているために、イスラエルとパレスチナの双方が納得できる交渉による解決を達成するのを阻む、ほほ克服できない課題が存在する。

欧州におけるロシアの第二戦線
―― セルビアとプーチンの思惑

2023年12月号

デイビッド・シェッド 元米国防情報局長官代理
イヴァナ・ストラドナー 民主主義防衛財団 リサーチフェロー

ロシアは、バルカン半島をヨーロッパの弱点とみなし、なかでもセルビアをもっとも脆弱なポイントと捉えている。モスクワをバルカンにおける唯一の信頼される紛争調停者にして、欧米に対して影響力をもてるようにすることがプーチンの狙いだ。すでに、コソボのセルビア系住民が警察部隊を襲撃し、その後、セルビア軍がコソボとの国境地帯に動員されるという事態も起きている。実際、セルビアの指導者は、コソボで作戦を展開する機会がすぐにでも訪れるだろうと考えている。セルビアとコソボの紛争は、バルカンの他の地域に簡単に飛び火しかねず、これこそ、欧米がウクライナから他の場所へ関心を移すことを望んでいるプーチンが期待する展開かもしれない。

AIと経済革命
―― 人間のツールとして生かす政策を

2023年12月号

ジェームズ・マニュイカ グーグル-アルファベット シニアバイスプレジデント
マイケル・スペンス スタンフォード大学 フーバー研究所 シニアフェロー

AIが突きつける危険、それが引き起こす壊滅的なダメージを防ぐための国際的AI規制の必要性を指摘する議論は多い。しかし同様に重要なのは、AIの生産的な利用を促すポジティブな政策の導入だろう。AIが経済に与える最大の影響は、人間の仕事のやり方を変化させることだ。仕事を構成するタスクの一部、全体の30%程度は、AIによってオートメーション化されるが、職業そのものがなくなることはない。但し、能力の高いマシンと協力して仕事をこなすことになるために、新たなスキルが必要になる。現在AIが世界に与える最大のリスクは、文明を破滅させることでも、雇用に大打撃を与えることでもない。それは、現在の経済格差を今後何世代にもわたって拡大するような形で開発され、使われる恐れがあることだ。これを回避する政策が必要になる。

経済安全保障国家と地政学
―― デリスキングとサプライチェーン

2023年12月号

ヘンリー・ファレル ジョンズ・ホプキンス大学 教授(国際関係論)
エイブラハム・ニューマン ジョージタウン大学 教授(政治学)

いまや、消費者向け電子機器が簡単に兵器化され、高性能グラフィックチップが軍事用人工知能のエンジンに転用される時代にある以上、貿易と通商を安全保障から容易に切り離すことはできない。こうして生まれたのが「相互依存世界が作り出す脆弱性を管理するプロセス」としての「デリスキング」だ。経済安全保障の新概念を実践していくには、それに対応していくための政府構造の再編に取り組まなければならない。過去は適切な指標にはならないし、現在の問題は厳格な再評価を必要としている。高度な相互依存状況にあり、安全保障上リスクに満ちた世界にうまく適合していくには、経済安全保障国家の確立に向けた大きな改革が必要になる。

戦争で溢れる世界
―― なぜ紛争が多発しているのか

2023年12月号

エマ・ビールズ 欧州平和研究所 上級顧問
ピーター・ソールズベリー コロンビア大学 国際公共政策大学院 非常勤教授

世界は、「平和」のゴールポストを紛争解決から紛争管理へシフトさせてしまった。だが、中東やその他の地域で起きている出来事は、紛争を管理できる期間が限られていることをわれわれに教えている。世界で戦闘が激化し、紛争の根本的な原因が解決されないままであるため、従来の平和構築や開発のツールはますます効果がなくなってきている。停戦交渉を「和平プロセス」と表現し、和平が何年も何十年も先のことではなく、すぐそこにあるかのように説明されると、銃声が一時的に静まり返っただけで、和平は達成されたと錯覚することがあまりにも多い。紛争とその悪影響を解決し、管理するための新たなアプローチが早急に求められる。

変化した世界とアメリカ外交
―― アメリカパワーの源泉

2023年12月号

ジェイク・サリバン 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

米中は経済的には相互依存の関係にある。競争はまさにグローバルだが、ゼロサムではなく、共通の課題にも直面している。アメリカの未来は二つのことで左右される。それは、地政学的競争において優位を維持できるかどうか、そして気候変動からグローバルヘルス、食糧安全保障、インクルーシブな経済成長までの、トランスナショナルな課題に取り組むために世界を動員できるかどうかだ。そのためにも、アメリカのパワーの捉え方を変化させられるかが問われる。国際的なパワーはパワフルな国内経済に依存し、その経済の強さはその規模や効率性だけでなく、危険な対外依存をしていないことにも左右される。

AI統治と軍備管理の教訓
―― 壊滅的事態を回避する米中の責務

2023年12月号

ヘンリー・A・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエイツ会長
グレアム・アリソン ハーバード大学教授

この2年にわたって、AI革命の最前線にいるテクノロジーリーダーたちと問題を検証してきたわれわれ二人は、「AIの無制限、無節操な進化はアメリカと世界に破滅的な結果をもたらす」という見通しには大きな説得力があり、「各国の指導者はいますぐ行動を起こさなければならない」という結論に達した。そうする上で、われわれは冷戦期の核管理の歴史から教訓を学ぶことができる。大国間戦争が80年近くもなかった国際秩序を形作るなかでわれわれが学んだ教訓は、いまAIと対峙する指導者にとって最良の指針となる。AIのもっとも危険な発展と応用を防止するためのガイドラインを作成する機会を手にしている米中は、この機会を早い段階で生かす必要がある。

ハマス・イスラエル戦争の現状
―― 人道問題、ヒズボラ、ハマス後のガザ(11/2)

2023年12月号

<スピーカー>
マックス・ブート 米外交問題評議会シニアフェロー(国家安全保障研究)
スティーブン・A・クック 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)
リンダ・ロビンソン 米外交問題評議会シニアフェロー(女性と外交政策担当)
レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)

<プレサイダー>
マイケル・フロマン 米外交問題評議会会長

イスラエルの行動は戦争犯罪だと広く批判されている。ターゲットをもっと注意して選ぶ必要がある。一方、ハマスの行動が戦争犯罪であることも明らかだ。・・・彼らは、民間人地域のなかや地下に軍事施設を作り、イスラエルがハマスに攻撃をするたびに巻き添え犠牲が出る可能性を最大化している。これは、非常に残忍で醜い戦争形態だ。(M・ブート)

イランの戦略的第3の支柱は、国連であれ、イスラム協力機構であれ、国際社会を動員することだ。要するに、国際社会を動員してイスラエルに停戦に応じるように圧力をかける。目的はもちろん民間人の犠牲を回避することだが、実際には、ハマスを存続させることにある。
(R・タキー)

難しいとしても、(ハマス後のガザには)パレスチナ人による解決策が求められる。但し、ひどく人気のないマフムード・アッバス議長の権限を西岸からガザ地区まで拡大できるかは、わからない。ガザ地区でまとまり、ガザ地区を管理できる指導者が他にいるはずだ。アッバスはガザを統治できるような人物ではない。(S・クック)

戦争とソーシャルメディア
―― もう一つの戦争(10/27)

2023年12月号

ファラ・パンディス 米外交問題評議会 非常勤シニアフェロー(対テロ、イスラム研究)

ハマスはイスラエルの破壊とユダヤ人の根絶を求めているが、「西洋はイスラムを憎んでいる」というアルカイダが持ち出したストーリー(物語)が、ハマスの世界観を可能にするエコシステムの基盤に存在する。しかも、普通の人々がソーシャルメディアのコンテンツを制作し、感情を煽り、ストーリーを強化している。すでに、10月7日以降、イラクとシリアで米軍に対する攻撃が相次いでいる。米国内でも新たなリスクが生じるだろう。国土安全保障省は、ガザ紛争が進むにつれて、イスラエル人、パレスチナ人、ユダヤ教徒、イスラム教徒、そしてシーク教徒のようなこれらの宗教の信者と誤認された人々に対する暴力が米国内で増加する危険があると警告している。米政府は反イスラムや反アラブのヘイト、そして反ユダヤ主義に対抗していくために、道徳的、戦略的にもっと努力する必要がある。

イスラエル・イラン戦争のリスク
―― ガザ紛争が長期化すれば(10/19)

2023年12月号

ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー

これまで、イスラエルとイランは、制御不能なエスカレーションリスクを冒すことなく、定期的に相手を挑発できると考えてきた。だが、いまやガザにおける戦争が、そうした微妙な計算を狂わせつつある。テヘランは、イスラエルとハマスの戦争を、レバノンやシリアでの代理(傀儡)勢力の攻撃によってイスラエルの能力を低下させるチャンス、あるいはイラクやシリアの米軍に対する武装勢力による攻撃の再開を促すチャンスとみなすかもしれない。こうした作戦はすでに進行しているのかもしれない。紛争が長引けば、安定化へのインセンティブは低下し、イスラエルとイランの衝突リスクは高まっていく。戦争がまだこの地域に広がっていないとしても、世界の指導者たちは、戦争の拡大はあり得ないと錯覚してはならない。

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