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に関する論文

解体する秩序
―― リーダーなき世界の漂流

2014年11月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

アメリカの覇権は廃れつつあるが、バトンを引き継ごうとする国はなく、今後、現在の国際システムはさらに雑然としたシステムと化していくだろう。国際ルールを守るのではなく、独自の利益を重視する非常に多くの国がパワーセンターにひしめき合い、アメリカの利益や優先課題が配慮されることもなくなる。これによって新しい問題が作り出され、現状の問題を解決するのもますます難しくなる。要するに、ポスト冷戦秩序は解体しつつある。秩序の崩壊はパワーと意思決定メカニズムが分散化していること同様に、アメリカがもはやまともに国際行動を起こさないと考えられていることに派生している。いまや問うべきは、世界秩序が今後も解体していくかどうかではない。いかに迅速に奥深く解体プロセスが進展するかだろう。

憂鬱なウクライナの未来
――追い込まれた経済と未来

2014年11月号

バラザス・ジャラビック カーネギー国際平和財団客員フェロー

ウクライナの治安はひどく悪化している。独立広場で民衆デモが起きて以降、法執行機関への市民の信頼が低下しているために「ウクライナの法と秩序は崩壊する」と予測する欧米の専門家もいる。兵器が大量に出回っているために、今後、政治論争が暴力化、過激化していく恐れもある。さらに、ウクライナがどのようにロシアとの平和を実現するかについてのコンセンサスは存在しない。ロシアに立場を譲ることは屈服に等しいと考える人もいれば、民主的で欧米志向の国家に向けて前進するには、ドンバス(ドネツク州とルハンシク州)を実質的にロシアに委ねるしかないと考える人もいる。政府の決定も民主的に行われているとは言いがたく、ポロシェンコ政権もしだいにヤヌコビッチ政権と変わらないとみなされ、同様の結末に直面する恐れもある。・・・

トルコとクルド人のジレンマ
―― イスラム国と軍とクルド人問題

2014年11月号

ハリル・カラベリ 中央アジア・カフカス研究所  シニアフェロー

イスラム国が作り出すトルコ・シリア国境地帯の混乱を前に、トルコ国内の政治バランスは崩れ、いまや軍部が大きな力をもちつつある。一方で、政府と国内のクルド人勢力との和平プロセスはいまや破綻しかねない状況にある。「シリアのクルド人に対するイスラム国の攻撃にトルコ政府は水面下で加担している」とみなすクルド人の怒りはピークに達している。一方、国境地帯の混乱を前に、エルドアンは国内のクルド人の動きを警戒するトルコ軍の見方と提言に配慮せざるを得ない状況にある。トルコ軍は軍のレッドラインが「トルコ国家の統合と領土保全を守ること」であることを改めて強調している。これはシリアとの国境線だけでなく、「クルド人に自治権を与えることを軍は認めない」というメッセージに他ならない。トルコは一体どこへ向かうか。その多くはクルド人が「政治的連帯」のパートナーをどこに求めるかで左右される。

シリア問題に揺れるトルコ

2014年11月号

マイケル・J・コプロ―  イスラエル・インスティチュート プログラム・ディレクター

公正発展党(AKP)政権による統治はトルコにかつてない安定をもたらした。経済成長を実現し、国内のクルド問題への対策をとったことが、こうした安定化に大きく貢献した。AKP支持者でないトルコ人も、現状からみて、「テロや暗殺、軍事クーデター、制御できないインフレの時代は遠い過去へと過ぎ去った」と考えてきた。しかし、イスラム国の台頭によって、シリアとの国境地帯が極度の混乱に陥っているために、こうした安定が大きく損なわれつつある。イスラム国がトルコを直接的に脅かすことはないとしても、シリア難民の流入に派生する経済的重み、国境地帯でのイスラム国とクルド人の戦闘に軍を投入しようとしない政府へのクルド人の反発、ナショナリズムの復活、そして説明責任を負わない情報機関の権限の濫用などがトルコを次第に不安定化させつつある。・・・

マスーム・イラク大統領との対話

2014年11月号

フアド・マスーム イラク大統領、マイケル・R・ゴードン ニューヨークタイムズ紙記者

「住民投票で独立が支持されても、直ちにクルド国家としての独立を宣言するわけではない。国家として必要になるものを整備していく必要があり、これは一種のプロジェクトとみなすべきだろう。もちろん、地域的、国際的な根回しも必要になる。このプロセスには非常に長い時間が必要になる。現状ではクルドが独立を宣言できる状態にはない。・・・連邦国家から(各地域を分けた)国家連合へと向かうべきだと考える人もいるが、イラクを三つの独立国に分けるのは、現状からみれば、現実離れしている。・・・

イスラム国のアジアへの拡大

2014年11月号

ジョセフ・リョー・チンヨン ブルッキングズ研究所シニアフェロー(東南アジア研究担当

東南アジア諸国がもっとも警戒しているのは、国内のイスラム教徒がイスラム国のイデオロギーに感化されて中東に渡り、イスラム国の一員として戦い、最終的にその過激思想をアジアに持ち帰ることだ。すでに、世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア政府は、50人以上がシリアとイラクで戦闘に参加していることを確認している。マレーシアからは30―40人がイスラム国に参加しているとみられる。しかも実際の数はこれよりもはるかに多い可能性がある。なぜ彼らはイスラム国に魅了されるのか。一つには、イスラム国の活動に「終末のカリフの国」が誕生するというコーランの予言とのつながりを彼らが見いだしているからだ。「(黒い旗を掲げて戦うとされるイスラムの救世主)イマーム・マフディと(偽の預言者)ダッジャールの間で終末戦争」が起きるという予言に彼らは現実味を感じている。・・・・

イスラム国の次なるターゲット?
―― 破綻国家リビアにおける抗争

2014年10月号

ジェフリー・ハワード
コントロール・リスク リードアナリスト (リビア担当)

深刻な政治危機と国家制度の崩壊によって権力の空白が生じているリビアは、テロ集団が活動しやすい環境にある。イスラム国の指導者アブマクル・バグダディは、東部のバルカ(ベンガジ州)、西部のトリポリ、南部のフェザーンがすでにイスラム国の支配下にあると表明し、最近もイスラム国の関連組織が21人のエジプト人コプト教徒を斬首・殺害する事件が起きている。とはいえ、リビアにおけるイスラム国の影響力は過大評価されている。人口の95%がスンニ派であるリビアにおける宗派対立のリスクは、イラクやシリアのそれほど深刻ではない。リビアが近く破綻国家と化すというシナリオも取りざたされているのは事実だが、イスラム国がリビアをカリフ国家の一部とするのは容易ではないだろう。・・・

香港と中国民主化の行方

2014年10月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)

香港の活動家たちの要求を前に、北京が取り得る選択肢は数多くある。「デモを手荒く粉砕すれば、デモ参加者たちがさらなる改革を求めて運動するのを抑え込める」と北京は期待するかもしれない。あるいは、「香港の小さな地域にデモを封じ込めて、運動が次第に下火になっていくこと」を期待することもできる。現在の行政長官を当座の措置として解任するか、香港のさまざまな政治アクターを参加させる委員会を作り、2017年以降の行政官選挙のあり方を検討させることもできるだろう。問題は、北京の指導層にとってこれらの選択肢のすべては、いずれもかなりの政治・経済コストを伴うために、いずれも魅力的なものではないことだ。・・・

空爆を支える外交戦略とは

2014年10月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

「米地上軍は送り込まない」というフレーズが呪文のように繰り返されているが、すでにアメリカは1000名を超える米軍のアドバイザーをイラクに派遣しているし、いずれイラク、シリアの双方に特殊作戦部隊を送り込むことになるだろう。イラクであれ、シリアであれ、米軍を駐留させることはあり得ないとしても、「高度なターゲット」を粉砕する上で最善かつ唯一の戦力である特殊作戦部隊を送り込む流れになるのは避けられないだろう。イラクの場合、治安部隊だけでなく、スンニ派部族やクルド人武装勢力を動員できるかもしれない。一方、シリアの反政府勢力は弱く、分裂している。むしろ、アラブ諸国が部隊派遣を行うように説得すべきだろう。解放された領土は、われわれが受け入れられる条件で統治し、民衆に接していくことに合意するスンニ派に委ねるべきで、その相手はアサド政権ではない。これらの詳細を協議していく必要がある。この意味で、スンニ派のアラブ国家だけでなく、おそらくはイランやロシアのような国も枠組みに参加させるべきだろう。(聞き手はバーナード・ガーズマン cfr.org, Consulting Editor)

CFR Meeting
イスラム国と中東の未来

2014年10月号

エド・フサイン/ 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)
ジャニーヌ・デビッドソン/米外交問題評議会シニアフェロー(国防政策担当)

空爆でイスラム国の勢いは止められるかもしれないが、粉砕することは不可能だ。イスラム国がシリアに聖域をもっていることも考えなければならない。イスラム国の問題を簡単に解決する方法はなく、長期的なアプローチをとるしかない。これまでの経験からみて、10-15年という時間が必要になるだろう。(J・デビッドソン)

われわれはイスラム過激主義に魅了されるのは愚かで、社会から孤立したアブノーマルな人物だと考えがちだが、彼らは自分のことを過激派とは自覚していないし、アブノーマルだとも考えていない。むしろ「自分はいたってノーマルだ」と考えている。神の期待に即した活動をしていると信じているからだ。(E・フサイン)

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