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に関する論文

中国の次なる経済モデル
―― デジタル革命と創造的破壊

2015年1月号

ジョナサン・ウォツェル マッキンゼー・グローバル・インスティチュート ディレクター
ジョンミン・セオン マッキンゼー・グローバル・インスティチュート シニアフェロー

中国経済のデジタル化への移行は始まったばかりで、今後数年で、テクノロジーが中国経済のビジネススタイルを劇的に変化させていくだろう。インターネットを利用したデジタル化は新しい巨大市場を誕生させるが、それによって古い市場は破壊され、中国企業はかつてなく厳しい市場競争を受け入れざるを得なくなる。数十年にわたって中国経済は大規模な資本投入と労働力の拡大に依存してきたが、いまやこのモデルで動く成長のエンジンは力を失いつつある。デジタル経済の拡大という次のステージは間違いなくリスクと混乱をもたらすが、企業の生産性向上のポテンシャルを解き放つことになる。経済のデジタル化は、中国の国家目標である「持続可能な経済発展モデル」の実現に大きく貢献することになるだろう。・・・・

世界エネルギーアウトルック

2015年1月号

ファティ・ビロル(スピーカー)国際エネルギー機関 チーフエコノミスト
ミシェル・パトロン(プレサイダー)米国家安全保障会議シニアディレクター(エネルギー担当)

原油価格については現在のような水準が1-2年は続くのではないかと私はみている。だが、価格が低下すれば、投資が低下し、需要が上向く。1-2年、あるいはもっと早い段階で、原油価格が上昇し、過去数年間のようなレベルに戻るとしてもおかしくはない。・・・2020年以降は米シェールオイルの生産の伸びは鈍化するだろう。さらに現在の低い原油価格が(投資を低調にし)、シェールオイルの開発・生産を抑え込むと考えられる。2015年には投資計画の見直しが行われるだろうし、価格が現状のままなら、その投資規模はおそらく10%程度小さくなり、その余波が2016年以降に現れてくる。・・・2025年までには、中東での石油増産が再び必要になるが、投資が低調な現状から推定すると中東石油の増産を期待するのは難しいだろう。現在の中東情勢、イラク情勢をみると、現地への投資に関心を示すものはいない。多くの専門家が考えるように、現在の中東の地政学状況が構造化し、今後も続くようなら、投資が進むはずはなく、2020年代に中東原油の増産を期待するのは難しくなる。

嵐の前の静けさ
―― 次にブラックスワン化する国は

2015年1月号

ナシーム・ニコラス・タレブ ニューヨーク大学教授
グレゴリー・F・トレバートン 米国家情報会議議長

国家の脆弱性の基準は五つ存在する。中央集権型の統治システム、画一的で硬直的な経済体制、過大な債務とレバレッジ、政治的硬直性、そして近い過去に衝撃から立ち直った経験をもっていないことだ。この基準に照らせば、世界地図は大きく違ってみえてくる。意外にもいつも混乱しているイタリアに脆弱性を示す兆候はない。政治危機が間欠泉のように吹き出すにも関わらず、うまく分権化されており、その都度、立ち直っている。一方、サウジは石油資源に経済を依存し、政治的に硬直的で、高度な中央集権国家だ。日本も「穏やかな脆弱性」を抱える国に分類できる。非常に大きな対GDP比債務残高を抱え、その多くの時期を通じて一つの政党が政治を支配し、輸出に依存し、「失われた10年」から完全には立ち直れずにいる。そして中国だ。過去の混乱で培った中国の体力は、債務や集権化という弱点を補うほどに強靱だろうか。おそらく答はノーだ。時が経つにつれて、北京がブラックスワン化するリスクは高まっていく。・・・・

インターネットと未来都市
―― モノのインターネットが支える
スマートシティ

2015年1月号

ジョン・チェンバース シスコ・システムズ 最高経営責任者
ウィム・エルフリンク シスコ・システムズ エグゼクティブ・バイスプレジデント

いまやネットにつながるモノはコンピュータ、タブレット、電話だけではない。都市が管理する駐車スペース、鉄道線路、街灯、ゴミ箱も今後インターネットにつながれ、行政サービスの質と効率が劇的に改善していく。伝統的な都市インフラをインターネットで統合管理するスマートシティにおける市民生活は劇的に進化していく。あらゆるモノをインターネットにつなげば、交通の流れはスムーズになり、駐車場の混雑、汚染、エネルギー消費、そして犯罪の発生さえも低下させることができる。今後、政府と市民との社会契約そのものが見直され、IT企業と政府が行政サービスを提供していくことになるだろう。スマートシティは公務員の労働生産性を高め、新しい雇用と才能を引きつけ、増税しなくても新しい歳入減を確保し、市民の生活を質的に向上させることになるだろう。・・・・

起業を成功させる人物とは

2015年1月号

マイケル・モリッツ ベンチャー・キャピタリスト

はっきりとした考えをもち、明確に考えを表現するコミュニケーション能力があり、大きな使命感をもっている人物。大きな忍耐力をもち、痛みを伴う決定を下すことを厭わず、圧倒的なバイタリティをもつ人物。そして自分が始めようしていることが一生の仕事になると確信している。これが一握りの素晴らしい企業を支える優れた起業家がもっている資質だ。・・・多くの企業がもっとも遠ざけるべきは「プロフェッショナルなマネージャー」たちだ。ほとんどの企業は、マネージャーではなく、起業家が運営した方がうまくいく。企業が完全な状態にある必要はないし、少し荒削りで、混沌として、先が読めない状態でも、活力があれはいい。活力を保ち、新しい製品を送り出し、迅速に行動することが重要だ。・・・・

欧米に背を向けたドイツ
―― 中ロとの関係強化を模索する理由

2015年1月号

ハンス・クンナニ 欧州外交問題評議会 リサーチディレクター

ドイツは欧米同盟に留まることが経済的、軍事的に不可欠だとはもはや考えていない。ベルリンの壁崩壊とEUの拡大は、アメリカに軍事的に依存する必要性からドイツを解放し、しかも、ドイツの輸出主導型経済は、ロシアや中国市場への依存を強めている。これは、アメリカ主導の対ロ制裁への参加を決定する際に、メルケル首相が制裁に反対する経済界からの大きな圧力に直面したことからも明らかだろう。・・・ドイツは中国との経済関係の強化も模索している。「アジア版クリミア編入」が起きて、アメリカが中国との深刻な対立局面に陥った場合、ドイツはどう動くだろうか。おそらく中立を選ぶはずだ。・・・EUにおける大きな影響力をもっているだけに、中ロとの関係強化を模索するドイツ外交の変化は、ヨーロッパ外交にも大きな影響を与えずにはおかないだろう。・・・・

電子メール、電話、送金、金融決済など国境を越えた通信や取引の95%は空や宇宙ではなく、海底を走る約300本、全長96万キロ超の光ファイバーケーブルを経由している。問題は、この重要な通信ケーブルが海底でも地上との接続部分でもほぼ無防備な状態におかれていることだ。ケーブルの位置を示した地図はインターネットでも入手可能で、これを見れば各国の弱点が簡単にわかる。敵国が、高解像度ソナーと爆弾を積んだ無人自律型無人潜水機を遠隔操作して相手国にとって重要なケーブルを簡単に破壊できる状態にある。・・・・消費者は海底ケーブルを空気のような存在とみなし、その重要性を実感することがない。だが、それが失われれば、空気が失われたときと同様に苦しい思いをする。最悪のシナリオが現実になる危険を最小限に抑える対策をとる価値は十分にあるはずだ。・・・・

あらゆるモノを売る男
―― アマゾン・コム創設者、
ジェフ・ベゾスとの対話

2015年1月号

ジェフ・ベゾス amazon.comの創設者、最高経営責任者

アマゾンがまだ小さな企業だった頃に、われわれは任意抽出した約1000人の顧客に「われわれが現在販売しているもの以外に、あなたはアマゾンが何を販売することを期待しますか」という内容の電子メールを送った。われわれの顧客が望んでいたのは・・・膨大なリストの商品だった。これは驚くべき事態だった。これによって、自分たちが考案したシステムを用いて、非常に数多くの消費財を売れるのではないかとわれわれは考えるようになった。・・・起業家に適した資質はそれほど多くない。一つは現状に満足しないことだ。どうすればもっとよくできるかを常に考える。・・・新しい発明が本質的にディスラプティブ(破壊的)だとは限らない。消費者が「古いやり方よりも、この新しいやり方が好きだ」と感じるようになって初めて、発明はディスラプティブ・テクノロジーになる。・・・・

ドナルド・トゥスク欧州理事会議長は、エネルギー資源を政治ツールにしたロシアの恫喝策に翻弄されないように、ヨーロッパは「エネルギー連合」を組織すべきだと提言している。天然ガスの調達を任務とする統合組織をヨーロッパが立ち上げれば、ヨーロッパはロシアの独占的立場に対抗できるようになるからだ。たしかに、ヨーロッパの立場は一枚岩ではない。ロシア資源に全面的に依存するバルト諸国のような国もあれば、まったく依存していないデンマークやスウェーデンのような国もある。さらに、この提言は二酸化炭素排出量の削減やエネルギーサプライヤーの多角化など、EUが2008年に採択した政策目的を放棄することにつながる。だが、買い入れを一つの窓口に集約すればEUの交渉力を強化し、価格を抑え、ロシアが政治目的を推進するために天然ガス資源を利用するのを阻むことができる。欧州エネルギー連合構想の実現を模索する価値は十分にある。・・・・

ゾンビ化したアベノミクス

2015年1月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミック・レポート エディター

安倍政権は、輸出促進策の一環として(意図的かどうかはともかく)円安を誘導し、円の価値は30%低下した。だが競争力を強化するための構造改革を先送りしているために、円安効果はほとんどなく、国内経済の成長は停滞したままだ。むしろ、円安による物価の上昇で、勤労者世帯の実質可処分所得は1年前と比べて6%低下した。消費支出が停滞し、経済がリセッションに陥ったのはこのためだ。安倍政権が3本の矢を本当に利用するつもりなら、景気刺激策と金融緩和を、構造改革という困難で時間のかかる手術をするための麻酔薬として利用したはずだ。だが、日本政府は長期にわたって景気刺激策と金融政策を、痛みを感じないようにする麻薬として用いただけで、手術(構造改革)をしなかった。・・・

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