エルドアンの大胆なギャンブル
―― 二正面作戦の政治的余波を考える
2015年9月号

トルコ政府は、イスラム国の空爆に踏み切っただけでなく、イラクにいるPKK勢力を空爆する二正面作戦を展開している。さらにアメリカとの情報共有の拡大に応じ、米軍の国内基地の使用を認める一方で、シリア側国境地帯に安全地帯の設定を求めている。複雑なのは、米軍がイラクのクルド民兵組織「ペシュメルガ」、シリアのクルド民兵組織「人民防衛隊(YPG)」と協力関係にあり、しかも、YPGはトルコが空爆対象にしているPKKの関連勢力であることだ。トルコのPKK空爆によって、トルコ国内のクルド人勢力とトルコ政府との関係も微妙になる。しかも、YPGがイスラム国に対して軍事的に勝利を収め、国内ではPKK系の政党が最近の選挙で大きな躍進を遂げている。エルドアンの大胆な賭けが、国際的、そして国内政治面でどのような帰結を伴うのか、予断を許さない状況にある。