バルカンに対するロシアの野望
――クロアチアはロシアの攻勢を阻めるか
2017年9月号
プーチン大統領はバルカンを再びロシアの勢力圏にしようと、この地域における分裂や社会・経済的な弱点につけ込んでいる。モスクワは、バルカンを北大西洋条約機構や欧州連合から遠ざけ、その地域的エネルギー供給を支配することでバルカンを完全にロシアに依存させたいと考えている。すでにボスニアでは、プーチンの財政支援によって勢いづいたスルプスカ共和国のミロラド・ドディク大統領が分離独立を強く求めている。これが実現すれば、1990年代のバルカン紛争のような事態が再現されかねない。救いは、クロアチアがハンガリーやポーランドで勢力を拡大しつつあるナショナリズムを寄せ付けていないことだ。クロアチアは今やヨーロッパ南東部のリーダーであり、この国の政治状況が地域のダイナミクスに大きな影響を与えている。欧米はクロアチアの穏健派政府が、ロシアの影響力拡大に対抗していく上でのもっとも力強い(防波堤、そして)同盟相手であることを認識する必要がある。