何が賃金レベルを停滞させているのか
―― ロボット税では問題は解決しない
2017年10月号
低賃金や失業をもたらすと言われているロボットに対して課税するというビル・ゲイツの提言に現実味はあるのか。ロボットに課税すれば、「オートメーション導入のペースを鈍化させ」、労働者の失業問題を社会的に管理できるようになると彼は主張した。だが、どのようなロボットに課税するかを事前に判断するのも、ロボット税の体系を決め、監督していくのもおよそ不可能だ。しかも、それはあらゆる国が奨励しているテクノロジー投資に対してペナルティを科すことになる。結局のところ、賃金レベルの停滞は、労働組合の衰退やアウトソーシング、そしてロボットが原因ではない。最近のマクロ経済の研究は、賃金レベルの停滞はロボットよりも、不動産価格の高騰や(独占や取引制限、競争制限などの)市場支配力に関係していることを示している。