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論文データベース(最新論文順)

世界はAIを統治できるのか
―― 手遅れになる前に規制を

2023年10月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ 社長兼創設者
ムスタファ・スレイマン インフレクションAI CEO兼共同創設者

AIシステムの恩恵が明らかになるにつれて、システムは巨大化し、機能は改善され、安価になり、あらゆるところに存在するようになる。しかし、自動車を運転するシステムは戦車も操縦できる。病気を診断するアプリケーションは、新たな病気を誕生させて兵器化できるかもしれない。世界の指導者たちはAIを規制する必要性を口にするが、依然として規制に向けた政治的意思が欠落しているようだ。AIを最大限に制約すれば、生活を変えるようなプラス面を見送ることを意味するが、AIを最大限に自由化すれば、破滅をもたらしかねないマイナス面のすべてを引き出す危険を伴う。これを回避するための、規制・統治レジームとは何か。

イノベーションと社会
―― 何が社会と技術の関係を規定するのか

2023年10月号

ダイアン・コイル ケンブリッジ大学教授(公共政策)

人が技術をどのように理解するか、つまり新しい発明の役割についてどのようなストーリーを描くかによって、その技術がどのような結果をもたらすかも左右される。新技術が人間の労働を補助するために使われるのか、それとも人間の労働に取って代わるのかによって、雇用や所得に与える影響は大きく違ってくる。おそらく現時点でもっとも重要なことは、技術の進歩によってもたらされる新たな経済的利益は、国や労働組合のような社会組織がハイテク企業の市場パワーへの対抗バランスを提供できる場合にのみ、広く共有されていくということだ。逆に言えば、人々が新しいテクノロジーの前で無力化するとすれば、そうなることを社会が認めた場合ということになる。

欧米はウクライナを見捨てるのか?
―― キーウは欧米の心変わりに備えよ

2023年10月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学部 教授

アメリカではウクライナ支援が政治論争の対象とされ、「外国のパートナーや同盟国への支援にどれだけ配慮し、そのためにどの程度支出すべきか」という歴史的論争の最新のテーマに据えられている。もちろん、トランプが大統領に再選されれば、ウクライナにとっては壊滅的な事態になるだろう。経済的圧力にさらされているヨーロッパでも、勝利への楽観論が揺らぎ始め、ウクライナで展開される大規模で全面的な戦争に対する不安が高まっている。だが、ロシアを封じ込め、ウクライナの主権を守ることは、欧米の第一の利益であること、そして、欧米の無関心と焦りが、この戦争におけるプーチンの最終兵器であることを忘れてはならない。

流動化したロシア政治
―― プーチン体制の衰退と新タカ派の台頭

2023年10月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター シニアフェロー

モスクワは疲弊し、プーチンは内部抗争に対処できずに孤立している。人々は反乱を前にしても無気力な対応を示す政府に困惑し、エリートたちは再び体制が脅かされれば逃げだそうと考えている。戦争はロシアを変化させた。プーチン体制、エリートのプーチンへの認識、この戦争への民衆の態度などに、大きな変化が生じている。もちろん、プーチン体制が否定され、現体制が崩壊するとは限らない。それでも、現在の流れは、ロシアをはるかにまとまりのない国、つまり、内部矛盾と紛争にあふれ、より不安定で先のみえない国に変化させている。プーチンが築き上げた国内秩序は一段と揺らぎ、世界はより危険で、予測不可能なロシアと対峙することになるだろう。

中国は停滞と混乱の時代へ
―― 社会不満と経済停滞が重なれば

2023年10月号

イアン・ジョンソン 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究担当)

生活レベルの改善に貢献している体制への反政府運動は力を持ち得ないが、経済衰退期には、多くの人が反体制派や批評家に現実の説明を依存するようになる。これまでも、エコノミストたちは、中国経済の成長は鈍化し、停滞期に入りつつあると主張し、その理由として、人口動態の変化、政府債務、生産性の低下、市場志向改革の欠落などを指摘してきた。いまや「ピーク・チャイナ」という言葉さえ使われている。長期停滞に入った中国でも、人々は、反体制派の主張に現実の説明を依存するようになるかもしれない。いまや、北京は体制の安定を追求するあまり、技術的な進歩や民衆の支持さえも犠牲にし始めている。

アフリカにおける反欧米感情の台頭
―― ニジェール・クーデターの意味合い

2023年10月号

エベネゼル・オバダレ 米外交問題評議会 シニアフェロー(アフリカ研究)

最近、クーデターが起きたニジェールに限らず、西アフリカの民衆の多くは、「フランスに従属的」と彼らがみなす文民政府に幻滅していたために、必要な是正措置として旧政権を倒した軍事政権を歓迎している。フランスと欧米に批判的である一方で、「欧米に敵対し、かつて植民地とされてきたアフリカ諸国の同盟国を自認するロシア」を歓迎するという見方もセットにされている。そうした反発や敵意は奥深いように思えるが、実際にはそうではない。政治的・経済的停滞に対する怒りのはけ口として、ある程度の反欧米・親ロシア感情は今後も続くだろうが、こうした感情のもっとも強力な部分はいずれ消え去ることになるだろう。

北朝鮮とロシア
―― 変化した関係の本質

2023年10月号

スコット・A・スナイダー 米外交問題評議会 シニアフェロー(朝鮮半島担当)

ごく最近まで、北朝鮮とロシアの関係は必ずしもスムーズではなく、双方は共有する利益を特定できない状況にあった。だが、ロシアによる2022年のウクライナ侵攻が、両国間の政治的ニーズと物質的利益の共有基盤を提供した。とはいえ、北朝鮮がロシアに提供できるのは、旧式の大砲やロケットシステムで、殺傷力はあるが、近代的な誘導システムを備えていない。一方で、北朝鮮がロシアに求める支援には、ミサイルや人工衛星の先端技術や食糧支援などが含まれる。中国・北朝鮮・ロシアの国家連合は、日米韓の協調関係に比べれば、依然としてまとまりがないが、北東アジアにおける対立する連合の出現は、今のところ、ブロックとは呼べないとしても、朝鮮半島における南北間および北東アジアにおける地域間の緊張を高めることになるだろう。・・・

トランプ2・0の時代
―― 同盟国に恐怖を、ライバルに希望を

2023年10月号

ダニエル・W・ドレズナー タフツ大学 フレッチャー法律外交大学院教授(国際政治学)

アメリカの同盟諸国は、ドナルド・トランプが2020年後半のレームダック状況のなかで、世界から米軍を撤退させることを計画していたことを忘れてはならない。彼が敗北することが明らかにならない限り、そして実際にそうなるまでは、トランプがもたらす脅威を軽くみるのは間違っている。ロシアや中国の政府高官は、トランプの再選を望んでいる。ロシアにとっては、トランプの再登板は、ウクライナへの欧米の支援が低下することを意味し、中国にとっては、北京を懸念する日本や韓国といった国々とアメリカの同盟関係に綻びが生じることを意味するからだ。・・・

気候変動型災害に備えるには
―― 緩和と適応を連動させよ

2023年10月号

アリス・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境問題担当)

2023年に発生した気候災害の規模は、政府や政策立案者がもはや温暖化の緩和策、つまり、二酸化炭素やメタンなど大気中に排出される有害な汚染物質を削減する戦略に焦点を当てるだけでは不十分であることを、われわれに再確認させた。世界各国は、異常気象に耐えられるように、インフラや政策を見直して「適応」にもっと注意を払う必要がある。十分な対応を怠れば、気候変動が引き起こす過酷な衝撃が、広く世界において人々の生命、生活、コミュニティを押し潰すことになるだろう。温暖化対策に「適応」を含めて、対策の幅を広げ、緩和と適応の2つのアプローチを連動させる必要がある。

中東の外交戦略と中国
―― 中東諸国の真意は何か

2023年9月号

ジェニファー・カヴァナ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(アメリカ外交)
フレデリック・ウェフリー カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(中東)

アラブ諸国が北京を受け入れたのは、アメリカの軍事プレゼンスが低下したからではない。むしろ、インフラや技術など、ワシントンが支援する能力や意欲が低いと思われる分野で中国を取り込みたいと考えたからだ。当然、ワシントンは中国の影響力拡大に対抗する親米ブロックの形成を中東で目指すべきではない。むしろ、人的資本の向上、教育、グリーン・テクノロジー、デジタル・プラットフォームなど、比較優位をもつ分野への政策ツールと投資をワシントンは拡大していくべきだ。傍流に追いやられないようにするには、アメリカは大国(中国)の介入ではなく、現地の社会経済問題と統治問題が、今後10年間における最大の脅威となる危険が高いことを認識しなければならない。

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