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論文データベース(最新論文順)

グローバルな水資源危機の本質
―― 何が対策を阻んでいるのか

2018年5月号

スコット・ムーア ペンシルベニア大学エネルギー政策センター シニアフェロー

世界は水資源危機に直面しているが、それは多くの人が考えるようなものではない。たしかに、都市の水資源需要を満たしつつ、穀物を育てるための十分な水を確保するのは難しくなり、降水量の規模と降雨シーズンを変化させている気候変動が干ばつと水害の問題をさらに深刻にしている。汚染も広がりをみせている。とはいえ、多くの地域が真の水資源危機を回避できるように助ける技術的解決策は存在する。問題はそれに非常に大きなコストがかかることだ。現実には、人間の行動面での変化が求められており、そのインセンティブを高めるには水道料金を引き上げるのがもっとも効果的だ。しかし、水資源の価格を世界的に引き上げる経済的な根拠はあるが、そうすることを阻む政治的・道徳的な問題が存在する。・・・

北朝鮮に対する包括的強制策を
―― 外交で脅威を粉砕するには

2018年5月号

ビクター・チャ 元米国家安全保障会議アジア部長
カトリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議 ディレクター(日韓担当)

米朝サミットへの流れは劇的だが、結局は長期的なゲームへと姿を変えるだけかもしれない。平壌がオファーしている核・ミサイル実験の凍結は、(アメリカを)交渉に応じさせるための誘因に過ぎない。交渉が終わった翌日から実験を再開できるし、核プログラムを水面下で進めることもできる。しかも、核保有国としての認知を取り付け、韓国から米軍を締め出し、韓国へのアメリカの軍事コミットメントを形骸化させるという長期的な目的を平壌が見直したと信じる理由もない。ワシントンは今後も平壌に最大限の圧力をかけ、北朝鮮との交渉をより広範な地域戦略に紐付けなければならない。軍事オプションを回避しつつ、むしろ、日韓という同盟諸国との緊密な協調を通じて、地域的抑止体制と拡散防止策のための新たな試みを開始すべきだ。

トランプの台湾カードと台北
―― 急旋回する米中台関係

2018年5月号

ダニエル・リンチ 香港城市大学教授(アジア・国際研究)

中台関係と米中関係の緊張が同時に高まっている。中国は台湾海峡に空母を、この島の上空近くに頻繁に戦闘機を送り込んでいるだけでなく、中国の外交官は「米海軍の艦船が高雄港に寄港すれば、中国軍は直ちに台湾を武力統合する」とさえ警告している。一方ワシントンでは、台湾カードを切ることを求めるジョン・ボルトンが大統領補佐官に就任した。いずれトランプ政権が、中国との軍事衝突を引き起こしかねないやり方で台湾カードを切る可能性は現に存在する。トランプがアメリカと台湾の関係を大幅に格上げすれば、この動きは台湾では大いに歓迎されるだろう。しかし、蔡英文はそのような変化を受け入れる誘惑に耐えた方がよい。誘惑に負ければ、台湾は「ワシントンの中国対抗策における人質」にされてしまう。

グローバル「#MeToo」ムーブメント
――女性の権利確立を促すグローバルな好循環

2018年5月号

ルディス・マーダビ デンバー大学 国際関係大学院 上席副学部長

「#MeToo」はアメリカで起きている出来事と結びつけられたグローバルなムーブメントだ。ソーシャルメディアで流された#ミィトゥーというハッシュタグがもつ意味合いを世界は直ちに受け入れ、アラビア語、ペルシア語、ヒンディー語、スペイン語を含む複数の言語で、同じムーブメントが展開されている。現在、85か国の女性たちがこのハッシュタグを使って、変革を求めている。メッセージの拡散を刺激しているのは、ソーシャルメディアだけではない。過去に築かれてきた各国の女性運動の基盤が今回のグローバルムーブメントを支えている。女性たちが団結して声を上げるなか、あまりに長い間抑え込まれてきた彼女たちの痛ましいストーリーが、変革を促す一貫した、断固たる流れを作り出しつつある。

シリア内戦と外部パワー
―― アフリンの攻防と勝者なき紛争の行方

2018年4月号

アーロン・ステイン  アトランティックカウンシル レジデント・シニアフェロー

ロシア、イラン、トルコ、アメリカというシリア内戦に介入している外部パワーは、アサド政権同様に、紛争終結を望みつつも、譲歩を拒んでいる。シリアの反政府勢力への影響力をもつトルコは反クルドの立場からアフリンに介入し、クルド人を紛争期のパートナーとしてきたアメリカは軍事的成功を政治目標に結びつけようと、米軍をシリア北東部に当面駐留させるつもりだ。ロシアは内戦を終結へ向かわせるという大きな目的から、紛争終結のカギを握る(反政府勢力への影響力をもつ)トルコの協力を失うような危険は犯したくないと考えている。一方、アサド政権とイランは、トルコの介入は反政府勢力を勢いづけると反発している。この流れを変えない限り、シリア内戦は今後も続き、さらに多くの人の命が奪われることになる。

イスラエルとヒズボラの次なる衝突
―― これまでの紛争と何が違うのか

2018年4月号

マーラ・カーリン ジョンズ・ホプキンス大学准教授

偶発的エスカレーションリスクや双方の長期的な戦略目標を考えると、イスラエルとヒズボラ間でいずれ戦争が起きるのは避けられないだろう。いまや問われているのは紛争が差し迫っているかどうかではなく、いつどのようにしてそれが起き、どこで紛争が戦われるかだ。現実に紛争になれば、忌まわしい戦闘が展開され、好むと好まざるとにかかわらず、外部アクターを巻き込んでいくことになる。しかも、これまでとは違って、戦域はレバノン南部だけでなく、ベイルートとシリアへ拡大していくだろう。レバントの安全保障はさらに揺るがされ、レバノンとシリアは今以上に、外国のアジェンダが入り乱れる場所と化し、民衆たちはより多くを失うことになるだろう。

イランを内包する新中東秩序の構築を
―― 中東の安定を取り戻すには

2018年4月号

バリ・ナスル  ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院院長

中東を規定してきたこれまでのアラブ秩序は、この7年間の社会的混乱と内戦によってすでに引き裂かれている。ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているが、これは間違っている。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならない。イランの対外行動が、イスラム革命の輸出ではなく、国益についての冷徹な計算によって導かれていることも理解すべきだ。現在の中東政策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけだ。紛争に終止符を打ち、平和と安定の枠組みを作るための地域合意を仲介するための国際外交に向けたリーダーシップを発揮しなければならない。この任務をロシアに任せるべきではない。

何が内戦を長期化させているのか
―― テロと外部パワーの介入で変化した内戦の本質

2018年4月号

リセ・M・ハワード ジョージタウン大学准教授
アレクサンドラ・スターク ジョージタウン大学博士候補生

冷戦終結から9・11までは、大半の内戦が交渉によって終結したが、その後、再び国際環境が変化し、内戦の規範も変化した。テロリストとの交渉は選択肢とされず、テロ組織の粉砕が目標とされ、欧米諸国も民主化よりも安定を重視するようになった。紛争当事国政府は、全面的勝利を目指す戦略を正当化し、外部パワーからの支援を確保するために、反政府勢力にテロリストの烙印を押し、しかも外部パワーがそれぞれ対立する勢力を支援するようになった。これが、内戦が長期化している大きな要因だ。現在の内戦は、外部パワーが「こう終わるべきだ」と考える形で終結する。シリア紛争は「内戦がこれまでよりも長期化し、交渉による解決よりも(特定の紛争勢力の)一方的な勝利で終わる可能性が高い」という現在の内戦トレンドを示す具体例に他ならない。

同盟関係と国際機関の価値に目を向けよ
―― 大国間競争で勝利を収めるには

2018年4月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

冷戦初期同様に現在のアメリカは大国間競争の時代に足を踏み入れている。しかし、アメリカファーストを掲げるトランプ政権は、冷戦における勝利を西側にもたらした同盟関係や国際機関を基盤とする秩序に背を向けてしまっている。戦後戦略の中枢は「ヨーロッパとアジアで、権威主義の誘惑と脅威に対抗する力をもつ強固な民主的な同盟関係を築くことだった」。当時のアメリカは、そうすることで、軍事力に過度に依存せずに、自国の経済・安全保障利益を守れるようになると考えた。トランプ政権が大国間競争の時代の幕開けを宣言したタイミングで、アメリカが冷戦という大国間競争に勝利を収めるのを助けたツールを大統領が放棄し、その価値を否定しようとしているのは大きな皮肉としか言いようがない。

何が米戦略の立案を阻んでいるのか
―― ホワイトハウスとペンタゴンの対立

2018年4月号

ジュリアン・スミス 前米副大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)
ローレン・デヨング・シュルマン 前米国家安全保障会議ディレクター (国防政策担当)

北朝鮮軍事戦略の策定を阻んでいるのはホワイトハウスや米国家安全保障会議(NSC)とペンタゴンの確執なのか。おそらくそうではない。ホワイトハウスが戦略をもっていないこと、数日毎に新たな戦略の条件を示し続けていることが問題だ。さらに、機能する省庁間調整プロセス、政府の方針を維持する閣僚、高官ポストが空席でない国務省、駐韓アメリカ大使、さらにはアメリカの政策や大統領のツイートを解読するのに次第に苛立ちを感じているかにみえる同盟諸国との開放的なコミュニケーションチャンネルも必要とされている。国務省、ソウル、あるいは平壌、どこにいようと、ホワイトハウスが本当に望んでいるものが何なのかを理解できない状態にある。

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