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論文データベース(最新論文順)

ウクライナと欧州、ロシアの未来
―― 対ロ封じ込めの時代へ

2023年11月号

マイケル・キマージュ 米カトリック大学 歴史学教授

ウクライナ戦争に、国家としてのウクライナの完成を見いだすこともできる。ウクライナは欧米と調和した国家アイデンティティを築きつつある。一方、プーチンそしていかなるロシアの指導者にとっても、欧米の安全保障構造の一翼を担う、パワフルなウクライナを受け入れることはあり得ず、こうして、欧米に対する不満と恨みに駆り立てられるロシアが誕生するだろう。この場合、アメリカと同盟国は、冷戦期のようなロシア封じ込め策をとることを余儀なくされるかもしれない。ヨーロッパの影響が冷戦後のウクライナを変貌させたように、今後は、ウクライナがヨーロッパ統合に影響を与えることになるだろう。それは、超国家の流れを強化するのか、それとも国家意識を強化するのか。

中露に挟まれたモンゴルの選択
―― アメリカは何をオファーできるか

2023年11月号

トゥブシンザヤ・ガンチュルガ 元モンゴル大統領補佐官(外交政策担当)
セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学 特別教授

中国とロシアにほぼ全面的に経済を依存する内陸国のモンゴルは、それでも、二つの隣国の違いを利用し、あるいは欧米との関係を強化することで、中露から距離を置こうと試みてきた。だが、いまや中露はますます接近し、モンゴルが両国の立場の違いを利用する余地は小さくなっている。アメリカは、モンゴルとの貿易・投資関係を促進し、教育・訓練プログラムを通じてモンゴルへの長期的なコミットメントを示すべきだし、モンゴル側は、外国人投資家を安心させ、透明で予測可能な経済環境を整備する試みを強化する必要がある。必要とされているのは、ロシアの高圧路線や中国の執拗な覇権主義に直面しているモンゴルへの手堅い経済関与だろう。

大いなる誤算
―― ガザ侵攻というイスラエルの間違い(10/14)

2023年11月号

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)

ガザ侵攻は、人道的、道徳的、戦略的な大惨事を引き起こすことになるだろう。イスラエルの長期的な安全保障を損ない、パレスチナ人に計り知れない人的ダメージを強いるだけでなく、中国との競争におけるアメリカの核心的利益さえも脅かす。作戦を先に進めるイスラエルの動きは、国際社会の激しい批判にさらされる。しかも、この紛争は、新たなパレスチナ人の強制移住の引き金となる恐れがあるし、ガザ侵攻はヒズボラを行動に駆り立てるレッドラインになるかもしれない。イランについては、これまでのところ、アメリカもイスラエルも自制的な立場をとっているが、長期化する戦争のダイナミクスが何を引き起こすは分からない。戦争が長引けば、世界はイスラエル人とパレスチナ人の犠牲者の映像を目の当たりにし、さらに予期せぬ混乱の事態に直面することになるかもしれない。

機能不全のアメリカ
―― 中露を抑止できるのか

2023年11月号

ロバート・M・ゲーツ 元米国防長官

アメリカは、ひどく危険な状況にある。攻撃的な敵対国に直面しつつも、相手を思いとどまらせるのに必要な団結と強さを結集できずにいる。米市民は内向きになり、議会は言い争い、大統領もアメリカの役割について十分な説明をしていない。習近平やプーチンのような指導者をうまく抑止するには、確固としたコミットメントと一貫した対応を示さなければならない。だが現実には、機能不全がアメリカのパワーを不安定で信頼できないものにしている。リスクを冒しやすい独裁者を、潜在的に壊滅的な事態をもたらす、危険な賭けに向かわせようとしている。・・・

追い込まれたエルドアン
―― トルコへの毅然たる新アプローチを

2023年11月号

ヘンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

「強い反応を示せば彼の挑発に乗ることにならないか」。ワシントンはこれまでエルドアンの挑発にどう対応するかに苦慮してきた。だが、ますます支離滅裂な即興路線をとり、トルコ経済の運営を見誤ったことで、ついに彼も追い詰められている。ほぼ間違いなく、トルコ経済は、国際通貨基金(IMF)の支援を求めざるを得なくなるし、大惨事を回避するには、アメリカから援助を求めざるを得なくなる。一貫して毅然と行動することで、アメリカはトルコとの新たな関係を築くことができる。イタリアやポルトガルとの関係に近い、正常な関係をトルコとの間で構築しなければならない。そのチャンスをつかむ必要がある。

イスラエルがガザに侵攻すれば
―― ヒズボラ、西岸、イラン(10/9)

2023年11月号

ブルース・ホフマン 米外交問題評議会シニアフェロー(テロ、テロ対策担当)

ヒズボラとハマスとの長年のつながり、そしてヒズボラとハマスをともに支えるイランがこれらのテロ集団を存続させることに大きな関心をもっていることを考えると、イスラエルがガザへの地上戦を開始した場合、ヒズボラは基本的に自らの意思だとしても、完全にイランの意向に同調して、イスラエルとの戦争に参戦する可能性が高い。この場合、その帰結は非常に大きなものになる。さらに、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ武装勢力はいつ行動を起こしてもおかしくなく、イスラエルが大規模な地上攻撃を試み、ガザを再占領すれば、そのリスクは一気に高まるだろう。この場合、別の疑問が生じる。三正面戦争に直面した場合、イスラエルは、テヘランがその手下に攻撃を控えるように求めることを期待して、イランをターゲットにして圧力を高める行動をとるだろうか。

ハマスのイスラエル攻撃
―― イランの関与レベルは(10/8)

2023年11月号

レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー

サウジ・イスラエルの関係正常化が実現すれば、湾岸地域が対イランでまとまる危険があり、テヘランはそのような合意を阻止しようと躍起になっていた。イスラエルとイランの水面下での戦争はしばらく前から展開されてきた。革命防衛隊コッズ部隊のトップ、エスマイル・カアニ将軍が、ハマスの代表を含む過激派と会合を開き、イスラエルへの攻撃を調整するように促したとも報じられている。イスラエルも、イランの高官や科学者、シリアで活動するイラン系民兵組織を攻撃のターゲットにしてきた。一方で、(イランが支援する)ヒズボラの活動、レバノンに紛争が飛び火するかが、ワイルドカードとみなされている。・・・

台湾海峡で中国を抑止するには
―― アメリカの能力と決意を示せ

2023年11月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会フェロー
イヴァン・カナパシー 元国家安全保障会議 ディレクター

いまや、外交は綻びをみせ、抑止力は形骸化している。しかも、中国のリスク許容レベルは高まり、台湾海峡における不安定化要因は増える一方だ。ワシントンは、対中抑止力が低下していることを認識した上で、武力行使が破滅的な結果を招くことを習近平に理解させるために、さらなる措置を講じなければならない。そのためには、北京との摩擦が大きくなることを受け入れ、台湾の戦闘能力を高め、台湾軍の訓練や米軍アドバイザーの派遣を含めて、台湾のために軍事介入するアメリカの能力と決意を示さなければならない。アメリカとパートナーは、武力行使が解決策にはならないことを中国に認識させる必要がある。

台湾がとるべき道
―― 対話による戦争回避を

2023年11月号

侯友宜 台湾国民党 総統候補

国民党の北京へのアプローチは、中国による武力行使への反対に留まるものではない。非対称戦争能力を慎重に強化し、完成させる一方で、中国との誤解をなくして、いかなる危機も両岸の対話を通じて解決していくことにある。平和には対話も必要であり、私は中華民国の憲法と法律に則したやり方で、北京との建設的な交流を試みるつもりだ。台湾海峡とインド太平洋地域の安定を維持するために、抑止(Deterrence)、対話(Dialogue)、ディエスカレーション(De-escalation)という「三つのD」戦略を私は提案する。

BBCとイギリスのソフトパワー
―― 政府と国際放送の関係を考える

2023年10月号

サイモン・J・ポッター ブリストル大学教授(現代史)

1927年に開始されたBBC(英国放送協会)ワールド・サービス(国際放送)は、現在も、短波ラジオをデジタルメディアやソーシャルメディア・チャンネルと組み合わせて提供している。だが、BBCが国内で政治的に敵視されているために、イギリスのソフトパワーを長く形作ってきたワールド・サービスは財政危機に直面し、すでに、アジアの言語やアラビア語での放送を打ち切っている。解決策は、ワールド・サービスを国家が直接出資する別組織としてBBCから切り離すことかもしれないが、国営の国際放送など、世界のリスナーにとって魅力的なはずはない。BBCを敵視する国内保守派は、イギリスの重要なソフトパワーツールを危険にさらしていることになる。

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