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論文データベース(最新論文順)

ビジネスエリートの地政学
―― 企業と外交政策

2024年4月号

ジャミ・ミシック 元キッシンジャー・アソシエイツ会長
ピーター・オルサグ ラザード 最高経営責任者
セオドア・バンゼル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター

政府が地政学的目的を達成するために輸出規制や産業政策へ傾斜していくにつれて、企業は外交政策の目的であると同時にそのための手段とされつつある。だが、企業の利益が、米政府が考える利益と常に同期するわけではなく、しかも、企業が政府以上に多くの情報をもっていることも多い。アメリカの国益を調整し、保護するというワシントンの最終的役割を考えれば、政策決定者は(企業の協力を必要とする)この新しいパラダイムに適応していく必要がある。民間企業との協議を制度化し、産業界の専門知識に資金を提供し、経済情報を充実させることは、よいスタートになる。政策立案者は民間セクターについて、これまでとは根本的に異なる捉え方をする必要がある。

プーチンとロシアの未来
―― 浪費される資源と帝国の野望

2024年4月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー・ロシア・ユーラシア・センター シニアフェロー

プーチンは「特別軍事作戦」を開始するにあたって、ポスト・ソビエトの民主的遺産も否定した。民主的制度の確立に始まり、検閲の廃止、ロシア文化とヨーロッパ文化の再統合にいたるまで、プーチンは、1985年以降にロシアが成し遂げた成果のすべてを、一気にテーブルから振り落とした。その後、短期間で、残された民主的制度を粉砕し、ソビエト期に匹敵する抑圧・監視体制を再確立した。それは1945年以降に出現し、1989年以降に支配的となった世界秩序との決別を意味した。ここからロシアはどこへ向かうのか。侵略というウクライナでの彼の高価なプロジェクトは、実際には、ロシアの経済的、人口的未来に地雷をしかけたようなものだ。

経済安全保障とラテンアメリカ
―― 中国に代わるサプライチェーンの確立を

2024年4月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 副会長(研究担当)

アメリカは重要鉱物の80%を外国から調達しており、ニッケル、マンガン、グラファイトといったバッテリー製造に使われる鉱物はとくに中国に大きく依存している。マイクロチップの60%、そして最先端の半導体チップの90%は、中国の脅威にさらされている台湾で製造されている。こうした現状には大きなリスクがある。しかし、われわれはラテンアメリカに目を向けることができる。南部国境以南の国々について、「良いフェンスが良い隣人をつくる」と考えている米指導者もいるかもしれないが、それは、大きな間違いだ。ラテンアメリカをサプライチェーンに深く統合せずに、経済的な同盟国をアジアやヨーロッパという遠くに求め続ければ、ワシントンは、さらに大きな中国の影響力が裏庭におよぶことを後押しすることになる。

ドイツ経済の試練
―― 改革を阻む構造的要因

2024年4月号

スダ・デービッド=ウィルプ 米ジャーマン・マーシャル・ファンド ドイツ地域ディレクター兼シニアフェロー
ヤコブ・キルケガード ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

ドイツ経済の強さの歴史的源泉が、エネルギー集約的で化石燃料を使用する産業にあることを考えれば、経済構造の移行には官民双方での大規模な投資も、すぐれた労働力も必要になる。だが、現状では、投資を阻む「債務ブレーキ」の制約が行く手を阻み、移民を嫌う右派ポピュリズムが台頭している。経済が停滞しているにも関わらず、厳しい財政ルールと連立政権内の分裂が、ドイツが必要とする規模の改革を阻んでいる。それでも、軍需産業を強化するだけでなく、脱炭素化を加速するグリーン産業、世界経済の未来を形作る新技術に国の資源を投入しなければならない。そして、経済成長を支える移民政策を守る政治的意志を結集する必要がある。・・・

習近平思想と中国社会
―― マルクス主義と儒教の出会い

2024年4月号

ラナ・ミッター ハーバード大学 ケネディスクール教授

過去1世紀における中国の政治思想家たちは、未来の繁栄のためには、過去と完全に決別する必要があると考えがちだった。初期におけるマルクス主義の思想家たちは、「序列や儀礼、理想化された過去への回帰を重視する儒教思想」を激しく批判した。だが、中国の思想家や市民は、中国の伝統に即したやり方で政治環境の変化に対応することが重要だと、一貫して考えてきたようだ。実際、習近平思想のカギは、マルクス主義と儒教を結びつけていることだ。現代中国はマルクス主義を「魂」とし、素晴らしい中国の伝統文化を「ルーツ」と考えるべきだと習は語っている。中国社会が経済的停滞と没価値状況に苦しんでいるだけに、この、イデオロギーと国家アイデンティティーの再定義は、大きな意味合いをもつことになるかもしれない。

文化と民主主義の未来
―― 何が人々の世界観を左右するのか

2024年4月号

スザンヌ・ノッセル PENアメリカン・センター 会長

戦争、経済競争、政治対立に引き裂かれた世界では、文化の役割などサイドショーにすぎないと思えるかもしれない。だが、民主国家と独裁国家の戦いの結末は文化に大きく左右される。人々が世界をどうとらえるかは、どのような音楽を聴き、いかなる本を読むか、鑑賞する映画、テレビ、美術品、訪問する美術館、学習する教科書によって形作られるからだ。独裁国家は、自分たちの立場を外国に拡散するために、まず、国の物語やイデオロギーを自国の民衆に押しつけるために、テクノロジーを駆使したトップダウン型の努力を続けている。こうした独裁国家の試みにもっとも効果的に対抗できるのは、欧米政府の文化担当官ではない。むしろ、リスクのある環境で日々仕事をしている作家、芸術家、キュレーターたちだ。・・・

イスラエルはどこに向かうのか
―― ネタニヤフとの決別を

2024年4月号

エフード・バラク イスラエル元首相

ガザの戦後をめぐって、ネタニヤフがワシントンの計画を受け入れれば、極右の連立パートナーの支持を失い、政権は崩壊するだろう。一方、バイデンの計画を拒否し続ければ、ガザの泥沼に深く引きずり込まれる。この場合、西岸で第3次インティファーダが誘発され、イランが支援するレバノンのヒズボラと再び戦争に突入するだろう。しかも、アメリカとの関係が大きく損なわれる危険がある「アブラハム合意」も不安定化し、サウジアラビアがこの合意に参加することへの期待も遠のく。ネタニヤフがイスラエルを長い地域戦争へ導き、おそらく米政権とイスラエル市民を欺くのを防ぐには、総選挙を実施するしかない。われわれはどこに向かっているのか、誰がわれわれをそこに導くのかを市民が決められるようにする必要がある。・・・

ロシア・北朝鮮同盟と中国の立場
―― 不安定な権威主義連合の行方

2024年4月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学 国際問題研究所 センターフェロー

ロシアは平壌が長年望んできた高度な軍事技術を北朝鮮に売り渡すことを選んだ。中国がオファーしない利益をロシアが進んで提供してくれるために、平壌はモスクワに近づき、いまや北京は北朝鮮に対する手だての多くを失っている。一方、ロシアが北朝鮮に軍事支援を求めたという事実は、モスクワが北京から受けている物的援助がいかに少ないかを示している。実際、北朝鮮やロシアと連帯しているとみなされることのリスクを認識している北京は、むしろ、公の場では、この2カ国から距離を置こうとしている。中露・北朝鮮関係の歴史から現状を分析すれば、何がみえてくるか。

ネタニヤフが示した司法改革法案によって、ガザ戦争前の段階で、イスラエル国家は分裂しかねない状況に追い込まれていた。戦争が終われば、この国内状況が再び出現するだろう。パレスチナをめぐっては、ネタニヤフのように「パレスチナを永遠に占領できる」と考えるのか、それとも「共存が必要」とみなすかが、今後問われることになる。「紛争管理」と「草刈り」が今後もパレスチナ問題に対処する政策であるなら、占領、入植政策、強制退去がさらに続く。しかし、このやり方は、さらなる大惨事を招き入れるだけだ。安心して生活し、尊重し合える共存を望むのなら、イスラエルはパレスチナ人に手を差し伸べ、ともに協力していかなければならない。

アメリカの新貿易コンセンサス
―― ロバート・ライトハイザーの世界

2024年3月号

ゴードン・H・ハンソン ハーバード大学ケネディスクール 教授(都市政策)

前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。トランプの「アメリカ第1主義」の威勢のよさを思わせる彼の立場は右派にアピールし、バイデンの産業政策と環境保護路線を受け入れることで左派への訴求力ももっている。だが、ライトハイザーの処方箋が貿易政策の標準とされても、国内の工場を復活させることはできない。むしろ、その過程で国際関係に大きなダメージを与えてしまう。彼にとっては受け入れがたいとしても、アメリカの繁栄の未来は溶鉱炉や組立ラインではなく、サービス業にある。

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