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論文データベース(最新論文順)

欧州連合の未来
―― ヨーロッパの理念に何が起きたのか

2020年2月号

アンドリュー・モラフチーク プリンストン大学教授(政治学・公共問題)

欧州連合に対する批判は「ブリュッセルはもっと活動を縮小しろ、いや、もっと拡大しろ」という二つの批判に大別できる。ともに、EUは国民国家に取って代わろうとしているとみなし、前者はそれに反対し、後者はそれに賛成している。反対派には、イギリスのEU離脱(ブレグジット)派や右派ポピュリストを支える欧州懐疑派、そしてフランス、ハンガリー、イタリア、ポーランドのナショナリスト同盟などが含まれる。これら統合反対派は、われわれは「国民国家を守る」と主張する。「もっと拡大しろ」と考える左派は、右派ほど注目されていないが、ヨーロッパ全体、特にブリュッセルでは右派よりも多数派だ。問題は左派の立場があまりに理念的、夢想的でリアリズムに欠けることだ。・・・

さらなる中東紛争を回避するには
―― 安定化には何が必要か

2020年2月号

ケリー・マグサメン アメリカ進歩センター 副会長(国家安全保障、国際政策担当)

「不必要な戦争」にこだわると大統領としての歴史的評価にどのような影響がでるか、トランプはジョージ・W・ブッシュに話を聞くべきだろうし、泥沼からいかに足を抜くかについては、オバマに電話をすべきだろう。イランにさらにペナルティを課すことを求める有志連合は存在せず、最大限の圧力も望ましい結果につながっていない。しかも、(思うままに行動してきた)トランプは国際コミュニティの潤沢な善意をうまく利用できるような立場にはない。多くの諸国は、トランプ政権のイラン政策を、イラン核合意からの離脱以降の一連のプロセスに派生する「身からでたさび」とみなしている。

ネオリベラリズムの崩壊と新社会契約
―― 社会民主主義では十分ではない

2020年2月号

ミアタ・ファーンブレー ニューエコノミクス財団 チーフエグゼクティブ

格差はつねに資本主義社会の特徴の一つだったが、人々は自分たちの生活の質が改善し、機会が拡大していると感じ、子供たちは自分たちよりも良い生活を送れると期待できる限り、そうした格差に目くじらを立てることはなかった。だが、この数十年でそうした機会が消失し始めると、システムそのものが不公正で、多くの人にとって利益にならないのではないかという見方が勢いを持ち始めた。新しい経済モデルを導入して人々をエンパワーし、公共財やインフラの所有を広げることで経済における市民の発言権を高めるべきだ。コミュニティレベルに権限を委譲し、生活を改善するための人々の集団行動を受け入れる、アクティブで分権化された国家が必要になる。

CFR Updates
オーストラリアの森林火災
―― 次なる猛威に政府はどう備えるか

2020年2月号

アリス・C・ヒル 米外交問題評議会シニアフェロー(気候変動問題担当)

2019年9月以降続いているオーストラリアの山火事は、依然として、収束する気配がない。すでに1000万ヘクタール以上が消失し、20人以上が犠牲になり、死亡した野生動物は10億匹に達すると言われる。オーストラリアはこれまでも森林火災に悩まされてきた。だが、多くの人が火災の余波を受けやすい地域で生活するようになったことが、そのダメージを大きくしている。気候変動も衝撃を大きくしている。気温が上昇しているだけでなく、オーストラリアはこの3年にわたって干ばつに見舞われている。この環境のなかで、火事が急速な広がりをみせ、極端に高温の森林火災と化し、特有の気象状況を作り出し、さらなる森林火災を引き起こす稲妻を誘発している。・・・

「新社会主義運動」の幻想と脅威
―― 富は問題ではない

2020年2月号

ジェリー・Z・ミュラー 米カトリック大学歴史学教授

資本主義には強さと弱さがある。実際、自由市場を基盤とする資本主義が18世紀に定着して以降、このシステムは長く批判にさらされてきた。一連の改革運動が刺激され、これが19世紀型のレッセフェール(夜警)国家を今日の先進民主国家が導入する混合経済・福祉国家(mixed welfare States)へ変貌させた。かつて「社会民主主義」と呼ばれたシステムを現状で模索する左派勢力も、おおむね似たものを追いかけている。だが、「新社会主義運動」はこれらとは違う。そのルーツは社会民主主義ではない。資本主義を改革するのではなく、むしろそれを終わらせようとする民主社会主義にある。彼らは、金の卵を産むガチョウの健康など気にかけていない。これを当然視した上で、不公正な状況を超富裕層の資産の突出を削り取るという簡単かつ直接的な方法でなくそうとしている。

気候変動対策か石油資源開発か
―― なぜ新資源の開発が停滞しているか

2020年2月号

エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ 米外交問題評議会シニアフェロー (エネルギー、環境問題担当)

多くの国がついに化石燃料への依存を減らそうと試み始めたタイミングで、石油や天然ガス資源の発見が相次いでいる。だが、途上国における化石燃料資源の発見が、これまでのように打ち出の小槌になることはもうないのかもしれない。うまくいっても、これが最後のチャンスかもしれない。闇雲に開発に向かうのではなく、「気候変動対策と途上国の経済開発のバランスをどうとるか」という側面に配慮しなければならないからだ。実際、気候変動重視派は、例えば、古くからの豊かな産油国であるノルウェーに対して、石油資源をもつ貧困国に市場を譲るために、国内の石油産業を閉鎖することを求めている。資源国にとって、石油と天然ガス輸出からの歳入に国家予算の多くを依存することのリスクと意味合いは大きく変化している。

鎖につながれたグローバル化
―― サプライチェーン、ネットワークと経済制裁

2020年2月号

ヘンリー・ファレル  ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学) アブラハム・L・ニューマン  ジョージタウン大学 教授(政治学)

デジタルネットワーク、金融フロー、サプライチェーンが世界中に拡大し、アメリカを中心とする各国は、これを、他国を捕獲する蜘蛛の巣とみなすようになった。米国家安全保障局はあらゆる種類のコミュニケーションを傍受し、米財務省は国際金融ネットワークを利用して、無法な国家と金融機関に制裁を課している。一方、ファーウェイが5Gをグローバルレベルで支配すれば、北京もファーウェイをゲートウェイにして世界の通信に侵入し、これまでアメリカが中国に対して試みてきたことを、アメリカに対して実施できるようになる。日本も重要な産業用化学製品の流通を制限することで、韓国のエレクトロニクス産業を狙い撃ちにした。鎖につながれたグローバル化の現実を受け入れ、理解することが、これらのリスクを抑えるために必要不可欠な最初のステップになる。

資本主義を救う改革を
―― 株主資本主義からステイクホールダー資本主義へ

2020年2月号

クラウス・シュワブ  世界経済フォーラム  設立者兼会長

1980年代以降の40年で、あらゆるタイプの経済格差が拡大した。社会システムにも亀裂が生じ、社会を包み込むような経済成長を実現できなくなった。一方で、市場主義は深刻な環境問題も作り出した。利益の最大化を至上命題とする株主資本主義によって問題の多くが引き起こされている。幸い、若者世代は、企業が環境や社会的満足を犠牲にして利益を模索することをもはや認めていない。この意味でも現状の資本主義はすでに限界に達している。内側からシステムを改革しない限り、存続はあり得ない。企業は「ステイクホールダー(公益)資本主義」を受け入れ、社会・環境上の目的を実現するための措置を積極的に果たしていく必要がある。われわれは非常に大きな選択に直面している。

大国間競争の時代へ
―― アジアとヨーロッパにおける連合の形成を

2020年2月号

エルブリッジ・A・コルビー 前米国防次官補代理 (ヨーロッパおよびユーラシア担当) A・ウェス・ミッチェル 前米国務次官補 (ヨーロッパおよびユーラシア担当)

未来の歴史家は、21世紀初めにワシントンが超大国間の競争に焦点を合わせるようになったことを、もっとも重要な帰結を伴ったストーリーとして解釈することになるはずだ。大国間競争のロジック、それに応じた軍事、経済、外交行動の再編は大きな流れを作り出しており、このトレンドが、今後のアメリカの外交政策を形作っていくことになる。ライバルは台頭する中国そして復讐心に燃えるロシアだ。かつて同様に、アメリカが安全保障を確保し、自由社会としての繁栄を実現していくには、アジアとヨーロッパというもっとも重要な地域で好ましいパワーバランスを確保し、アメリカの社会と経済そして同盟国を、パワフルなライバルとの長期的競争に備えさせる必要がある。

ヒズボラが対米報復策を主導する?
―― ソレイマニ殺害とレバノン

2020年2月号 

ブライアン・カッツ 戦略国際問題研究所  フェロー(国際安全保障プログラム)

イラクの米軍基地に対するミサイル攻撃は、ソレイマニ殺害に対してテヘランが最初に示したシンボリックかつ公然たる報復攻撃だったが、今後、数カ月、数年にわたって報復は続くだろうし、そこで大きな役割を果たすのはレバノンのヒズボラになるはずだ。アメリカとの直接対決を回避しつつ、コッズ部隊とそのパートナーであるヒズボラは、中東における、あるいは中東を越えた地域での米軍を対象とする非対称攻撃の連携を試みるかもしれない。その目的は、「アメリカが中東でプレゼンスをもつことのコストは恩恵を上回る」と感じるほどに、その活動を混乱させ、脅かし、制限することに据えられるはずだ。

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