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論文データベース(最新論文順)

新エリート階級と中国の格差
―― オリガークか独裁か

2021年3月号

ブランコ・ミラノビッチ  ニューヨーク市立大学大学院センター 社会経済格差研究センター  シニアスカラー

民間経済部門が力強く成長すれば、新しい社会経済階級が誕生する。この集団を取り込もうと、北京は共産党メンバーになるように彼らに働きかけて、取り込みを図るが、結局、彼らは社会の他の部分からも共産党メンバーの大半からも浮いた政治・経済的な上流階級となる。このようなエリートの力をどのように管理できるだろうか。一見すると、中国の不平等は、急速な成長と都市化から予測できた副産物のようにも思える。しかし、格差に対処するには、この新エリート層の高まるパワーを抑制するかどうか、そうするとしてどのように抑えるかという難しい選択に直面する。下手をすると、中国に残される選択肢はオリガーキーか独裁ということになる。

北京の反独占禁止策?
―― 中国のビッグテックと産業政策

2021年3月号

ジョシュ・フリードマン  ハーバード大学博士候補生(政治学)

専門家の多くは、アリババやテンセントなど、中国のビッグテックによる市場独占を阻もうとする北京の熱意を、フェイスブックやアップルを何とか抑え込もうとする欧米の試みと重ね合わせて捉えている。だがそれは、間違いだ。北京が警戒しているのは市場独占による圧倒的なパワーそのものではない。北京は、イノベーションの方向性への統制を強化し、民間大企業のパワーを共産党の産業政策の目的実現へと向かわせたいと考えている。北京が望んでいるのは党が望むイノベーションの方向に民間企業を従わせ、巨大企業が収益拡大のために党の方向から外れないようにすることにある。

カルト集団とポスト真実の政治
―― アメリカの政治的衰退

2021年3月号

フランシス・フクヤマ  スタンフォード大学 「民主主義・開発・法の支配」センター所長

ソーシャルメディアは民主的議論の前提となる共通の事実認識さえ消滅させてしまった。実際、共和党員の77%が2020年の米大統領選挙で大きな不正があったと考え、4分の1近くが、Qアノンが主張する異様な陰謀論を信じている。しかも、民主党、共和党の政策の違いをめぐる対立が、文化的アイデンティティをめぐる分断線として硬直化している。そして、共和党はもはやアイデアや政策に基づく政党ではなく、カルト集団のような存在と化してしまった。大きな不確実性は、今後、共和党内で何が起きるかにある。共和党の主流派が権限を再確立するのか、それともトランプが基盤を維持するのか。

CFR in Brief
民主主義とポピュリズム
―― トランプ後のアメリカ

2021年2月号

ヤシャ・モンク  ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究大学院 准教授

トランプが(選挙は盗まれたという)大統領選挙に関する自分の嘘を多くのアメリカ人に真実だと思い込ませ、対立候補の当選が認定されることに抗議して何万人もの支持者を動員できたという事実は、かなり多くの人がこの種のポピュリズムのアピールを受け入れていることを意味する。「大統領か憲法か」の選択に直面して、彼らはトランプを選んだ。しかし、米議会を襲撃した暴徒をアメリカの真の姿とみなしてはならない。バイデンは、トランプの反民主的な過激主義を非難する上で明確かつ率直でなければならない。しかし一方で、トランプに投票した人々のことを、救いようのない嘆かわしい人々と描写することなく、危険なデマゴーグへの忠誠を放棄するようにアプローチし、「すべてのアメリカ人の大統領になれること」を立証しなければならない。

CFR in Brief
ブレグジットと英・EU貿易協力協定

2021年2月号

マティアス・マティス  ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院 准教授(国際政治経済)

EUは、イギリスが北アイルランドとアイルランドとの境界問題を実質的に回避することを受け入れ、北アイルランドには商品、サービス、資本、ヒトの自由な移動という単一市場の重要な「四つの自由」を維持することが認められた。イギリスもEUとの製品貿易について「ゼロ関税、ゼロクォータ」の条件を勝ち取った。そして、ブリュッセルの立場からすれば、今回の交渉をつうじて「EUからの離脱は容易ではない」という重要なメッセージを示すことができた。このプロセスは、離脱によって主権を取り戻せる一方で、単一市場のメンバーであり続ければ確保できたはずの経済的恩恵を失うというトレードオフを明確に示した。一方、イギリスは、困った状況をEUのせいにして非難することはできなくなった。それだけではない。アメリカとの貿易合意がスムーズに進むとは考えにくいし、しかも、イギリスは潜在的な国家分裂リスクも抱え込んだことになる。・・・

CFR Blog ブックレビュー
北京の影響下で
―― 東南アジアにとっての中国という課題

2021年2月号

ハンター・マーストン  オーストラリア国立大学博士候補生(国際政治)

東南アジア諸国の対中認識は二つの考えの間で揺れ動いている。経済成長を中国の台頭に依存しているために、中国との貿易を続けたいと考える一方で、中国の強大化する経済力、外交力、軍事力を警戒している。南シナ海を含む東南アジア地域で北京が強硬外交をとり、武力行使も辞さない路線をとっていることに神経を尖らせている。実際には、中国と東南アジアの親密な関係を示唆する神話の多くは虚構のようだ。「ミャンマーが中国の衛星国のような存在になった」とみなすのは安易すぎるし、カンボジア人の多くも、中国の影響力拡大を警戒している。むしろ、東南アジアに共通しているのは、中国に傾斜することに対するリスクヘッジ戦略をとっていることかもしれない。・・・

「自由世界」の連帯と組織化を
―― 権威主義の脅威に対処するには

2021年2月号

アレクサンダー・ビンドマン  前国家安全保障会議 ディレクター(欧州担当)

長く、民主主義(と民主国家)のことを、自国を脅かす実存的脅威とみなしてきた中国、ロシアなどの権威主義国家がいまや攻勢に出ている。国際ルールや欧米のリベラルな価値を形骸化させ、民主主義を追い込むことで、権威主義的体制の台頭を可能にし、思うままに権力を行使できる国際環境を形作ることを彼らは望んでいる。国内の傷を癒やし、民主主義が世界で直面する脅威を緩和するには、ワシントンは民主的政府を特徴付ける強さを動員し、組織化しなければならない。米新政権は権威主義に対抗するために、民主国家による民主主義のための協調を組織すべきだろう。

次のパンデミックに備えよ
―― グローバルな対応をいかに整備するか

2021年2月号

ジェニファー・ナッゾ  ジョンズ・ホプキンス大学  ヘルスセキュリティセンターシニアスカラー

パンデミックの経済的、社会的余波は、今後数十年は続き、おそらく、今回の危機が21世紀最後のパンデミックになるわけでもないだろう。現在の公衆衛生構造は「感染症の(局地的な)アウトブレイク」を前提としている。だが「世界のほぼすべての国が同じようにリスクにさらされるパンデミック」には別のアプローチが必要になる。事実、パンデミックを前に、限られたリソースしかもっていない世界保健機関(WHO)、世界銀行などの国際機関が大きな圧力にさらされた結果、各国は独力で感染症対策を実施せざるを得ない状況に追い込まれた。パンデミックに対する真のグローバルな対応を実現するには、各国はデータ共有を含めて、共同の試みをすることに合意しなければならない。そうしない限り、次の危機でも、対応が小さすぎて、遅すぎることが立証されることになる。

なぜリベラルな国際主義は破綻したか
―― ウィルソン主義の終わり

2021年2月号

ウォルター・ラッセル・ミード  バード大学教授(外交・人文学)

現代の世界政治でもっとも重要な事実とは、ウィルソン主義の崇高な試みが失敗に終わったことだろう。法に基づく普遍的な秩序が国家間の平和と国内における民主主義を保証するという夢はもはや重視されなくなり、今後、現実味を失っていくだろう。もっとも、ウィルソン主義とはヨーロッパ特有の問題に対するヨーロッパ特有の解決策だったわけで、それがグローバルな規範だったわけではない。いずれにせよ、米大統領が自由主義的な国際主義の理念に基づいて外交政策を策定できる時代が近い将来に再現されることはおそらくないだろう。

インドネシア政府は民衆の対中不信に配慮しつつも、中国からの投資を求める路線をとってきた。だが、北京は他の東南アジア諸国同様、インドネシアに対しても高圧的な嫌がらせを続けており、周辺海域における安全保障環境が変化するにつれて、ジャカルタの曖昧な対中路線は持続不可能になりつつある。オーストラリア、インド、日本などの他の地域大国はすでに北京への対抗バランスの形成を模索し、アメリカとの協力を、日米豪印戦略対話(クワッド)の枠組みを通じて強化している。自国の領海及び排他的経済水域に対する中国の主権侵犯に対抗していくには、ジャカルタはクワッドメンバーとより緊密に協力し、東南アジアが中国の勢力圏に取り返しのつかない形で組み込まれていくのを阻止するための同盟強化を模索していくべきだろう。

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