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論文データベース(最新論文順)

中国の台湾侵攻は近い
―― 現実味を帯びてきた武力行使リスク

2021年7月号

オリアナ・スカイラー・マストロ   スタンフォード大学国際関係研究所 センターフェロー

この数カ月、北京が平和的な台湾アプローチを見直し、武力による統一を考えていることを示唆する不穏な動きがある。「アメリカが台湾有事に介入してきても、状況を制することができる」と考えられている。かつては台湾への軍事作戦など現実的オプションではないと考えていた中国政府も、いまや、それを現実の可能性として捉えている。習近平は台湾問題を解決するという野心を明らかにし、武力統一というオプションへの中国市民と軍指導層の支持も強化されている。この30年で初めて、ほぼ1世紀にわたる内戦を決着させるために中国が軍事力を行使する可能性を真剣に憂慮すべき環境にある。

新型コロナの不都合な真実
―― 永続化するウイルスとの闘い

2021年7月号

ラリー・ブリリアント パンディフェンス・アドバイザリーCEO
リサ・ダンジグ  パンディフェンス・アドバイザリーのアドバイザー
カレン・オッペンハイマー  グローバルヘルス戦略&オペレーションアドバイザー
アガストヤ・モンダル  カリフォルニア大学バークレー校博士課程(伝染病学、計算生物学)
リック・ブライト  前米連邦厚生省副次官補(準備・対応担当)
W・イアン・リプキン コロンビア大学教授(感染症学)で同大学付属感染症・免疫センターのディレクター。

すでに10数種の動物種に感染を広げている以上、新型コロナウイルスは根絶できない。世界規模の集団免疫も期待できない。十分なワクチンを生産・供給するには長い時間がかかるし、反ワクチンムーブメントの存在も集団免疫を達成させる見込みを遠ざけている。一方では、新種の変異株が次々と登場している。より高度な耐性をもつか、より感染力の強い新型の変異株については、追加のブースターショット、あるいは全く新しいワクチンが必要になるかもしれず、この場合、ほぼ200カ国の数十億人にワクチンを接種するというロジスティック上の大きな課題に世界は直面する。現在の検査キットをすり抜ける変異株が出てくる恐れもある。要するに、パンデミックが最終局面にあるわけではない。多くの人が短期間で終わることを願った危機は終わらず、現実には、驚くほどレジリアントなウイルスに対する長くゆっくりとした闘いが続く。

チベットという名の監獄
―― 第2の新疆ウイグルか

2021年6月号

ハワード・W・フレンチ  コロンビア大学 ジャーナリズム大学院教授

2008年、ダライ・ラマの亡命50年の節目を前に、一連の大規模な抗議デモが起きた。このデモの背景には、北京がチベット文化を弱め、チベット仏教の力を弱めようとすることに対する怒りだけでなく、尊敬されているダライ・ラマが亡命先で死去して、北京がその後継者を指名してチベット仏教を乗っ取るのではないかという不安があった。チベットの緊張が近く再び山場を迎える恐れがある。85歳のダライ・ラマが命の終わりに近づいているかもしれないからだ。すでに北京は、中国共産党が次のダライ・ラマ指名プロセスを管理すると発表している。このような異例の措置をとれば、新たなチベット騒乱をもたらす導火線に間違いなく火をつけることになる。

中ロ離間戦略を
―― 対ロエンゲージメントのポテンシャル

2021年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター 大西洋横断安全保障プログラム ディレクター デヴィッド・シュルマン 共和党国際研究所 シニアアドバイザー

中国とロシアの利益の重なり合い、軍事力その他の分野での相互補完性は、アメリカのパワーに対する両国の脅威をたんなる足し算以上に大きくしている。中国は、ロシアとの関係を利用して軍事力のギャップを埋め、技術革新を加速し、アメリカのグローバルリーダーシップを切り崩そうとしている。一方、国際社会で周辺化されていくことを警戒するモスクワは、アメリカがロシアと交渉せざるを得ないと考える環境を作り出そうと考え、北京との関係をそれを強化するための手段とみているようだ。例えば、中国に洗練された兵器を販売することで、モスクワはそうした関係の構築を模索してきた。ワシントンは関係の強化へと両国を向かわせるような行動を避けつつ、中ロの接近と協調をいかに制約するかをクリエーティブに考える必要がある。

データ量が経済とイノベーションを左右する
―― データアクセスとプライバシーの間

2021年6月号

マシュー・スローター  ダートマス・カレッジ ビジネススクール 教授(国際ビジネス) デビッド・マコーミック   ブリッジウォーター・アソシエーツ 最高経営責任者

持続的な生産性の優位は国がアクセスできるデータの量に左右され始めている。自律走行車であれ、人工知能であれ、膨大な量のデータがイノベーションを左右するからだ。専門家が言うように「大量のデータにアクセスできる優秀な科学者は、一定量のデータにしかアクセスできないスーパーサイエンティストに勝る」。一方、データを管理する国際的な枠組みがなければ、市民のプライバシーが脅かされる。データが国境を越えて移動することを認めるのなら、政府は、どうやって自国民のプライバシーを保護できるのか。データはイノベーションを推進し、経済パワーを生み出し、国家安全保障にも関わってくる。アメリカを含む民主諸国は、テクノ権威主義モデルに対抗するためにも、データの潜在能力を引き出せる新しい国際枠組みを構築する必要がある。

アンゲラ・メルケルとその時代
―― その功罪を検証する

2021年6月号

コンスタンツェ・シュテルツェンミュラー  ブルッキングス研究所 シニアフェロー

2005年以降、ドイツの首相を務め、2021年に政界からの引退を表明しているアンゲラ・メルケルは、いまもドイツでもっとも人気のある政治家だ。しかし、政府の新型コロナウイルス対策への世論の不満が高まるにつれて、政権の支持率は急落している。忍び寄るメルケル時代の終焉は、後継候補が気にするだけにとどまらない重要な問いを浮上させている。それにしても彼女は権力をどのように形作ったのか、それは再現できるのか。メルケルはドイツ、近隣諸国、同盟国の環境をよりよいものに進化させられただろうか。そして未来に向けてドイツを備えさせているだろうか。現実には、連邦議会選挙を数カ月後に控えた今なお、メルケルの後継候補が誰になるかはっきりしない。・・・

パンデミック後の世界経済
―― 新興国が経済成長を主導する

2021年6月号

ルチール・シャルマ チーフ・グローバル・ストラテジスト モルガンスタンレー投資マネジメント

新興国経済が今後の世界経済の成長を牽引すると考える理由は数多くある。先進国政府が、(パンデミックによる)経済の痛みを和らげようと、大規模な財政出動に資金を投入しつつも、その帰結を無視するか、説明をはぐらかしてきたのに対して、途上国は生産性向上に向けた改革を実施せざるを得ない状況に追い込まれた。経済成長をコモディティ輸出に依存している途上国にとっては、資源価格がすでに上昇に転じていることも良い知らせだろう。しかも、デジタル技術で構築されたインターネットビジネスは先進国よりも途上国でより急速な広がりをみせている。2020年末以降、世界の投資家はすでに新興市場に戻りつつある。今後10年間で新興国の平均成長率が1%でも上昇すれば、現在は1日2ドル未満の生活を余儀なくされている人々の2億人が貧困ライン以下の生活から脱出することになる。

「台湾と中国」というアメリカ問題
―― 台頭する新興国と衰退する超大国

2021年6月号

チャールズ・L・グレーザー  ジョージ・ワシントン大学エリオット・スクール 教授(政治学、国際関係論)

ワシントンは慎重なアジア政策をとっていると考えられているが、実際には、環境が変化していることを考慮せずに、既存のコミットメントを維持している。かつてのようなパワーをもっていない大国が、現状を無理に維持しようと試みれば、非常に危険な賭けに打って出る恐れがある。もちろん、東アジアの同盟関係へのコミットメントは維持すべきだが、台湾を含む南シナ海地域への関与路線は見直すべきだろう。アメリカのパワーが低下しているのなら、最善の選択肢はコミットメントを減らすことかもしれない。これは、南シナ海において中国がより多くの影響力をもつことを認め、台湾を手放し、もはや東アジア地域における支配的なパワーではないことをワシントンが受け入れることを意味する。・・・

中国の空虚な地政学戦略
―― 友人も影響力も得られない

2021年6月号

オードリー・ウォン  ハーバード大学ケネディスクール&MIT 安全保障プログラム  ポストドクトラルフェロー

貿易交流や一帯一路を通じた融資、ワクチンやマスクの供与など、中国は経済力をツールに地政学的影響力を高めているとみなされている。債務トラップ外交で相手国に過大な債務を負わせて自国の影響力を高め、言うことを聞かぬ相手は経済的強制策で締め上げる。多くの専門家がこの事態を懸念している。だが中国のパフォーマンスは、考えられているほど見事ではない。経済的影響力を用いた戦略的試みはしばしば抵抗に遭遇している。中国の融資や投資受け入れ国は中国企業の手抜き工事、見積もりに収まらぬコストの肥大化、環境の悪化に不満を募らせている。北京の高官たちは、融資によって経済開発が進めば、受け入れ国は中国に感謝し、好感情をもつようになると考えているかもしれない。しかし、この認識が間違っていると信じるべき理由がある。・・・

イスラエルとハマスそして自治政府
―― それぞれの政治、すれ違う思惑

2021年6月号

マーティン・インディク  米外交問題評議会 特別フェロー(中東問題担当)

ハマスはパレスチナ人社会での自分たちの地位をもっと引き上げたいと考え、イスラエルは、市民に対するハマスの攻撃に対する抑止力を再確立したいと望んでいる。だが双方とも、ワシントンが二国家解決を仲介することには関心がない。ハマスは「イスラエルのいない一国解決策」にこだわっている。ネタニヤフは「ガザをハマスが支配し、西岸をパレスチナ自治政府が統治する三国家解決策」にコミットしている。バイデン政権は・・・東エルサレムからのパレスチナ人の立ち退きや家屋解体をイスラエルに止めるように求め、アッバス自治政府議長に(無期限の延期としている)選挙の日程を定めるように求めるべきだろう。バイデン政権は、この危機から抜け出すためにも、二国家解決策への関係勢力の信頼と希望を再構築する必要がある。

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