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論文データベース(最新論文順)

中国のアフガニスタン・ジレンマ
―― 失われる安定と予測可能性

2021年11月号

セス・ジョーンズ  米戦略国際問題研究所(CSIS) シニアバイスプレジデント ジュード・ブランシェット  米戦略国際問題研究所(CSIS) 中国研究部長

「ポストアメリカの中央アジア」情勢は中国に恩恵よりもリスクをもたらすことになるだろう。国境の西側でアフガンという破綻国家に直面し、南西側ではインドとの緊張が高まっている。北東には北朝鮮という不安定で厄介なパートナーがいる。しかも、台湾海峡を含めて、アメリカとの競争はエスカレートしている。習近平は安定と予測可能性を模索しているが、アメリカのアフガン撤退後の地域情勢では、そのどちらも手に入れられなくなるだろう。実際、アメリカのアフガン撤退は、(台湾を含む)東部での競争のエスカレーションに集中すべきタイミングで、北京を身動きできなくする恐れがある。

アフリカ経済と化石燃料
―― 持続可能な開発と貧困撲滅の間

2021年10月号

イェミ・オシンバジョ ナイジェリア副大統領

欧米系の大企業がアジアやヨーロッパ市場への輸出用にアフリカで天然ガス開発を続けているにもかかわらず、欧米政府は、アフリカ諸国が国内で使用するためのガスプロジェクトへの資金供給をストップしようとしている。気候変動と闘うには、すべての国が役割を果たす必要があるが、化石燃料からの離脱のタイミングについては、各国の経済レベルの違いを考慮し、ゼロ・エミッションを達成する道が一つではないことを認めるべきだ。安価で安定的に確保できる化石燃料エネルギーを犠牲にして、再生可能エネルギーへの移行がアフリカの途上国に強要されることがあってはならない。天然ガス資源は、アフリカの多くの国では人々を貧困から脱却させるために重要な役割を果たせる。

環太平洋パートナーシップへの復帰を
―― CPTPPのアメリカにとっての価値

2021年10月号

ウェンディ・カトラー  元米通商代表部(USTR)次席代表代行

ワシントンでは「アメリカ抜きではTPPは静かに死を迎える」と考えられてきた。しかし、そうはならなかった。日本率いる残されたメンバーはCPTPPと名称を変更し、2018年に合意をまとめた。アメリカがCPTPPに参加すべき理由は数多くあるが、もっとも重要な要因はやはり中国だ。北京は(すでに正式加盟を申請し)CPTPPに参加する態勢を整えているかもしれない。中国がCPTPPのルールを守るのは難しいとしても、それで協定に参加できないということにはならない。市場が拡大することの魅力だけでなく、中国の参加を、重要な改革を先送りする機会とみなすメンバーも出てくるだろう。中国との競争を展開しているだけに、この協定はアメリカ経済にとってだけでなく、ワシントンの世界的影響力にとっても大きな価値をもつ。

アフガン難民はどこに行くのか?

2021年10月号

リンジー ・メイズランド  Writer@cfr.org

2021年8月、タリバンがカブールを含むアフガニスタンの多くの地域を掌握して以降、すでに数万人が国を後にしている。国連難民高等弁務官事務所によると、年末までに50万人が家を追われて難民化する恐れがある。その多くは、陸路で隣国のイランとパキスタンに向かっている。これまでのところイランとパキスタンは、これ以上の難民を受け入れることを嫌がり、国境線の一部を閉鎖し、文書をもたないアフガン難民は国外追放処分にすると表明している。今回の危機ですでにアフガンから国外へ逃れた8万人の一部はアフガン戦争中に米軍やその家族に協力した個人が利用できる特別移民ビザ(SIV)を保有するか、その対象とされる資格を満たしている。数千人のアフガン難民がアメリカへの入国を果たしたが、より多くのアフガン人が世界各地の米軍基地に一時的に収容されている状態にある。

トランスナショナルな脅威と 「人間の安全保障」
―― パンデミックで分断された世界

2021年10月号

ラジヴ・J・シャー  ロックフェラー財団会長

世界は「パンデミックに耐える能力をもつ先進国」と「脅威に翻弄される途上国」間の「大いなる分断」によって切り裂かれている。既存のグローバル開発モデルはもはや機能していない。パンデミックと気候変動の二重の脅威からすべての人を守るために「人間の安全保障」を強化するグローバルな憲章をまとめる必要に各国は迫られている。先進国と途上国の能力と資源のギャップを埋め、官民のパートナーシップをさらに強化しなければならない。途上国でパンデミックが収束し、変異株が出現しないようにならない限り、先進国の回復プロセスが不安定化するのは避けられない以上、途上国への開発援助を、先進国の市民や経済をパンデミックの再発から守るための投資と位置づけて促進しなければならない。

白人至上主義と欧米の極右テロ
―― 社会的レジリエンスの強化を

2021年10月号

シンシア・ミラー=イドリス アメリカン大学教授

9・11後の暴力的なジハード主義の台頭は、アメリカ政治を歪め、極右の過激主義思想の肥沃な温床を作り出した。アルカイダを含むイスラムテロ組織が、欧米における極右勢力の妄想を裏付ける存在だったからだ。こうして、米欧社会は極右勢力が何十年も煽ろうと試みてきた恐怖に取り憑かれた。2020年、米国内おけるテロの件数は1994年以降で最多となり、これらの事件の3分の2が白人至上主義者などの極右過激派によるものだ。依然としてイスラム主義テロが最大の脅威とされるヨーロッパでも極右の社会暴力が増えている。いたるところに巣くう過激主義と闘う最善の方法は、それを抑え込むだけでなく、社会のレジリエンスを高め、極右勢力のアピールに対する脆さを克服していくことだ。

今度こそアジアシフト戦略を
―― 経済・安全保障エンゲージメント

2021年10月号

ザック・クーパー アメリカンエンタープライズ研究所 リサーチフェロー アダム・P・リフ インディアナ大学 準教授(国際関係論)

バラク・オバマがアジアリバランシング戦略を表明して10年。そこにある現状は「野心的なレトリックと控えめな行動間のギャップが作り出した不安と懸念」でしかない。今後、三つのポイントが重要になる。アジアへの関与を中国への対応枠組みの一部としてではなく、前向きなアジェンダ、地域戦略ととらえること。アメリカが離脱した後に成立した、TPPをベースとする「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の参加に向けて交渉を再開すること。そして、中東での軍事プレゼンスを削減してアジアでの抑止力を強化することだ。特にアジアの同盟国やパートナーと協力して、力強い拒否的抑止戦略を考案し、武力行使ではアジアでの目標は達成できないと北京に納得させる必要がある。ワシントンがアジアリバランスといったレトリックを何回使ったかはほとんど意味がない。重要なのは、実際にそうするかどうかだ。

経済制裁依存症は何を物語る
―― アメリカの衰退、外交的影響力の低下

2021年10月号

ダニエル・W・ドレズナー  タフツ大学フレッチャースクール 教授(国際政治)

経済制裁によって相手国がワシントンの意に沿って行動するようになるのなら、経済制裁に依存するのも無理はない。だが、実際にはそうではない。制裁の効果をもっとも前向きに評価した分析でも、制裁が譲歩につながるのはせいぜい3分の1から2分の1程度だ。ワシントンが制裁に固執するのは、その効果とはほとんど関係なく、実際には、アメリカの衰退が最大の要因だ。もはや無敵の大国ではなく、広く世界に影響力を行使する力はない。アメリカの軍事力と外交的影響力は相対的に縮小している。制裁は、管理された環境で効果を発揮する特別な手段で、日常的に使用できる万能ツールではない。制裁は手術用のメスであり、スイス・アーミー・ナイフのように扱うべきではない。

異常気象への適応戦略を
―― もはや排出量削減だけでは対処できない

2021年10月号

アリス・ヒル 米外交問題評議会 シニアフェロー(エネルギー・環境問題担当)

ハリケーンから洪水、干ばつ、山火事、そして土砂崩れに至るまで、気候変動が誘発する異常気象が世界各地で大きな破壊を引き起こしている。温室効果ガスの排出を削減するだけでは、もはや気候変動の悪影響を食い止めることはできない。異常気象が引き起こす災害に備える適応戦略が必要だ。気候変動が人命、家、雇用を奪う段階にすでに入っているし、異常気象災害からの復旧が強いる財政負担の肥大化を抑えるためにも、気候変動適応戦略を策定する必要がある。ワシントンは気候変動に対する国の脆弱性や共有する優先課題を特定し、政府のあらゆるレベルでの意思決定に気候変動リスクを組み込む必要がある。

分裂した世界とグローバルな脅威
―― パンデミック・気候変動と大国間競争

2021年10月号

トーマス・ライト  ブルッキングス研究所米欧センター所長

この100年で最悪のパンデミックはいまも収束していない。気候変動危機も加速する一方だ。しかも、大国間競争という環境下で、ワシントンはこれらのトランスナショナルな脅威に対処していく戦略を考案していかなければならない。米中のライバル関係は熱い戦争は引き起こしていないが、冷たい戦争に火をつけかねない状況にある。だが、未来のパンデミックに備え、気候変動と闘うには、ライバル諸国、特に中国との協調を模索しなければならない。だが一方で、協調路線が破綻した場合に備える必要もある。同盟諸国とパートナー諸国が、グローバルな公共財のためにより大きな貢献をするバックアッププランも用意しておくべきだろう。2020年には存在しなかったそうした計画を、次の危機までに間違いなく準備しておかなければならない。

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