文明の衝突
――再現した「西欧」対「反西欧」の
対立構図
1993年8月号
ポスト冷戦時代の「X論文」とも評されるこの「文明の衝突」は、ハンチントンがそもそもハーバード大学のオケーショナル・ペーパーとして書き下ろしたものを、「フォーリン・アフェアーズ」に掲載するためにまとめ直し、その後の大反響を受けて『文明の衝突』という著作として加筆出版されたという経緯を持つ。発表と同時に世界各地でマスコミに取り上げられたこの壮大なスケールの論文は、政治家、歴史・政治学者にはじまり、人類学者、社会学者に至るまで広範な分野の専門家を巻き込んでの大論争となった。ハンチントンはポスト冷戦時代を、イデオロギー対決の時代から、宗教、歴史、民族、言語など文明対立が世界政治を規定する時代になると予測し、集団をとりまとめる求心力は文化や文明となり、紛争の火種もまた自らの文明に対する認識の高まりや文明の相違から生じるだろうという見解を示した。