まぼろしのアジア経済
1995年1月号
アジアの経済成長は奇跡ではない。持続的な経済成長には、「投入の増大」と「生産効率の改善」の双方が必要だが、アジア諸国の経済成長のほとんどは、労働力の拡大、教育レベルの改善、物的資本への投資など、持続的には行い得ない「投入」の増大によって説明できてしまうからである。実際、日本を例外とすれば、そこには生産効率の改善の形跡などほとんど見られない。いずれ陰りが見えてくるのがわかっている投入増大型の経済成長を、将来にそのまま当てはめ、世界経済の将来を論じても何の意味もない。われわれは、誤った前提を基にする過大な経済予測やそれに伴う思いこみに振り回されることなく、現実の数字、つまり「数字という暴君」を素直に受け入れるべきである。