漂流するヨーロッパ
1998年2月号
ヨーロッパは、冷戦構造に替わる新たな統合原理をいまだに見いだしていない。そのような原理は本来連邦主義だったはずだが、今日のヨーロッパは、各国がいがみ合い、経済的困難が増している状態にあり、「共同の政策決定が可能な政治的統一体」にはどうやらなりそうにもない、と著者は言う。だが、実際には中央集権的ヨーロッパが現実的な選択肢となったことは一度もなく、それが達成されなかったとしても失敗とみなすべきではない。それぞれ独立を維持することを堅く決意しつつも、政策面で協力せざるをえない独仏関係を中心とするヨーロッパ合衆国。これこそ、今後長期的にみたヨーロッパの現実の姿なのだ。経済通貨同盟への道が平坦でないのはたしかだが、ヨーロッパ諸国はこの実現に向けて誠実に努力し、EU拡大の道をいずれ見いだすだろう。