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論文データベース(最新論文順)

新シリア紛争の行方
―― 関係諸国はどう動く

2025年1月号

スティーブン・A・クック 米外交問題評議会 シニアフェロー(中東・アフリカ研究担当)

アサド政権に対抗する武装勢力が、イスラエルがヒズボラに大きなダメージを与えた現状を大きな機会とみなしているのは明らかだろう。いまやシリア政府を支援するイランやヒズボラそしてロシアの力は限られている。一方、トルコは「アサド後のシリア」への影響力を確保することを再び重視するかもしれない。イスラエルも、シリアにおける「アサド問題はイランの問題でもある」ために、状況を前向きにみているかもしれない。そして大統領就任後のトランプが、シリアに展開する米軍部隊の撤退を選ぶ可能性もある。

トランプはいかに世界を変化させるか
―― 高官人事と外交政策

2024年12月号

ピーター・D・フィーバー デューク大学 教授

トランプと側近チームは、高官任命では何よりも大統領への忠誠を重視することを明らかにしている。トランプへの忠誠を調べるもっとも簡単なテストは、「2020年大統領選の結果は盗まれたのか、あるいは、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件は反乱行為だったのか」を問うことかもしれない。次期副大統領となったJ・D・バンスが言うように、これらの問いに対してトランプが認める答えは一つしかない。このリトマス試験紙があれば、トランプは「チームの一員」だと考える人物だけを登用して、軍や情報機関の上層部を政治化できる。問題は、トランプのキャンペーンレトリックが、アメリカが直面する脅威を何ら理解していない、非現実的な大言壮語と薄っぺらな万能薬の類いで構成されていることだ。

全面戦争の時代へ
―― 包括的紛争時代の多様な抑止力

2024年12月号

マーラ・カーリン ジョンズ・ホプキンス大学教授

戦争は人間と知的マシンとが協力して、よりスピーディーに展開され、無人機(ドローン)などの自律型ツールに大きく依存するようになった。宇宙とサイバー空間がますます重要され、しかも、「紛争勢力が多様化」している。国、テロ組織、武装集団が入り乱れているだけでなく、ウクライナ国軍にはスペイン内戦以来と思われる規模の国際的義勇兵が参加している。世界が目撃しているのは、過去の理論家が「総力戦」と呼んだものに似ている。だが、新テクノロジーと経済のグローバル化ゆえに、現代の戦争はかつての総力戦の焼き直しではない。全面戦争の時代における抑止をより信頼できるものにするには、戦争の定義が変化し、さまざまな抑止が必要になっていることを理解しなければならない。

ウクライナ戦争の世界化
―― 「非ヨーロッパ化する戦争」の意味合い

2024年12月号

マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学部 教授
ハンナ・ノッテ 戦略国際問題研究所 シニアアソシエイト

ヨーロッパは、何世紀もの間、自国のパワーを対外的に誇示してきたが、いまや非ヨーロッパ諸国がパワーを誇示する舞台となりつつある。ブリュッセル、キーウ、ワシントンは、この新しい現実と折り合いをつけなければならないだろう。北朝鮮など、ロシアに兵士や軍需品を提供する国は、ウクライナを実験場として利用することで、将来自分たちが戦うかもしれない戦争に備えようとしている。戦争の流れを形作るか、戦争を終わらせる交渉に参加することで、ウクライナ戦争後のヨーロッパ形成のプレーヤーに自国を位置づけようとする非ヨーロッパ諸国もある。その多くは、ウクライナの復興にも関与してくると考えられる。

ウクライナ戦争を終わらせるには
―― 勝利の定義を見直せ

2024年12月号

リチャード・ハース 外交問題評議会 名誉会長

ワシントンは、実現不可能な勝利の定義に固執するのではなく、戦争の厳しい現実と向き合い、より妥当な結末を受け入れ、折り合いをつけるべきだ。キーウが主権と独立を維持し、希望する同盟や連合に自由に参加できることを勝利とみなし、ウクライナ全土を解放する必要があるという考えは放棄すべきだろう。アメリカとその同盟国は、ウクライナに武器支援を提供する一方で、キーウにモスクワと交渉するように求め、その方法を具体的に示すという不快な対策をとらざるを得ない。外交を模索する一方で、ウクライナを支援し続けることが、紛争を終結させるためには必要であることをトランプが最終的に理解することを期待したい。

台湾を守る曖昧戦略
―― いかに壊滅的事態を防ぐか

2024年12月号

ジェームズ・B・スタインバーグ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 学院長

中台の衝突は不可避ではないが、あり得ないとも言い切れない。それを回避できるかは、米中台、三つの政府の慎重な政策の選択にかかっている。アメリカの台湾政策を批判する専門家が指摘するように、数十年にわたる「戦略的曖昧さ」路線が、米中台のいずれも完全に満足できる状況を生み出していないのは事実だろう。しかし、特定の当事者を完全に満足させる結果は、別の当事者には受け入れられないものだ。つまり、ワシントンが目指すべきは、すべての当事者が受け入れられる(複雑な)現状を特定することだ。高度なバランスを要するが、外交とはそういうものだ。

ドナルド・トランプとアメリカの未来
―― スティーブン・コトキンとの対話

2024年12月号

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 フェロー

「トランプは別の惑星から降り立ったエイリアンではない。アメリカ文化に深く根差す、不変の何かを反映する人物として、米市民が投票した人物だ。プロレス、リアリティ番組、カジノやギャンブル、セレブ文化、ソーシャルメディア。これらのすべてはアメリカのシンボルだし、詐欺や大嘘も同様だ。だが、同盟諸国を含む、多くの外国人は(国内の一部の人々同様に)、トランプを、自分たちが知り、再び見たいと願っているアメリカではないとみている」。・・・外交領域では、トランプも、オバマやバイデンと同じジレンマに直面する。それは、アメリカの対外コミットメントと能力のギャップいかに埋めていくかに他ならない。

(インタビューは、11月6日にドナルド・トランプが米大統領選で決定的な勝利を収めたタイミングで実施された。聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌エグゼクティブ・エディター、ジャスティン・ヴォクト。邦訳分は、英文からの抜粋・要約。)

中国を枢軸から切り離すには
―― 食い違う、中国と他の枢軸メンバーの利益

2024年12月号

スティーブン・ハドリー 元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

中国と他の枢軸メンバーの利益は必ずしも一致していない。ワシントンは、それぞれの地域でロシア、イラン、北朝鮮に効果的に対抗することで、「敗者の枢軸」に中国を縛り付けることが、世界的影響力を得るための道ではないことを北京に示す必要がある。ロシアに兵器を提供すれば、中国に制裁が広く適用され、かなりの経済的コストに直面する。イランとその代理人たちの活動は、重要な石油資源を含む中国と中東の貿易を混乱させる。枢軸パートナーの冒険主義を厳格に抑え込めば、ワシントンは習近平に軌道修正を促せるし、そうすることは彼の利益にもなる。

トランプの政策ビジョンを考える
―― 衝動性と現実主義の間

2024年12月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 外交・国防政策研究ディレクター

「予測不能で衝動的」と言われるトランプの政策ビジョンは、実際には、はっきりとしている。経済グローバル化と移民を否定的に捉えている。高関税を盛り込んだ二国間協定を結び、アメリカ市場へのアクセスを制限し、貿易収支のバランスをとることを重視している。アメリカにつけ込んでいると彼がみなす同盟国への要求を高め、要求を満たすことが、同盟支援の条件とされる。だが、現実を前に考えを見直す可能性もある。反欧米勢力の一体化に立ち向かうには、健全な同盟関係が必要であることを理解するかもしれない。さらに、ロシアが取引に応じなければ、「ウクライナがこれまで手にした以上の支援を与える」可能性もある。トランプ2期目に危険はあるが、抑止力強化と国防予算の増大という側面では、米安全保障基盤を強化するチャンスでもある。

高齢化と人口減少の時代
―― 人口減少と人類社会

2024年12月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 ヘンリー・ウェント政治経済チェア

「人々が何を好ましいと考えるかが、ほぼすべての大陸で急速に一体化しつつある」。迫り来る人口減少時代への流れを作り出している大きなトレンドは、世界的に子どもをもつことを望む欲求が低下していることによって作り出されている。出生率が急激に低下し、ますます多くの社会が、いつまで続くかわからない、広範な人口減少の時代へ向かっている。結婚を奨励し、子育てを祝福する宗教的信仰も、出生率の低下が進む多くの地域で衰退しつつある。その先にあるのは、高齢化し、より小さくなった社会で構成される世界になるだろう。人口減少は、おそらく、社会がまだ考えもせず、いまは理解できないような多くの方法で、人類を大きく変貌させていくだろう。

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