オランダの麻薬対策の挫折
1999年10月号
麻薬問題は多くの国にとって悩みの種だが、麻薬を合法化しているオランダの現実も理想からはほど遠く、到底成功とは見なし得ない。オランダ議会は二十三年前、マリフアナやハシシュなどの「ソフト」ドラッグの「コーヒーショップ」での販売をあえて許可した。これによって社会の表舞台へと「ソフト」ドラッグを引きずりだし、ヘロイン、コカインなどの「ハード」ドラッグの利用へと中毒者がエスカレートしないようにと試みたのだ。これがオランダの「麻薬による害を減らす」アプローチである。だが、「ソフト」ドラッグが実質的に「ハード」ドラッグ化しているし、「ソフト」ドラッグの合法化が「ハード」ドラッグ使用の抑制に効果をあげたわけでもない。しかも、いまやオランダは海外において「西ヨーロッパの麻薬の中心地」、ドラッグディーラーの巣窟というありがたくない評判を得ている。オランダの政府高官自身、自国の麻薬政策が意図した効果を発揮していないことを認めているが、有効な対策を見いだしていないという点ではアメリカやイギリスも同じである。われわれは、オランダの経験からどのような教訓を引き出すべきなのだろうか。