第三の道は権威主義への道
1999年10月号
グローバル経済、トランスナショナルな政治、情報化時代という環境下での福祉国家体制の破綻、思想パラダイムの混乱というヨーロッパの現実を前に、イギリスのトニー・ブレア首相は右派・左派を超えた「第三の道」を標榜している。ブレア首相によれば、第三の道とは「国がすべてを管理する社会主義でも、全てを放任する自由主義でもなく、現代的社会民主主義である」。このブレアの「第三の道」はドイツのゲハルト・シュレーダー首相の新路線とも共通基盤を見いだしつつあり、この六月には連名で、社会保障負担が経済競争力を妨げてはならないという趣旨の声明文書も発表された。「リスクと社会保障の間の新たなバランス」の形成を模索する第三の道はヨーロッパの政治理念と制度を変える起爆剤になるのだろうか。著者のダーレンドルフ卿は、第三の道が内包する権威主義的要素が伴う危険を排除するためにも、冷戦を経て世界が勝ち取った「自由」の概念を中核に据えた政治プログラムを開始すべきだと提案する。