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論文データベース(最新論文順)

遺伝子組み換え作物で途上諸国を救うには

2000年6月号

ロバート・パールバーグ
ウェルズリー大学政治学部教授

遺伝子組み換え食糧をめぐる地球規模の闘いの主要な対立構図は「アメリカ企業」対「ヨーロッパの消費者と環境保護団体」で、この技術から最も恩恵を引きだせる貧しい諸国の農民や消費者の利害が考慮されていない。遺伝子組み換え作物に大規模な投資をすることで、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの何億という人々を貧困と栄養失調から救う新しい道を開拓できるのに、それを実現させるための行動はまだほとんどとられていない。世界銀行の調査団は、遺伝子組み換えテクノロジーを利用すれば今後一〇年以内にアジアにおける米の生産が一〇~二五%増加する、と予測している。

外交問題評議会ラウンドテーブル・リポート
米日中とアジア安全保障の将来 (前半)

2000年6月号

ニール・E・シルバー
前外交問題評議会客員研究員

現役の米国務省高官ニール・シルバーが、客員研究員としてニューヨークの外交問題評議会に滞在した(1998年-1999年)に書き下ろした東アジア安全保障の将来への提言。冷戦の終結、中国の台頭、日本経済の凋落という昨今のトレンドが、日米中安全保障にどのような影響を与えるかについて、シルバーは戦略的観点からだけでなく、世論、相互イメージ、非政府組織の活動など多角的な要素を織り込みつつ論じている。九八年から九九年に実施された評議会のラウンドテーブル・ミーティングでの議論を踏まえた、東アジア安全保障の包括的な検証。(後編はフォーリン・アフェアーズ日本語版7月号に掲載)

分散化するロシアとどう向き合うか

2000年5月号

サム・ナン 前米上院軍事委員会委員長 アダム・N・スタルバーグ ジョージア工科大学助教授

国の利益と地方の利益のバランスを図り、対外コミットメントを果たすロシアの能力は、その土台からしだいに崩れつつある。ロシアにおける政治的・経済的不安定によって生じた真空状態を地方の指導者が埋めていくにつれて、彼らはロシアの外交・安全保障政策面で大きな影響力を行使するようになるだろう。モスクワの権威を温存しつつ、中央、地方、民間組織と実業界を長期的に結びつけるようなアプローチをわれわれがとることができれば、ロシアとの協調的安全保障は確実なものとなる。

グローバリズムと多国間開発政策の新枠組み

2000年5月号

ローレンス・H・サマーズ 米財務長官

貧困の削減を考えるうえで経済成長を重視しないのは、それこそ主人公のいない劇のようなものだ。援助がうまく使われると確信できる国に融資を提供し、誤用される危険、とくに汚職がらみで悪用される国への融資は行わない、という方針を強めていく必要がある。下へ下へと向かう競争に世界がのみ込まれていくのを回避するために、底辺にいる人々が立ち上がれるように本腰で取り組む必要がある。

チェチェン紛争が問いかけるもの

2000年5月号

ラジャン・メノ リーハイ大学国際関係学部教授
グラハム・E・フラー 前国家情報評議会副議長

モスクワは、チェチェンの混迷は急進派イスラムと外国の教条主義者などの忌まわしい外部勢力の仕業だと主張するばかりで、ロシアが「反目しあうナショナリズム」という根深い問題を抱えていることに目を向けようとしない。優れた統治が行われ、魅力的な国家プロジェクトが示されない限り、ロシア連邦内の民族集団が分離独立という選択肢を考え直すとは思えない。イスラムのイデオロギーが、カフカスにおける非イスラム系集団の支配体制に対抗する重要なアイデンティティーとされ、抵抗運動をまとめる統合原理となりつつある。

覇権か孤立主義か 強すぎる米国の行方

2000年5月号

サミュエル・R・バーガー アメリカ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

孤立主義的と覇権主義、アメリカのリーダーシップが今までになく必要とされるなかで、アメリカはどこに身を置くべきなのか。アメリカは「すべてに対応することも、世界中で行動を起こすこともできないが、なにもしないでよいことは断じてありえない」。穏やかな関与(エンゲージメント)政策こそ、政治的、経済的にアメリカにとって、そして世界にとっての利益なのだ。

なぜサウジは石油の高価格政策をとったか

2000年5月号

F・グレゴリー・ゴーズ/バーモント大学政治学準教授

サウジが石油の高価格政策へと転じたのは、短期的かつ切実に資金を必要としていたからである。巨大な財政赤字ゆえに、七〇年代に築きあげた寛大な福祉国家をまかなっていけなくなる一方で、福祉政策の打ち切りは、王族にとって政治的死を意味する。しかも、石油価格が再び低下していくのは目に見えている。世界最大の産油国であるサウジアラビアによる石油の供給と、この中東の同盟諸国の安定を保つには、国内の民営化や経済改革がなんとしても必要なことをサウジ政府に納得させなればならない。サウジの不安定化が、世界経済、中東秩序にどのような衝撃を与えるかを考えれば、この点でサウジを説得することの大切さは自明であろう。

お門違いのクリントン外交批判 

2000年4月号

スティーブン・M・ウォルト  ハーバード大学教授

今そこにある危険(現存する明白な危険)がない状態では、外交政策にも国内の党派政治が大きな影響を持つようになる。共和党は繰り返し大統領の対中政策を非難しているが、現実にはジョージ・W・ブッシュが唱えている対中認識はクリントンの政策と非常によく似ている。現存する国際機関を自分の都合のよい手段として用いるような態度は、将来アメリカを困らせることになるかもしれない。

日本は恐慌型経済から逃れられるか

2000年4月号

ポール・クルーグマン MIT経済学教授

「世界は、いまなお恐慌型の経済問題を抱えている」。とりわけ、「流動性の罠」に陥り、かつ構造的な経済の非効率に苦しむ日本は、世界不況の不吉な前兆であるかのようだ、とポール・クルーグマン教授は指摘する。アジアの経済危機を予測し、日本の経済政策にも多大な影響力を持つクルーグマン教授が、米国、アジア、ヨーロッパ、南米そして日本の経済政策の問題を解き明かし、世界経済へ向けた警告を発する。本稿は、一九九九年五月一八日開催の米外交問題評議会の討論会「恐慌型経済への回帰」の議事録からの要約・抜粋である。共同主催は、同評議会の Corporate and National Programs と Pacific Council on International Policy である。

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