1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

フランスの反米・反グローバル化路線の行方

2000年9月号

ソフィー・ミュニエ  プリンストン大学講師

フランスの知識人や利益団体、それに主流派の政治家までが、富裕国と最貧国の不平等の拡大はグローバリゼーションの結果であるとあげつらい、「恵まれない世界の国々の代弁者としてこのトレンドに立ち向かうことがフランスの神聖な義務だ」と口々に繰り返している。今や貿易問題は「自由貿易」対「保護主義」という図式ではなく、「アングロサクソンのグローバリゼーション」対「フランスの国家的・文化的価値」という構図でとらえられている。

ヨーロッパの独自防衛は実現するか

2000年9月号

フィリップ・H・ゴードン  ブルッキングス研究所 米仏センター長

ヨーロッパ諸国はコソボ紛争の顛末から、自分たちが軍事的にいかにアメリカに依存しているかを思い知り、大きな変革なしには状況を変化させられないことを認識した。EUによる自立的防衛力を整備すれば、アメリカはヨーロッパにおける重荷を軽減できるし、ヨーロッパはより高い能力を持つパートナーになれる。しかし今回の構想が、ヨーロッパの軍事力の不備を補うような軍事能力の向上ではなく、たんなる官僚制の強化につながり、NATOとの関係を複雑にしてしまうだけなら、ヨーロッパが全般的にいい方向に向かうとは思えない。

本土ミサイル防衛というアメリカの過ち

2000年9月号

イーゴリ・S・イワノフ  ロシア連邦外相

アメリカが一方的にABM制限条約から離脱すれば、ロシアも戦略兵器の制限という義務に縛られることはあり得ず、現状でのアメリカの姿勢が覆されない限り、核軍縮プロセスそのものにピリオドが打たれることになる。NMDの配備は外部における脅威の変化への対応ではなく、軍事技術の進歩に歩調を合わせたものにすぎず、そこからうまみを得るのは、ルールなきゲームを裏で操る軍産複合体である。国際安全保障にとって戦略的安定の重要性は非常に大きく、当然、これを政治の手段、国内政治の道具、一方的な外交政策の対象としてはならない。

核廃絶か、止めどない核拡散か

2000年9月号

ジョナサン・シェル
元ニューヨーカー誌エディター

核不拡散が達成不可能とみなされれば、アメリカ政府は核拡散を認め、「核武装した世界」に向けた安定的移行プロセスの管理という目標を掲げるようになるかもしれないし、現実に、より多くの核保有国が存在する国際秩序へと世界は向かっている。核不拡散政策と核の保有による抑止戦略を両立させようとするアメリカの核政策は、道徳的にも、軍事・外交的にも、そして法的にも一貫性を欠く自己破綻の処方箋にほかならない。実際には抑止論で正当化される核の兵器庫の存在こそが核拡散を刺激しているのだから、抑止政策や核の保有と核不拡散政策とは両立し得ず、本気で核の拡散を阻止するには核廃絶を目標とするしかない。

米本土防衛システムと中国の核戦力

2000年8月号

ブラッド・ロバーツ 防衛分析研究所研究員 ロバート・A・マニング 外交問題評議会シニアフェロー

米本土ミサイル防衛(NMD)システムを中国が自国の核抑止力に対する挑戦ととらえるのは間違いなく、大規模な核戦力やアメリカの防衛システムを圧倒するような対抗手段の構築に着手するかもしれない。ワシントン・モスクワ・北京間の調整を欠いた現在の核戦略トレンドは、「攻撃兵器」対「防衛システム」間のとめどない軍拡競争を招く危険があり、そうなればミサイル防衛によって解決されるはずの問題がより複雑化しかねない。ワシントンは、ミサイル防衛計画に中国の懸念や予想される反応を組み込む必要がある。

北京の軍事計画は中台紛争へのアメリカの介入を前提としており、アメリカの航空母艦を沈める必要性も視野に入れている。台北政府の軍事計画でもアメリカの介入が前提とされている。アメリカがどう出るかわからないと考えているのは、実際にはワシントンだけである。(フリーマン)

中国だけに焦点を絞り、台湾に苦言を呈し、アジアのほかの国々を緩衝地域としか考えなくなってしまうときに、アメリカの政策は危険な状態に陥る。中国に焦点を絞った政策ではなく、広範囲にわたる汎アジア的政策こそ、成功への処方箋である。(ウォルドロン)

マクドナルド中国へ行く

2000年8月号

ジェームズ・L・ワトソン/ハーバード大学教授

・マクドナルドやその他のグローバル文化の出現は、非民主的な社会でも出現しつつある中産階級の利益にかなっており、文化帝国主義ではない。
・香港の親たちは、近所のマクドナルドへ行くことを、よい子でいることやよい成績をとったときのご褒美にしている。
・どこまでがトランスナショナル(グローバルな共有文化)で、どこからがローカル(現地文化)なのかを区別することはますます難しくなっている――一体だれの文化なのかと考えるようなら、あなたはすでに「バス」に乗り遅れてしまっている。

特別講演
先進国の高齢化問題を管理していくには

2000年8月号

米外交問題評議会理事長 ピーター・ピーターソン

米外交問題評議会のピーターソン理事長がこのほど来日し、朝日新聞社主催のフォーラムで高齢化問題をテーマに講演した。フォーラムにはトーマス・フォーリー駐日米国大使や小林陽太郎・富士ゼロックス会長ら日米の政財界関係者を中心に二十数人が参加、ピーターソン氏との間で活発な質疑応答もあった。その主な内容を紹介する。

なぜアメリカは対中路線を見直すべきか

2000年8月号

ポール・ヒール 外交問題評議会客員研究員

中国政府の外交路線が、政府指導層内における派閥の力学に左右されているというアメリカ政府の認識は間違っている。中国外交を左右する最大の要因は、北京の指導層が国際環境をどうとらえているかである。台湾をめぐる中国の強硬姿勢は、北京の国際環境の認識面での危機感がまったく新たな、おそらくは決定的な段階にまで達していることを意味する。アメリカの重要な利益が台湾で差し迫った危険にさらされているという認識を捨て去り、米中の相互利益を重視する現実主義路線への転換が必要である。

Page Top