ウクライナ・ジレンマ
―― いかにウクライナを守り、対ロ戦争を回避するか
2022年4月号
![](https://www.foreignaffairsj.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/shutterstock_1578070744-260x187.jpg)
欧米の政策立案者たちは二つの競合する目的を模索している。ロシアの残忍で正当化できない攻撃からウクライナを救うために、軍事力の行使を例外とするあらゆる手を尽くしたいと考える一方で、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の全面戦争を回避することを望んでいる。この課題を難しくしているのは、一方の目的を達成しようとすれば、他方の目的を達成できる見込みが低下することだ。NATO加盟国はエスカレーションを避けようと必死だが、抑止力を倍加させる戦略は、追い込まれたと怒り狂うプーチンがエスカレーション策をとるリスクを高めかねない。逆説的に言えば、自制を促すための戦略が逆にエスカレーションを誘発する恐れがある。欧米は「ウクライナを守り、ロシアの侵略を押し返しつつ、世界最大の核の兵器庫をもつロシアとの戦争をいかに回避するか」という非常に難しいジレンマに直面している。