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論文データベース(最新論文順)

パレスチナの混迷と内部対立
―和平プロセス再開の条件を探る―

2002年3月号

ハリル・シュカーキ ビルザイト大学政治学助教授

和平プロセスが破綻し、民衆が自治政府の統治能力をほぼ見限ったために、自治政府の正統性は大きく損なわれ、民族主義運動の新世代派が大きく台頭しつつある。アラファト議長は、この新世代派を懐柔しようと、彼らがイスラム主義勢力と共同歩調をとることだけでなく、イスラエル軍との過激な対立路線をとることも容認した。西岸とガザ地区からイスラエル軍を撤退させ、PLO主流派の力を弱め、主流派に取って代わることを夢見るこの新世代派の台頭こそ、第2次インティファーダの本当の理由なのだ。

対イラク侵攻というアメリカのジレンマ

2002年3月号

ケニース・M・ポラック/米外交問題評議会・国家安全保障問題担当シニア・フェロー

イラクに対する制裁や抑止策では、もはやサダムが核兵器を獲得するのを阻止できない。ほかのすべての選択肢が大きな問題を伴う以上、最後の手段であるイラクへの軍事侵攻を、対テロ作戦との兼ね合いに配慮しつつ、タイミングをみて実施せざるを得ない状態にある。アメリカが現在対処すべきジレンマは、拙速なイラクへの侵攻は対テロ戦争の成果を台なしにするかもしれないが、侵攻を先延ばしにすればするほど、作戦の遂行は困難になり、サダムが核武装するリスクを高めてしまうことだ。問題は、イラクに侵攻するかどうかではなく、どのようなタイミングでサダム・フセイン政権を打倒するかにある。

サダム追放策の全貌を検証する
―― 国際協調と単独主義の間

2002年3月号

スピーカー
レオン・ファース/クリントン政権・国家安全保障問題担当補佐官
リチャード・パール/レーガン政権・国防次官補

戦略的に好都合だからという理由でサダム追放策に焦点を合わせれば、すでに開始している対テロ作戦の実行に必要な国際的支援を失いかねない。テロ・ネットワークは、サダム同様に、アメリカに対して生物兵器を使用する能力を持っていることを忘れてはならない。(ファース)
テロリストに聖域を提供するテロ支援国がなくなって初めて、われわれはテロ・ネットワークを打倒できる。われわれは開放的な社会で暮らしており、個々のテロ集団に対処するだけでは、アメリカの安全を守ることはできない。(パール)

サダム・フセイン政権存続の謎

2002年3月号

オフラ・ベンジオ/テルアビブ大学中東研究所上席研究員

サダム・フセインが権力を維持しているのは、その無慈悲なキャラクターと、反対勢力の失策のためであり、さらにはバース党、治安機構、軍部、取り巻きの派閥というイラクにおける権力の支柱のすべてをきわめてうまく管理しているからだ。彼の2人の息子たちへの権力継承も視野に入りつつあるが、2人は父親同様に残忍な人物で、政権交代は地域的な安全の高まりを意味しない。軍の指導層が民間の啓蒙グループや亡命者集団と手を組めば状況は大きく進歩するのであり、このためにも欧米は、サダムを封じ込めつつもイラク民衆の窮状をやわらげる措置をとるべきである。

グローバル経済に挑む国際労働運動

2002年2月号

ジェイ・マズアー 米労働総同盟産業別会議・国際委員会会長

グローバリゼーションは一握りの人々に繁栄をもたらす一方で、あまりに多くの労働者を追い込んで不安定な生活を強いている。経済システムが正統性を持っているかどうかは、いかに多くの人々にすぐれた生活レベルを提供できるかで判断されるべきであり、この基準から見れば、現状のグローバル経済システムには変革と新ルールの導入が間違いなく必要である。具体的には、労働者の権利を国際的な貿易合意に明文化させるとともに、それを国際的な金融機構の融資の条件にする必要がある。加えて、企業側は経済効率と低賃金の労働力を求めてグローバルな生産ラインを確立させ、国際的提携を進めており、労働組合が国際的連帯を強化する必要性も高まっている。すでにわれわれは、他国の労組だけでなく、環境保護団体、人権擁護団体との連帯を強化しつつある。われわれの取り組みは、グローバル経済のあちこちに壁をつくろうとする保護主義的な試みではない。それはグローバル経済にルールを導入し、労働者と人々の窮状を改善させるための基準をつくろうとする試みなのだ。

パキスタンでのイスラム革命を回避せよ

2002年2月号

アナトール・リーベン カーネギー国際平和財団シニア・アソシエート

パキスタンの歴代文民政権同様に、現在の軍事政権も社会・経済状況を改善できないとすれば、イスラム主義が、残された唯一の選択肢として浮上してくるかもしれない。イスラム過激派のテロリストたちは、インドのヒンズー教徒にイスラム教徒を迫害させることが、パキスタンで革命を起こす手っ取り早い方法であることを知っている。その結果インド・パキスタン戦争が起きれば、両国間の核戦争という忌まわしい危険が生じることになる。

軍事作戦後の対立を回避せよ

2002年2月号

マイケル・ハワード オックスフォード大学歴史学教授

「テロリストは英雄ではなく犯罪者である」とみなす前提が中東世界で受け入れられていない状態で、民間人に犠牲が出ることが避けられない対テロ軍事作戦を続けるのは、敵に勝利を与えるに等しい。テロに対する闘いを成功へと導くには、軍事作戦を早く終え、欧米にとって未知なるイスラム世界において「人心を勝ち取る闘い」を展開する必要がある。そして、この闘いの最前線はアフガニスタンではなく、近代化志向の政府が伝統主義者の反動によって脅かされている中東のイスラム諸国である。

グローバル経済の格差をなくすには

2002年2月号

ブルース・R・スコット ハーバード大学ビジネス・スクール教授

現在のグローバル経済では、勝ち組と負け組が必然的に出てくるし、1日1ドル足らずしか稼げない人々が世界にはほぼ10億人もおり、世界的な所得格差はますます拡大している。しかも、これを市場メカニズムで是正していくのは不可能である。問題の核心は、富裕国が移民と農産品輸入に対する障壁を設け、 一方で、発展途上世界の多くの政府が無能で効率性を欠いているために、外国資本を呼び込めずにいることだ。経済発展のためには制度の改革が必要であり、そのためには政治的・社会的近代化も必要になってくる。制度的不備こそが発展途上諸国の経済発展を妨げている大きな障害であり、外部からの助言や援助も制度面での整備に配慮したものとする必要がある。

グローバル化が世界の貧困層を救う

2002年2月号

デービッド・ダラー 世界銀行開発研究グループ・エコノミスト  アート・クライ 世界銀行開発研究グループ・エコノミスト

最近のグローバル化の潮流が、世界の所得格差を縮小し、貧困撲滅を進める上で強力な武器になってきたことをすべての人々が認識すべきである。反グローバル化勢力の主張とは全く逆に、途上国が貿易と投資領域の開放・自由化を行い、国内の制度改革を行えば、先進国と貧困国の所得・経済格差が縮まることは立証されている。現在問われているのは、このグローバル化の流れがよどまぬように、先進諸国が開発途上国のグローバル経済への統合を推進する意図をもっているかどうかだ。

人間の顔をしたグローバル化をめざせ

2020年2月号

ジャグディシュ・バグワティ 米外交問題評議会国際経済担当シニア・フェロー

資本主義、グローバル化、多国籍企業の行動に対する間違った思い込みが、知識に裏打ちされた議論によって論破されていかない限り、反グローバル化運動は今後も大きな問題を作りだす。だが、グローバル化や資本主義が、開発途上世界で貧困などの社会的問題を作りだし、こうした問題を悪化させているわけではないと主張するだけでは不十分だ。貧困国における問題のある労働慣行をやめさせるには、制裁ではなく、メディアやNGOと連携して説得を試み、企業は、自らの行動領域での社会貢献を強化すべきだろう。

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