1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

なぜ米上院は包括的核実験禁止条約を拒絶したか

2002年10月号

テリー・L・デイベル  米国防大学教授

CTBTを米上院が承認しなかったのは、この条約を受け入れれば、「抑止と防衛」を犠牲にして、「脅威を削減するような国際環境を形作る」ことを重視せざるを得なくなると考えたからだ。批准拒否のプロセスは、「条約によって軍備管理を試みる流れが完全に途絶えたこと」を意味する分岐点だったかもしれないし、アメリカ外交にとっての分水嶺だったかもしれない。条約の拒絶は、単独行動主義が国際主義を抑え込んだ歴史的瞬間だったかもしれないからだ。

新帝国主義というアメリカの野望

2002年10月号

G・ジョン・アイケンベリー ジョージタウン大学教授

保有する圧倒的なパワーと、テロという脅威の到来が、帝国主義の誘惑を大きくしている。だが、正統性もなく、戦後国際秩序の規範や制度を無視して、アメリカがパワーを思うままに行使すれば、いずれ敵意に満ちた国際環境が出現し、アメリカの国益を確保するのも難しくなる。アメリカの新帝国主義的大戦略はリーダーシップの実践というよりも、むしろたんなる軍事パワーの行使にすぎない。勢力均衡を重視するリアリズム、そしてリベラルな多国間主義を再評価し、成熟した大国として、他国の立場を大きく脅かさないように配慮しつつ、秩序の安定と国益を模索する戦略へと立ち返るべきだ。

破綻国家問題に対処する国際機関の設立を

2002年10月号

セバスチャン・マラビー ワシントン・ポスト論説委員

テロや麻薬取引など、破綻国家は数多くの脅威を国際社会に突きつけており、特定国の統治システムの崩壊がつくり出す問題が、広く国際社会の脅威となっている。既存の国際機関にはこれを解決する力はないし、アメリカ帝国がその空白を埋めていくという考えも非現実的だ。

賢人たちが第2次世界大戦後に国連、世界銀行、国際通貨基金をつくり上げたように、アメリカと同盟国の指導者は、いまこの時代の破綻国家という脅威の温床に対処するために、アメリカのリーダーシップと国際的正統性をともに備えた、新たな国際機構を立ち上げるべきだ。

「対テロ戦争」というレトリックの弊害

2002年10月号

グレンビル・バイフォード 国際問題アナリスト

美しさを人がどうとらえるかと同じことで、テロリズムも立場によってとらえ方が違ってくる。目的を達成するのにどのような手段を用いたかで、それがテロであるかどうかを判断するのは間違っている。同時多発テロへのアメリカの怒りにしても、アメリカが攻撃され、アメリカ人が殺されたことに市民は激怒しているのであって、攻撃の手法自体に怒りを募らせているわけではない。したがって、漠然としたものにしかなり得ず、むしろ問題をつくり出す「対テロ戦争」というレトリックを振り回すのをやめるべきだ。国家安全保障にかかわる特定の具体的課題としてテロ問題に取り組むべきであり、テロ対策について語るときも「利益が一番で、次が目的、そして手段」というアメリカ人の常日頃の優先順位を忘れてはならない。

進化する総合安全保障政策と日米同盟の行方

2002年9月号

外交問題評議会シニアフェロー エリック・ヘジンボサム   マサチューセッツ工科大学 政治学教授 リチャード・J・サミュエルス

平和主義、ノーマルな国家になることへの模索、アメリカへの追随、中国に対する反発といった一般通念では、もはや日本の外交路線は説明できない。ワシントンは、日本の総合安全保障概念が進化し、これを支える二重保険戦略が生まれていることを直視し、この戦略と共存していく道を学んでいく必要がある。

イラクと大量破壊兵器

2002年9月号

リチャード・バトラー/前国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)委員長

「サダム・フセインが国連による査察の再開を拒絶しているのは、何かが発見されるのを阻止して、WMD開発計画を守ろうとしているからだ」。「イラクのWMD能力が、サダム・フセイン及び彼の政権にとって、もはや支えることのできない重荷と化していることを、サダムが認識している様子はない。これは、彼の病理的な問題だろう」。以下は、二〇〇二年七月三十一日、米上院外交委員会におけるリチャード・バトラーのイラクと大量破壊兵器に関する議会証言の邦訳。英文はwww.cfr.orgからアクセスできる。

ジョージ・W・ブッシュの世界像
―― 単独行動主義の思想と限界

2002年9月号

マイケル・ハーシュ/元ニューズウィーク誌外交エディター

現在のブッシュ政権は棍棒を片手に、(静かに話すのではなく)大声でわめきちらし、自分たちの価値については妥協を許さないと公言している。これではまるで学校の番長だ。問題は、ブッシュ政権が現実には、テロだけでなく、諸大国が平和に競争できるような世界をつくり上げることに対しても敵対的な行動をとっていることだ。圧倒的なパワーを国際的なコンセンサスへと変えていくことこそ、アメリカ外交の指針でなければならない。そうすれば、国際秩序をアメリカの命令ではなく、各国間の合意によって成立させることができるようになる。

対イラク「封じ込めプラス」戦略で戦争回避を

2002年9月号

モートン・H・ハルペリン/外交問題評議会シニア・フェロー

軍事行動をとるとすれば、イラクの軍隊を圧倒するのに十分な軍事力を投入しなければならない。米軍部隊や攻撃に参加する同盟国の軍隊だけでなく、イラクの市民、イスラエルを含む近隣諸国の市民にかなりの死傷者が出ることを覚悟しなければならない。(戦闘が終わっても)イラクを占領し、安全保障、経済問題に対処するには、かなりの期間、しかも相当のコストを支払って現地に留まる必要が出てくる。必要なのは戦争ではなく、辛抱強い「封じ込めプラス」戦略を実施して、サダム・フセインの行動を抑止し、近隣諸国、国連とともに、イラク市民に人道支援が間違いなく届くように配慮することだ。加えて、イラクでの人道的悲劇が、制裁措置によってではなく、イラク政府の政策によって引き起こされていることを世界の人々に理解してもらうために大がかりな広報外交を展開する必要もある。以下は、二〇〇一年七月三十一日、米上院外交委員会でのモートン・H・ハルペリンの証言の抜粋。英文はwww.cfr.orgからアクセスできる。

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