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論文データベース(最新論文順)

グローバル化は世界を不幸にしたか
――スティグリッツ氏、ワシントンに行く

2002年8月号

カリフォルニア大学バークレー校政治経済学教授 バリー・エイケングリーン

スティグリッツの本は、途上国の現実を無視した単純な経済教義は状況を改善するどころか悪化させる危険があり、経済理論と現実に即して慎重に運用することが、健全な政策助言を行う上で非常に重要であることを示している。しかし、途上国に発言権やグローバルな統治への参加権を与えよといった、過度に単純な彼の政治的助言は問題がある。政治改革は、経済改革と同じように微妙で複雑なものである。

変貌する米中通商関係

2002年8月号

ジョセフ・P・クインラン モルガン・スタンレー上級グローバルエコノミスト

米企業は対中輸出を増やすよりも、中国市場に投資して進出し、新たに設立した在中米系関連企業による現地市場での販売を強化するほうが好ましいと考えている。
実際、こうした米系企業による現地での販売、対米逆輸出はともに急増している。いまや米企業の対中投資の目的は、中国市場へのアクセスよりも、国際競争に勝ち抜くための低コストの製造・輸出基地として中国を利用することへとシフトしている。
したがって、ワシントンが対中経済政策を考える変数として重視すべきは、対中貿易赤字ではなく、直接投資による通商関係の質的変化だ。米企業がすでに中国を「戦略的パートナー」とみなしているのに、ワシントンが依然として中国を「戦略的ライバル」ととらえているのは間違った政策を呼び込む処方箋のようなものだ。

東南アジア
――対テロ軍事支援の限界と弊害

2002年7月号

ジョン・ガーシュマン 両半球間資源センター上級アナリスト

アメリカが対テロ戦争の一環として東南アジアを「軍事的に支援」するのは間違っている。人権侵害を起こすことで悪名高い東南アジア諸国の軍隊は、多くの場合、政治エリートの一部やテロ組織を含む犯罪組織と手を結んで、むしろテロを助長する社会環境を育んでいるからだ。軍隊を支援しても、民主体制をさらに弱め、イスラム過激派の魅力を高めてしまうだけだ。ワシントンは軍事援助や各国の法執行当局との連帯だけでなく、東南アジアが直面する社会問題への「文民統制型」の対応策を支援する必要がある。

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

米外交問題評議会リポート
「軍事的対テロ戦争」では問題は解決しない

2002年7月号

◎スピーカー ブレント・スコークロフト ブッシュ・フォード政権大統領補佐官 カーター政権大統領補佐官 ズビグニュー・ブレジンスキー  クリントン政権大統領補佐官  サミュエル・バーガー クリントン政権大統領補佐官  ◎司会 CNN上席副会長 フランク・セスノ

アメリカ市民を対テロ作戦に動員する努力、テロの危険を世界に認識させる努力はうまくいっている。だが、政府はテロ問題にばかり焦点を絞るという間違いを犯している。これでは、非常に複雑で、混乱している世界の現実に目を向けず、そうした現実がつくり出す一つの現象であるテロ問題だけに、取り憑かれたように関心を持ってしまうことになる。(Z・ブレジンスキー)

サウジ王国の苦しみ

2002年6月号

エリック・ルーロー 元駐トルコ・フランス大使

米メディアからは対米テロをめぐって批判され、国内でも、経済不振、そして社会的緊張と反米主義の高まりに悩まされるサウジアラビア政府はいまや身動きがとれなくなり、王族内の改革派も、保守派が牛耳る政治・宗教システムの囚われ人となっている。近代化と経済発展を促進しようとするアブドラ皇太子の決意は本物だが、その改革の規模とペースは、彼の意図ではなく、むしろ、矛盾に満ちたこの国の政治力学とグローバル化が呼び込む外的圧力の綱引きによって左右されることになろう。

京都合意を超えて
――現実的な地球温暖化対策とは何か

2002年6月号

トマス・C・シェリング メリーランド大学経済学名誉教授

どのように温室効果ガスの排出を削減できるかもわかっていないのに、特定の目標期日までの排出の量的削減という「結果」にコミットしても意味はない。排出権取引という概念も、排出量の少ない国に賄賂を払って条約を批准させ、自分たちは金で量的削減の帳尻を合わせる、ごまかしにすぎない。主要な先進諸国は、今後数十年にわたって温室効果ガス排出削減のために自ら犠牲を払い、その後、発展途上国を関与させる必要がある。膨大な資源がかかわる地球環境問題を解決する鍵は、削減に向けた各国の「自発的」な取り組みのプロセスと、合意を尊重するメカニズムをどうつくるかにある。

アフガニスタンでの戦争を総括する
――なぜビンラディンを取り逃がしたのか

2002年6月号

マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー

アフガニスタンの国内勢力をうまく反タリバーン勢力としてまとめ上げ、新旧の技術を「統合的軍事作戦」として結実させた「不朽の自由作戦」は、マッカーサーの仁川攻略以来の記念碑的な戦いとして評価されることになるかもしれない。しかし、ビンラディンと彼の側近たちがアフガニスタンからの脱出に成功していたり、アフガニスタンが今後再び不安定化し、テロリストが少数でもこの国に居座り続けたりすれば、現在の勝利も色あせたものになる。なぜ、米軍はアルカイダの退路を断つという最も重要な作戦を、パキスタン軍や現地の軍事勢力に任せるという間違いを犯したのか。

遺伝子組み換え技術を世界の恩恵とするには

2002年6月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会シニア・フェロー C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学教授

科学的に立証されていない遺伝子組み換え作物の危険を、ことさらに騒ぎ立てる人々は、新技術を生かした作物の栽培を通じて世界中の消費者と貧しい農民の生活水準を引き上げるという、遺伝子組み換え技術の大きな可能性を摘み取ってしまっている。世界の貧困層のためにバイオテクノロジーを役立てるには、途上国への農業研究援助を増やし、知的所有権をめぐる複雑な問題を管理するシステムが必要になる。研究成果の保護を求める開発者利益と、この技術を世界の経済開発問題に応用することによって得られる公益との間の微妙なバランスを踏まえた管理制度の構築が求められる。

パレスチナ紛争と中東政治の現実

2002年6月号

スピーカー
ジルス・ケペル/パリ行政学院政治学教授(アラブ・イスラム研究)
サンドラ・マッケイ/コラムニスト
ワイチェ・フォーラー/前駐サウジ・アメリカ大使(一九九六~二〇〇一)
司会
デボラ・エーモス/ABCニュース報道記者

出口が見えないパレスチナ紛争は、ブッシュ政権が準備を進めるイラク進攻作戦にどんな影響を与えるのか。中東に恒久的な和平の枠組みをつくる流れは生まれるのか。以下は、二〇〇二年四月十五日にニューヨークの米外交問題評議会で開かれた欧米の専門家による座談会の議事録からの要約・抜粋。(発言順を入れ替えている部分もある)

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