イラク危機とブレアの深い悩み
2003年8月号
イギリスがイラク戦争をめぐってアメリカとの関係を維持したのは、「特別な関係」を維持してイギリスが傍らにいなければ、アメリカは自制心を失って手がつけられなくなる恐れがあると考えたからだ。
イギリスをヨーロッパに織り込みつつ、新たな対米関係のバランスを見いだすというブレア構想は、イラク危機によって大きなジレンマを抱え込んでしまった。
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2003年8月号
イギリスがイラク戦争をめぐってアメリカとの関係を維持したのは、「特別な関係」を維持してイギリスが傍らにいなければ、アメリカは自制心を失って手がつけられなくなる恐れがあると考えたからだ。
イギリスをヨーロッパに織り込みつつ、新たな対米関係のバランスを見いだすというブレア構想は、イラク危機によって大きなジレンマを抱え込んでしまった。
2003年8月号
正確な位置の割り出し(測位)、ナビゲーション(行路)、そしてタイミング・インフォメーション(リアルタイムの情報分析)を提供するGPSは、軍事領域だけでなく、商業、レジャー面でも大いに利用されている。だが、この便利な軍民共用の応用技術も、判断を間違えると、最終的には利用できなくなるかもしれない。GPSは、米国が管理する戦略的な軍事インフラであるとともに、経済的に大きな潜在力を持つ民間のグローバルなインフラでもあるという事実によって、いまや大きな矛盾を抱えこんでしまっている。ヨーロッパが開発をめざすガリレオは、こうしたパラドックスを正面から見据えてGPSに挑戦しようとしている。
2003年8月号
サダム後のペルシャ湾岸の安全保障をどうするか、現地でのアメリカの軍事プレゼンスをどうするかは大きな課題であり、この課題を考えていく上で正面からとらえるべきジレンマが三つある。第一は新生イラクの再軍備をどこまで認めるかということ。強すぎても、弱すぎてもいけない。第二はイランの核開発計画。そして、第三はバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジ、アラブ首長国連邦といった湾岸協力会議(GCC)諸国が政治的に不安定化し、国内的混乱に陥る危険があるということだ。
2003年7月号
イラク戦争によって世界の人々の対米アメリカイメージはますます悪化したと、アンドリュー・コートは語る。ピュー世論調査センターのディレクターであるコートは、多くのイスラム教国家でワシントンに対する反感が広がっており、アメリカを自国に対する脅威とみなす国まで存在する、と指摘した。同センターが行った最新の世論調査によれば、「八カ国のイスラム教国家のうち七カ国において、市民の大多数がアメリカは自国にとって軍事的脅威かもしれないと考えている」ことが示されている。「二〇〇二年の段階でもアメリカはイスラム教徒に嫌われていた。二〇〇三年になると、アメリカは嫌われるだけでなく、恐れられるようになった」と彼は述べている。
イラク戦争によってヨーロッパにおいても反米、反ブッシュ感情が高まっている。ブッシュ大統領は「ヨーロッパのことを理解していないし、気にかけもしない典型的なアメリカ人」とヨーロッパ人の目には映っているようだとコートは分析した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・ディレクター)二〇〇三年六月十八日(邦訳文は、インタビューからの抜粋・要約)。
2003年7月号
ブッシュ政権が考える新生イラクのビジョンとシーア派が思い描く戦後イラクのビジョンの間には大きな開きがある。ワシントンは親米政権が率いる欧米型の民主的イラクを思い描いているが、シーア派、そして他のイラク人の多くは、自分たちの文化と伝統を反映する独立したイラク、ペルシャ湾における米軍の拠点として利用されないイラクの実現を望んでいる。
2003年7月号
二十一世紀の最大の問題は、世界でもっともパワフルな国家でも管理できない状況がますます広がりをみせていることだ。
新国家安全保障戦略を成功させられるかどうか、そして、他の諸国がアメリカの優位を背景とする戦略を穏やかな戦略とみなすかどうかは、ワシントンが他国の意見に耳を傾け、グローバル社会の利益も促進できるようにアメリカの国益をより広義に定義できるかどうかに左右される。新戦略をうまく実施していくには、新単独行動主義が必要だと考える以上に、ソフトパワーと多国間協調に気を配る必要がある。
中国の経済的・地政学的台頭、日本の地域的影響力の低下、自主路線を強める韓国、そしてアメリカの対テロ戦略。北朝鮮危機の背後で展開するこれら一連のトレンドは、アメリカの東アジア戦略を大きく変化させ、アジアの安全保障地図を大きく塗り替えることになるだろう。
すでにアメリカは中国とより緊密な関係を築き始め、アメリカにとっての日本の戦略価値は大きく低下している。北朝鮮危機、中台問題はどうなるのか。韓国、日本の駐留米軍は撤退するのか。
核武装した北朝鮮を現実として受け入れ、核分裂性物質の輸出を阻止するための臨検態勢をとらざるを得なくなったらどうなるだろうか。日本はこうした現実に大きな衝撃を受け、日本人の(軍事や防衛への)認識も大きく変わるかもしれない。(ジェームズ・T・レーニー)
論文は、米外交問題評議会朝鮮半島問題タスクフォースの共同議長(モートン・アブラモウィッツ、ジェームズ・T・レーニー)とディレクター(エリック・ヘジンボサム)の三氏が、二〇〇三年五月下旬に行った朝鮮半島問題リポートに関する記者会見後の質疑応答からの抜粋・要約。記者会見発表の邦訳はwww.foreignaffairsj.co.jpから、全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。順序を入れ替えている部分がある。
2003年7月号
二〇〇三年五月下旬に公表された朝鮮半島問題タスクフォース・リポートは、北朝鮮の核開発をやめさせるには、アメリカが暫定交渉への純粋なコミットメントを示し、米韓関係を修復し、中国がより大きな役割を担う必要があると指摘している。
前半のPART1では危機の経緯、北朝鮮の意図、アメリカの政策、各国の立場が分析され、後半のPART2では「すでに危険水域に入っている」とされる北朝鮮危機に対する交渉枠組み及び政策についての提言がなされている。邦訳文は同リポートからの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgから、日本語によるタスクフォースのメンバーリスト、主旨統括などは、www.foreignaffairsj.co.jpからアクセスできる。
「日本が今後も主要な地域的軍事パワーになることを選択せず、北京が現在の軍事力近代化路線を維持すれば、20年後の中国は、東アジアにおける支配的な軍事力を確立している」(CFRタスクフォース・リポート)