アメリカ帝国のジレンマ
2004年4月号
現実主義と理想主義のバランスのとれたアメリカの外交コンセンサスは、ベトナムの混迷を前に分裂した。1990年代までには、リアリストの力は衰退し、(自分たちの目的の実現だけを目指す)シングルイシュー志向の利益団体や非政府組織(NGO)が台頭し、テレビが造りだす情緒的なイメージも大きな影響力を持つようになった。その結果、アメリカの外交政策は、「理想主義的ながらも国益を重視する路線」から、「世界を改革しようとするグローバルな社会工学の手段」へと変化していった。「アメリカは世界中どこにでも民主主義を広めていく権利と義務がある。必要なら軍事力を行使することも辞さない」。この新しいユートピア的ビジョンが誕生したのは、このような文脈においてだった。