「この5~6年をみると、世界の石油の需要増のほぼすべては交通・運輸部門の需要増大によるもので、これはかつてとは違うパターンだ。これまでは、産業、電力生産、家庭での需要増がその内訳だったが、いまや、需要増のほぼすべてが交通・運輸部門の需要増大に引きずられている。だが、この部門を石油以外のエネルギー資源へと移行させていくのは容易ではない。いかなるシナリオをたどっても、今後中東と北アフリカMENA の世界の石油供給にしめるシェアはますます増大していく」(F・バイロル)
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「この5~6年をみると、世界の石油の需要増のほぼすべては交通・運輸部門の需要増大によるもので、これはかつてとは違うパターンだ。これまでは、産業、電力生産、家庭での需要増がその内訳だったが、いまや、需要増のほぼすべてが交通・運輸部門の需要増大に引きずられている。だが、この部門を石油以外のエネルギー資源へと移行させていくのは容易ではない。いかなるシナリオをたどっても、今後中東と北アフリカMENA の世界の石油供給にしめるシェアはますます増大していく」(F・バイロル)
2005年12月号
米兵犠牲者の増大とともに、世論の戦争への支持は低下する。そして、こうした戦争への支持率の低下を挽回するために大統領にできることはほとんど何もないし、支持率の低下は、戦争が終わっ ても歯止めが利かない。こうして、戦争後にはアメリカ社会での対外介入への嫌悪感が高まる。すでにイラク・シンドロームとでもいうべき対外介入を嫌悪する感情が高まりをみせつつある。対外介入を忌み嫌う戦後のシンドロームによって大きく損なわれるのは、ブッシュ・ドクトリン、単独行動主義、先制攻撃、予防戦争、そして世界にとって不可欠の国としてのアメリカという自己イメージに他ならない。とすれば、イラク戦争から最終的にもっとも大きな利益を引き出しているのは、イラク同様に悪の枢軸と名指しされた国々なのかもしれない。
2005年12月号
現代医学によって明らかになっている1415の感染症の60%以上が動物と人間双方への感染力を持っている。鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ出血熱、牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)などを含むこれらの人畜共通感染症のほとんどは、本来動物の病気であったものが生物種の壁を越えて人間に感染するようになったものだ。また、注目される機会はより少ないが、人間に一般的に見られるヘルペス、結核、はしかは動物にも感染する。病気は生物種や学問領域の垣根を越えて発生するという真実を認識し、それに応じた対応メカニズムを構築しない限り、人類は存亡の危機に立たされることになる。
2005年12月
北京が鳥インフルエンザ問題をめぐって十分な情報公開をしているとは断言できない。深刻な状態にあることを公表することへのためらいがみられるし、鳥インフルエンザに関して地方から正確な情報が寄せられているかどうか、北京の指導者自身、確信がもてずにいる。中国問題の専門家エリザベス・エコノミー(CFRシニア・フェロー)は、鳥インフルエンザの情報公開であれ、知的所有権の保護であれ、中国が国際社会で責任ある国家とみなされるには、国内の統治システムを抜本的に改革し、特に、地方において優れた統治システムを確立することが不可欠だと主張し、「それには長い時間を必要とする」とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
2005年12月号
北京が世界のエネルギー供給を1人で押さえてしまおうとすれば、中国と、アメリカその他の諸国が衝突するのは目に見えている。アフリカ、中東、ロシア、南米と、中国は世界中で石油資源の供給を押さえようときわめて利己的で攻撃的な資源調達戦略をとっている。中国のエネルギー調達戦略が今後も攻撃的でナショナリスティックなままなら、われわれは問題に遭遇することになるし、その兆しはすでにある。状況を放置すれば、たんに中国との間で資源獲得競争が起きるだけでなく、紛争の瀬戸際まで追い込まれる。資源をめぐる米中競争が深刻な事態へと至る前に、石油への依存を減らしていくための米中共同の研究開発プロジェクトを実施する必要がある。
2005年11月号
ベトナムの屈辱とは、われわれがベトナムに介入したことではなく、最終的にわれわれが同盟勢力を裏切ってしまったことだ。パリ協定の約束に背を向けて、米議会が南ベトナムへの援助を打ち切ったために南ベトナム軍は総崩れになり、結局は崩壊した。イラク戦争にも同じことが言える。米政府と議会の連帯を維持することが、イラクでの対ゲリラ戦を遂行するうえでも非常に重要である。アメリカのイラクへのコミットメントが、将来においても尊重されるように、それが何を意味するかを現在理解しておく必要がある。イラク問題に関するアメリカ国内での論争は、議会と政府間の連帯を損ない、ゲリラ勢力に希望を与え、イラクに送り込まれているアメリカの兵士たちを危機にさらすだけだ。
2005年11月号
イラクはすでに三つの地域に分裂している。米軍がイラクに駐留する限り、ゲリラ勢力が勝利を手にすることはないが、北部、中央部、南部の三つの地域間の主要勢力間の政治的取り決めが成立しない限り、われわれがイラクで勝利を勝ち取ることはできない。そして、クルド人、シーア派、スンニ派という三つの集団間の政治的取り決めの切り札が、連合国家としての枠内でイラクの3地域に大幅な自治権を与えることだ。すでにこの方向での流れが生まれつつある。
2005年11月号
「(イラクの)シーア派とスンニ派間に内戦が起きるのを放置すれば、それでイラクは終わりだ。分裂するだけでなく、各地域で紛争が起き、この地域全体が出口のない混乱へと陥っていく。イラクの紛争にイランもトルコも介入してくる。アラブ世界全体が紛争へと巻き込まれていく。したがって、まずスンニ派とシーア派の和解を成立させる必要がある」(サウド・ファイサル)
2005年11月号
増大するエネルギー需要と不安定な原油価格を前に、一部の先進国は石炭や石油に代わる代替エネルギーの開発を試みている。だがコストのかかる代替エネルギーへの転換では問題の一部しか解決できない。地球温暖化問題を抱えつつも、人類社会は依然として二酸化炭素を放出する化石燃料にエネルギー源を頼らざるを得ない状況にある。幸い、大規模な気候変動を引き起こさずに化石燃料を利用できる技術がある。それが、「二酸化炭素固定技術」と「二酸化炭素の地中貯留技術」を組み合わせたゼロエミッションの石炭ガス化複合発電施設だ。
2005年10月号
アメリカ人は自国が支配的な優位を持っていることを世界のためになると考えているかもしれないが、他の国々はアメリカの支配的な優位の意味合いを測りかねており、そのパワーを牽制する方法をすでに見いだしている。これが現実だとすれば、アメリカは、域外に身を置きつつ秩序バランスの維持に貢献するという伝統的な役割に立ち返るべきではないか。パワーバランスの維持は地域諸国に委ね、介入するとすれば、地域的なパワーバランスが崩壊し、死活的なアメリカの利益が敵対勢力によって脅かされている場合に限定する路線を取るべきではないか。