気候変動と感染症
―― 温暖化と感染症リスクの拡大
2022年12月号
多くの研究が、気候変動と人獣共通感染症の脅威拡大との関連を指摘している。温暖化によってウイルスの宿主の生息域と数が拡大し、ヒトとの接触、感染経路が増えているからだ。世界の平均気温の上昇に伴い、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)に報告される新規ライム病の患者数は、1990年代初頭からほぼ倍増し、いまや年約3万人に達している。このような状況を受けて、近年では、人間、動物、自然環境のつながりを重視した公衆衛生の考え方、「ワンヘルス」という概念が広がりをみせている。この概念の下、農業・畜産、獣医学、環境汚染などの分野や研究領域を統合することが、将来のグローバルな健康脅威に備えるために必要だと提唱されている。だが、専門家たちは、世界は気候変動に起因する感染症拡大リスクに対する備えが依然としてできていないとみている。