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論文データベース(最新論文順)

エネルギー資源輸出国のロシア、経済成長を支えるのに必要なエネルギー資源を求める中国。互いの経済的必要性を満たす両国の接近を自然のなりゆきと考える専門家も多い。だが、両国の接近は貿易領域に留まらない。「アメリカの影響力を封じ込める」という共通の戦略目標を掲げる中国とロシアは、貿易だけでなく、中央アジアにおける資源開発や安全保障、そして、北朝・イランの核開発問題をめぐっても協調・共闘路線をとっている。両国は、アメリカの覇権に対抗するために広範な領域での外交問題について政策のすりあわせを行い、協調している。また、「ロシアが中国の後ろ盾となれば、経済的にも軍事的にもますます日本の立場は危うくなる」と中ロ連合の日本への余波を指摘する専門家もいる。アメリカの覇権に対抗する中ロ連合を軸に、東アジアの地政学はどう変化していくのか。

 アラブ世界は、イランの「核技術保有宣言」を前に困惑している。イランと多くのアラブ諸国の関係はすでに緊張しており、今後イランが核兵器開発能力を手にすれば、ますますアラブ諸国とイランの関係は悪化していく危険がある。核武装したイランは中東のパワーバランスを揺るがし、アラブ各国における宗派上の少数派であるシーア派を勢いづけ、最悪の場合には、中東で核の軍拡レースが起きると考える専門家もいる。
 しかし一方で、世論調査や新聞報道からみて、イスラムの同胞であるイランがアメリカを相手に一歩も引かぬ姿勢をとっていることを頼もしく思っているアラブ人もいる。彼らは、ワシントンのイスラエル寄りの路線、シーア派主導のイラク構築路線、中東民主化構想のことを、中東秩序の安定にとってイランの核技術獲得以上の脅威とみなしている。一般にアラブの指導者はイランの非核化を望んでおり、現在の危機が外交的に解決されることを期待している。

イラク戦争の情報と政策

2006年4月号

ポール・R・ピラー/前米中央情報局(CIA) 近東・南アジア情報分析官

ブッシュ政権は政策を決める判断材料として情報を用いるという、政策と情報の通常のモデルを逆さにし、すでに下されている政治決断を正当化するために情報を選択的に用いた。米情報コミュニティーのイラクの大量破壊兵器(WMD)に関する間違った情報分析が政策決定者に判断を誤らせたわけではない。むしろ、イラクに関する戦前の情報収集・分析に関して特筆すべきは、この数十年間でもっとも重要なアメリカの政策決定において、情報がほとんど無視されたという点にある。ブッシュ政権は、イラク戦争に向けて米市民を動員するために生の情報を選択的に利用したにすぎない。

「イランが低濃縮ウランの製造に成功したからといって、国際社会が一つにまとまるとは思えない」。むしろ、米欧の連帯は不安定になってきているとイラン問題の専門家レイ・タキー(CFRシニア・フェロー)はみる。「アメリカが制裁に同調するように求め出せば、中国やロシアだけでなく、ヨーロッパも難色を示し出すかもしれない。イランが低濃縮ウランの開発に成功したからといって、自分たちの経済利益、――ロシアの場合は、経済利益と戦略利益――を脇に置いて、アメリカの懲罰路線に同意するということにはならないだろう」。同氏は、もはや核技術をイランに放棄させるのは無理であり、今後の開発の進展を枠にはめるための外交交渉を行うしか手はないと述べ、アメリカの妥協が必要だと強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRミーティング
米印核合意を支持する

2006年4月号

スピーカー 元駐インド・アメリカ大使 ロバート・ブラックウィル
司会 CNN国家安全保障担当記者 デービッド・エンソア

アメリカ内でインドとの核技術協力に反対する人々は、「インドの核施設のほぼすべてを国際原子力機関(IAEA)の恒久査察体制の下に置くしかない」と主張し、インドの核武装は南アジア、そして国際的な不安定化要因であり、インドの核武装解除を目的にすべきだと明言する。一方インドは合意の条件としてIAEAの査察下に置くべきとされる核施設の数が多すぎると反発し、これでは核抑止力が弱まり、いずれ抑止力そのものを失うことになると危機感を抱いている。核不拡散レジームに参加しないまま核を保有したインドに民生用核技術と燃料を提供することのバランスシートは何か。

中台安定化時代の始まり  ――そして台湾は独立を望まなくなった

2006年4月号

ロバート・S・ロス ボストンカレッジ政治学教授

台湾海峡周辺地域へのミサイルと戦闘機の配備を強化した中国は、2000年までには、アメリカが軍事介入する前に台湾の繁栄を破壊できるだけの軍事力を整備していたし、急速な経済成長によって台湾経済を左右するような大きな経済的影響力も手に入れていた。北京の台湾に対する軍事的、経済的な影響力を前に、台湾の有権者は、台湾の独立を唱える陳総統と民進党に見切りをつけ、中国と折り合いをつけていくことを選択し、ここに、台湾独立を求める機運は事実上、消え去った。中国と台湾の関係が平和的に改善されていけば、米中戦争のリスクも低下する。北京、台北、ワシントンが軍事・防衛体制を調整する機会さえ生まれることになる。

核合意は核不拡散体制を脅かす

2006年4月号

ストローブ・タルボット/前米国務副長官

ブッシュ政権は今回の米印核合意をつうじて、「われわれは世界を『良い国と悪い国』、あるいは『良い国、悪い国、どちらともいえないあいまいな国』に区別し、まちがいなく良い国なら、核不拡散条約(NPT)の例外措置を認める」と表明したようなものだ。クリントン政権で国務副長官を務めたストローブ・タルボットは、「今回の合意の余波によって、すでに形骸化し始めているNPTがさらに弱体化していくこと」を憂慮し、インドにNPTの例外措置を事実上認めた以上、「今後、同様の例外措置の適用を望む国が出てくると思われる」とコメントした。現在ブルッキングス研究所の会長を務める同氏は、「われわれが良い・悪い、信頼できる・信頼できないという基準で、NPTの例外措置を認めるかどうかを決めれば、NPT体制は崩壊する」と警鐘を鳴らした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRインタビュー
ブッシュ政権はイランの軍事攻撃を検討している

2006年4月号

カーネギー国際平和財団・核不拡散担当ディレクター ジョセフ・シリンシオーネ

ロシアと中国はイランに対する制裁措置の発動を避けたいと考えているし、一方ワシントンは制裁措置の発動だけでなく、軍事攻撃への容認を安保理で取り付けたいと考えている。現状をこう分析するジョセフ・シリンシオーネ(カーネギー国際平和財団・核不拡散プロジェクト・ディレクター)は、ブッシュ政権内ではイランの軍事攻撃に関する議論が行われているだけでなく、その計画も立案されていると語る。「私は現実点では次のように考えている。副大統領を含む、ブッシュ政権の高官の一部はイランに対する軍事攻撃が望ましい選択肢だとすでに判断し、軍事攻撃によってイランの政権を揺るがせば、長年の目標である政権の打倒を達成できると考えている」。軍事攻撃に明確に反対する同氏は、イランを核の平和利用、民生利用へと引き戻し、中東における核武装のドミノ倒し現象を回避すべきだと強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

Classic Selection
オフショアリングが誘発する次なる産業革命

2006年4月号

アラン・S・ブラインダー プリンストン大学教授

多くの人々は、教育レベル(とスキルのレベル)が高い人々と低い人々の間の区別、つまり、医師とテレホンオペレーターの違いに象徴される労働市場における重要な雇用区分は今も存在し、今後もなくならないと考えている。だがこうした見方は間違っているかもしれない。むしろ雇用に関する今後の重要な区分は、(インターネットなど)有線や無線での電子送信によって質をほとんど低下させることなく仕事をオフショアリング(外国へアウトソース)できる仕事か、そうでない仕事かで分かれることになる。先進国にとって、オフショアリングは第三の産業革命と呼ぶにふさわしい産業構造の変化、そして社会的変革を呼び込むことになるだろう。

原油価格高騰の真相

2006年4月号

レオナルド・モーゲリ
ENI企業戦略企画担当上席副社長

悲観論者たちは、世界の資源はすでに開発し尽くされており、原油価格のダイナミクスや技術の発展も石油資源の「限界」を覆すことはできないと考えている。たしかに石油の消費が増加の一途をたどっている以上、既存の石油資源に関しては必然的に枯渇に近づいている。だが、科学を装った「資源枯渇」という悲観論者の宿命論は、これまで幾度となく間違っていたことが実証されている。この20年にわたって石油関連投資がないがしろにされてきた結果の原油不足に、中国などの需要増が追い打ちをかけているというのが真実に他ならない。石油資源は潤沢にあるし、今回の原油高騰を例外的な現象とみなすのは間違っている。

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