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論文データベース(最新論文順)

「イラン対イスラエル」へと変化した中東紛争の構図

2006年12月号

ゼーブ・シーフ ハーレツ紙記者

ヒズボラが2000年以降、イスラエルの都市センターを脅かす恐れのあるロケットを備蓄していることを察知しながらも、イスラエルはこれまで攻撃を慎んできた。そのイスラエルが、なぜ今回ヒズボラとの紛争の道を選んだのか。それは、ヒズボラとハマスの連帯、イランとヒズボラの連帯を早急に切り崩す必要があると判断したからだ。シリアがロケットをヒズボラに提供し続けていたにもかかわらず、「ダマスカスがイスラエルの攻撃によって危機にさらされることはない」とイスラエルが表明したのも、シリアとの戦端を同時に開くことを避け、シリアを助けるという口実でイランが介入してくるのを阻止したかったからだ。いまや中東紛争の構図は「イランVS.イスラエル」へとシフトしている。イスラエルは、パレスチナ問題をめぐる政治的妥協を試み、来るべきイランとの衝突に備えた政治環境の整備に努める必要がある。

現代版奴隷貿易を阻止するには

2006年12月

イーサン・B・カプスタイン 仏欧州経営大学院(INSEAD)教授

人身売買業者は、貧しい国の貧しい人々に遠い国での高賃金の仕事を約束してその気にさせ、渡航手続き、必要書類の整備、渡航先での仕事を見つけるための資金を法外な金利で貸しつける。しかし、渡航先には仕事はなく、何千ドルもの借金だけが残る。被害者はその後すべての渡航書類を奪われ、偽名を使っての強制労働を強いられる。当局に訴えたり逃亡を試みたりすれば、痛めつけるか殺すと、被害者とその家族は脅される。国連の推計によると、人身売買産業が得る利益は年間約320億ドル。いまや「127カ国の出身者が、137カ国において強制労働を強いられ、搾取されている」。

CFRミーティング
ヒラリー・クリントンが語る
世界を混乱に陥れたブッシュ外交

2006年12月号

スピーカー
ヒラリー・クリントン/米上院議員
司会
ピーター・G・ピーターソン/米外交問題評議会理事長

「アメリカ人は常に、理想主義と現実主義間の創造的な緊張、つまり、世界の現実をそのまま受け入れようとする一方で、かくあるべきと考える状況へと世界をつくり替えたいという熱意の葛藤がつくりだす緊張に正面から取り組んできました。だがブッシュ政権は、この緊張に直面することを回避して、短絡的に世界を善と悪の二つに切りわけ、悪とみなす勢力との対話を拒絶しました」 (H・R・クリントン)

中国の人民元切り上げ問題を考える
――人民元切り上げで「グローバルな不均衡」をなくせるのか

2006年12月号

スティーブン・ローチ モルガンスタンレー・チーフエコノミスト(当時)
デスモンド・ラックマン アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)レジデントフェロー

ワシントンは、中国政府は輸出競争力を強化しようと、人民元レートを人為的に低いレベルにとどめようとしていると批判し、北京が人民元を早急に切り上げることが、アメリカの膨大な経常赤字と中国の巨大な貿易黒字という「グローバルな不均衡」を是正することにつながると主張してきた。しかし、人民元が切り上げられてもアメリカの経常赤字はなくならないとする見方もあれば、人民元が切り上げられなければ、米欧では保護主義が台頭して、グローバル経済の流れが停滞するという議論もある。アメリカの消費者がモノを買いすぎることが問題なのか、それとも、中国が為替操作を通じて輸出競争力を強化しようとしていることが問題なのか。スティーブン・ローチとデスモンド・ラックマンという2人のエコノミストが検証する中国の人民元切り上げ問題。

CFRブリーフィング
北朝鮮経済制裁とイランの核問題の行方

2006年11月号

ライオネル・ビーナー  CFR スタッフライター 

今後、北朝鮮に対する厳格な制裁措置が間違いなく履行されていけば、イランも考えを改めるかもしれないが、現実にそうなるとは思えないし、中国とロシアが、イランに対して強硬な路線へとシフトするとも考えにくい。むしろイランの交渉上の立場は今後強まっていくと考える専門家は多い。北朝鮮は核不拡散条約(NPT)から離脱し、公然と核開発の意図を表明し、プルトニウムの再処理を通じた核分裂物質の生産を試みていたが、イランの場合、ウラン濃縮による核分裂物質の生産を試みているとはいえ、今もNPTに加盟しており、核兵器の開発ではなく、核の平和利用を目指していると繰り返し表明している。ブッシュ政権の高官のなかには、イランのような核開発の初期段階にある相手には、外交的に対処したほうが成果を期待できると考える者もいる。

Review Essay
中国の政治経済体制の今後を検証する
――民主化、崩壊、それとも現体制の存続?

2006年11月号

アンドリュー・J・ネーサン コロンビア大学政治学教授

中国の民主化、崩壊シナリオを唱える人がいる一方で、現体制の存続を予測する人もいる。農村部の貧困や不良債権問題など、山積する課題に直面しているとはいえ、現体制が崩壊する気配はないし、一方で、民主化プロセスが進展する様子もない。 実際、中国の実験は、近代化路線を導入しても、権威主義体制の基盤を損なうことなく繁栄を手にできることを実証しつつあるのかもしれない。カザフスタンからイランまでの独裁政権が、中国の状況を、固唾をのんで見守っているわけはここにある。中国の歴史の流れを大きく変化させるものがあるとすれば、それは、内的要因よりも、むしろ、外からの衝撃かもしれない。アメリカ経済が衰退すれば、経済成長を前提とする中国における社会契約が崩壊してしまうかもしれないし、朝鮮半島で戦争が起き、感染症が蔓延した場合も同様に流れは大きく変化する。

CFRインタビュー
核実験は政治的デモンストレーションだ

2006年11月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長

北朝鮮が(交渉から離脱してミサイル実験・核実験を強行するという)より攻撃的な路線をとることを決めたのは、アメリカが2005年秋に発動したマカオの銀行の北朝鮮関連口座に関する金融制裁措置が背景にある。「核実験を行い、自分たちが核武装国家であることをはっきり知らしめれば、金融制裁を科しているアメリカを追い込めると考えたのだろう」。北朝鮮が核実験に踏み切った動機をこう分析するサモアは、今回の安保理の経済制裁決議を評価しつつも、決議の内容は「北朝鮮が生き延びていくために必要な外国からの援助や取引に直接的な影響を与えるようなものではなく、むしろ、北朝鮮は、中国と韓国が、体制の存続を脅かすような制裁から守ってくれることを依然として期待している」とコメントした。

CFRインタビュー
いまこそ平壌を外交路線に引き戻せ

2006年11月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソン・センター シニアアソシエート

「交渉路線に門戸を開いている」と表明しつつも、交渉を続けてもどうにもならないとブッシュ政権は考えており、当面、北朝鮮を締め上げるしかないとみている。北朝鮮も交渉に戻ることに利益があるとは考えておらず、核実験に踏み切ったのはこうした情勢判断をしたからかもしれない。また、核問題よりも、北朝鮮情勢の流動化を回避することを戦略的観点から重視している中国は、韓国同様にアメリカの強硬路線と歩調を合わせるとは思わない。こうした環境にある以上、2005年9月19日の原則合意を先に進めるために、アメリカが北朝鮮を交渉の場に引き戻す努力をするのかどうかで今後は左右されるとロンバーグはみる。2005年の合意は関係勢力のすべてが重視する適切な方向性を示しており、そのなかには、北朝鮮の非核化も含まれている、と。

中国の改革とリーダーシップ危機

2006年11月号

ジョン・L・ソーントン ブルッキングス研究所理事長

かつては官僚ポストを独占していたエリート大学の卒業生の多くが、いまでは民間の雇用へと流れつつある。経済開放政策の結果、新たに民間に魅力的な雇用がつくりだされたことで、皮肉にも、この30年に及ぶ改革路線を今後踏襲していけるような、若くて優秀な人材を中国政府は確保しにくくなっているのが現状だ。現在の硬直的なトップダウン型の政治構造にばかり依存し続けるのは、もう無理な段階にきている。共産党は、多くの優れた人材を持つ民間と政府の間に存在する壁を取り払うべきだろう。政治指導者のポストを民間の優れた人材に開放すれば、政治力学と行政効率のせめぎ合いに頭を悩ます現在の指導層のジレンマを解決する助けにもなる。

国際経済・貿易の不公正をいかに是正するか
―純然たる自由貿易では問題は解決しない

2006年11月号

ロバート・H・ウェイド
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス政治経済学教授

現在の自由貿易体制では、世界を勝ち組と負け組の二つに分けてしまうし、多くの途上国は負け組になる。だが、グローバル経済に対する市場開放の度合いを途上国が調整できるようにすれば、こうした二極化現象をなくせる可能性がある。こうした問題を前向きに考えていくには、「先進世界」対「途上世界」という構図ではなく、先進国の人口が10億人、先進国より高い経済成長を遂げている途上国の人口が30億人、そして低成長に苦しむ途上国の人口が20億人であるという事実に即して、「1対3対2の世界」という構図で世界の経済と貿易の問題、そして途上国のニーズをとらえるべきではないか。

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