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論文データベース(最新論文順)

議会の多数派となった民主党が、2国間貿易協定の批准を拒絶し、保護貿易路線を強化していくのではないかとの懸念が浮上している。事実、民主党議員のなかには、自由貿易合意に否定的な公約を掲げて当選した者もいるし、アメリカの労働者を守るために、途上国との自由貿易合意に労働基準、環境基準を盛り込むように圧力をかけることを示唆する有力者もいる。過小評価されたままの人民元レートをバックに、中国がアメリカに対する貿易上の優位を高めつつあるとみなす危機感も米議会では高まっている。山積する貿易問題に民主党議会はどう対処していくのか。

CFRミーティング
次期台湾総統候補
呂秀蓮台湾副総統が語る台湾と中国

2007年1月号

スピーカー 呂秀蓮(アネッタ・ルー)  台湾副総統
司会 ジェローム・A・コーエン  米外交問題評議会(CFR) アジア担当非常勤シニア・フェロー

台湾と中国は別の存在であり、ともに独立している以上、国際社会は、もはや時代にそぐわず、とかく誤解をまねくだけの「一つの中国」政策を再検証する必要がある。こうした再検証作業を行って初めて、海峡間論争の効果的な解決策を見いだすことができる。われわれは、台湾の歴史を検証するにつけて、台湾の運命は中国によってではなく、世界情勢によって左右されていると確信している。北京にしてみれば、中国を台湾に再編するのは必然なのかもしれない。しかし、グローバルな視点でみれば、台湾が中国に帰属しないこと、台湾はむしろ世界の一部であることがわかるはずだ。(アネッタ・ルー)

ブッシュの一般教書演説を読み解く
――イラクとガソリン消費の削減

2007年1月号

ナンシー・E・ローマン 米外交問題評議会(CFR) ワシントンプログラム・ディレクター

ブッシュ大統領が一般教書演説でイラクへの米軍増派戦略への支持を強く求めたのは、予算承認権を持つ議会が、増派策を予算面から切り崩そうと試みる危険があることを認識していたからだ。実質的に大統領は「しばらくの間、この戦略にチャンスをくれないか」と議会に訴えかけたと指摘するナンシー・ローマンは、大統領がイランの核開発問題についても簡単なコメントに留めたのは、増派によって「バグダッドの治安を確保して流れをつくりだし、イラク問題で活路が見えてくれば、イランについても有利な状況をつくりだせる」と考えているからだと指摘する。また、外交ではなく、国内領域のアジェンダを重視し、ガソリン消費の削減に向けて包括的で大胆な措置をとると約束したのは、「外交領域ではレームダックに陥らざるを得ない」ことを大統領が認識しているからだろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

なぜ今後10年が将来のエネルギートレンドを左右するのか
――エネルギートレンドに関するIEA報告から

2007年1月

スピーカー
ファティ・バイロル/国際エネルギー機関(IEA)チーフエコノミスト
司会
ジャッド・モーアワッド/ニューヨーク・タイムズ紙 エネルギー担当記者

現在経済ブームのなかにある中国とインドは、エネルギーインフラに莫大な投資を行い、発電所、精製所、送電網その他を整備しており、両国は今後50年から60年のエネルギーパターンを左右するような一連の決定を下しつつある。一方、経済協力開発機構(OECD)加盟諸国にとっても今後の10年間は重要だ。OECD加盟国が発電所、送電網などエネルギーインフラに大規模な投資を行ったのは第2次世界大戦直後で、これらのインフラの多くを新しいインフラに置き換えていかなければならないからだ。どのような技術、燃料資源、どのような設計が好ましいのかを、今後を見据えて判断しなければならない。今後の10年間は、われわれがエネルギー路線を見直すうえで非常に重要な時期になり、この間に現在の路線を見直さなければ、好ましくないエネルギートレンドを覆すのはますます難しくなる。

CFRブリーフィング
アメリカはガソリン消費を削減できるか

2007年1月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会(CFR) 科学技術担当非常勤シニア・フェロー、ロバート・マクマホン www.cfr.org 副編集長

この30年間にわたって、アメリカ政府は車の燃費改善に向けた大がかりな措置を導入しようとはしなかった。1990年代以降は、大きなトラックやスポーツ・ユーティリティー車(SUV)の市場での人気が高まり、新車の平均燃費は向上するどころか、低下するようになった。だが、昨今では輸入石油への依存の高まりが危険視され、二酸化炭素排出による地球温暖化問題が再度注目されるようになり、ガソリン消費の削減に向けた措置も検討されている。ブッシュ大統領は、1月24日の一般教書演説で、10年以内にアメリカのガソリン使用量を20%削減させるという大胆な構想を発表した。実際にそうできるかどうかの鍵を握るのが、バイオ燃料(エタノール)の開発と、燃費の改善だ。だが、エタノールの開発をめぐっては、その現実性をめぐってさまざまな議論があるし、燃費の改善についても、各種利益団体の圧力で議会は身動きがとれなくなる恐れもある。

イランとの選択的パートナーシップを
――新しい中東の現実をふまえた問題管理策を

2007年1月号

ゲーリー・シック コロンビア大学ガルフ2000プロジェクト エグゼクティブ・ディレクター

アメリカとイランは、石油資源を持つペルシャ湾地域における重要なプレーヤーであり、両国の関係がどのようになるかでこの地域の命運が左右される。イランの台頭と強大化、出口の見えないイラクの混迷、そして姿を現しつつあるシーア派の三日月地帯に特徴づけられる新しい中東に対処していくにはどうすればよいのか。重要なのは、イラン問題は当面解決できず、管理していくしかないことを認識することだとレイ・タキーは言う。変化し続けるさまざまな問題をめぐって、アメリカは、イランとの選択的パートナーシップを構築する必要があるし、イランを世界経済と地域安全保障の枠組みに参加させれば、アメリカは共通の懸念についてイランと協力していく基盤を築くことができる、と同氏は指摘している。

いまこそ、包括的中東和平を試みよ

2007年1月号

エドワード・P・ジェレジアン 元駐イスラエル米大使

アラブ・イスラエル紛争に始まり、イラクの混迷、イラン問題、中東地域全域での政治・経済改革の必要性、過激主義、そしてテロリズムにいたるまでの、中東における主要な問題のすべては、不可分に結びついている。一部の問題の管理を試みても、この地域が抱える一連の問題を解決することはできない。アラブ・イスラエル紛争の平和的な解決と、中東全域での政治・経済改革を促してイスラム世界の穏健派を助けることをアメリカの政策目標に据え、包括的交渉戦略をとる以外に手はない。いま求められているのは、中東の平和構築に関与していくという政治的意志である。

論争 トウモロコシは食糧か燃料か

2007年11月号

トム・ダシュル 前米上院議員
C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学・法学教授
ベンジャミン・セナウアー ミネソタ大学応用経済学教授

フォーリン・アフェアーズ日本語版2007年5月号の「エタノール燃料は本当に人と地球に優しいのか」で、C・フォード・ランゲとベンジャミン・セナウアーは、原油価格が高騰するなか、世界的に代替燃料として注目を集めているエタノールも、トウモロコシや大豆を原料として生産する限り、食糧としての供給が奪われることになり、世界の穀物供給を連鎖的に逼迫させ、主要産品の価格を高騰させると警告した。「トウモロコシや大豆を原料とするバイオ燃料の需要増によって主要産品の実勢価格が1%上昇するごとに、世界で食糧難に苦しむ人々の数は1600万人ずつ増えていく」と指摘した両氏は、「エタノールを真にグリーンで持続可能な代替燃料とするには、トウモロコシや大豆ではなく、木や草のセルロースからの生産の実用化を期待するしかない」と論文で結論づけている。以下は、トウモロコシからのエタノール生産を推進する立場から、2人の論文への反論を寄せた前米上院議員のトム・ダシュルの議論と、それに対するランゲ、セナウアー両氏の再反論。

民主国家連合の可能性
――第2のX論文を求めて

2007年1月号

スピーカー
アン=マリー・スロータープリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院長
G・ジョン・アイケンベリー
プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院教授
司会
リチャード・N・ハース
米外交問題評議会(CFR)会長

「 民主国家連合は、現在の漠然とした「民主主義国家コミュニティー」よりも小さな組織とし、厳格な義務を定めた条約に調印した国をメンバーとする。この組織が、国連その他の国際機関の踏み込んだ改革を求めて中心的な役割を果たしていくことも期待できる。国連が必要な改革を断行しない場合には、長期的にはこの民主国家連合が国連に代わる役割を担っていくようになる可能性もある。」(A=M・スローター)

「21世紀のグローバル構造は、複数の層からなるレイヤーケーキのようなものとみなす必要がある。そうした層をなす機構には、グローバルなものもあれば地域的なものもあり、政府の統治スタイルを基準とするものもあるだろう。こうした複数の機構にはそれぞれ役割があって、さまざまな問題を解決するために協力しあう。最終的には誰もが重要視する伝統的な「大国間」メカニズムである安保理が、その頂点にあるような構造ができることを私たちは期待している。」(G・J・アイケンベリー)

感情の衝突
―― 恐れ、屈辱、希望の文化と新世界秩序

2007年1月号

ドミニク・モイジ フランス国際関係研究所上席顧問

西洋世界は「恐れの文化」に揺れ、アラブ・イスラム世界は「屈辱の文化」にとらわれ、アジア地域の多くは「希望の文化」で覆われている。アメリカとヨーロッパは、イスラム過激派テロを前に恐れの文化を共有しながらも分裂し、一方、イスラム世界の屈辱の文化は、イスラム過激派の思想を中心に西洋に対する「憎しみの文化」へと姿を変えつつある。かたや、さまざまな問題を抱えているとはいえ、中国、インドを中心とするアジア地域の指導者と民衆は、西洋とイスラムの「感情の衝突」をよそに、今後に向けた期待を持っており、経済成長が続く限り、アジアでは希望の文化が維持されるだろう。恐れの文化、屈辱の文化、そして希望の文化のダイナミクスと相互作用が、今後長期的に世界を形づくっていくことになるだろう。

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