アメリカ、イラク、 そして対テロ戦争
2007年1月号
イラク政策をめぐっては、シンガポール政府はブッシュ政権を手堅く支持してきたが、米軍がイラク軍、警察組織を解体し、すべてのバース党員をイラク政府から追放するに及び、私はアメリカのやり方に違和感を覚え始めた。これによって、政治的、社会的な空白がつくりだされるのではないかと懸念したからだ。自己統治という歴史も伝統もない国にあっては、自由で公正な選挙を実施することが、民主主義確立のための最初のステップになるわけではない。混乱のなかにあるとはいえ、イラク問題の解決に向けて決意をもって対応していけば、現在のイラク戦争へのネガティブな一般通念もいずれ覆されるかもしれない。ベトナム戦争同様に、それがそのまま歴史的評価につながるとは限らない。必要なのは、アメリカが広範な同盟関係をまとめて適切な姿勢を保つことだ。