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論文データベース(最新論文順)

Review Essay
中国の政治経済体制の今後を検証する
――民主化、崩壊、それとも現体制の存続?

2006年11月号

アンドリュー・J・ネーサン コロンビア大学政治学教授

中国の民主化、崩壊シナリオを唱える人がいる一方で、現体制の存続を予測する人もいる。農村部の貧困や不良債権問題など、山積する課題に直面しているとはいえ、現体制が崩壊する気配はないし、一方で、民主化プロセスが進展する様子もない。 実際、中国の実験は、近代化路線を導入しても、権威主義体制の基盤を損なうことなく繁栄を手にできることを実証しつつあるのかもしれない。カザフスタンからイランまでの独裁政権が、中国の状況を、固唾をのんで見守っているわけはここにある。中国の歴史の流れを大きく変化させるものがあるとすれば、それは、内的要因よりも、むしろ、外からの衝撃かもしれない。アメリカ経済が衰退すれば、経済成長を前提とする中国における社会契約が崩壊してしまうかもしれないし、朝鮮半島で戦争が起き、感染症が蔓延した場合も同様に流れは大きく変化する。

CFRインタビュー
核実験は政治的デモンストレーションだ

2006年11月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長

北朝鮮が(交渉から離脱してミサイル実験・核実験を強行するという)より攻撃的な路線をとることを決めたのは、アメリカが2005年秋に発動したマカオの銀行の北朝鮮関連口座に関する金融制裁措置が背景にある。「核実験を行い、自分たちが核武装国家であることをはっきり知らしめれば、金融制裁を科しているアメリカを追い込めると考えたのだろう」。北朝鮮が核実験に踏み切った動機をこう分析するサモアは、今回の安保理の経済制裁決議を評価しつつも、決議の内容は「北朝鮮が生き延びていくために必要な外国からの援助や取引に直接的な影響を与えるようなものではなく、むしろ、北朝鮮は、中国と韓国が、体制の存続を脅かすような制裁から守ってくれることを依然として期待している」とコメントした。

CFRインタビュー
いまこそ平壌を外交路線に引き戻せ

2006年11月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソン・センター シニアアソシエート

「交渉路線に門戸を開いている」と表明しつつも、交渉を続けてもどうにもならないとブッシュ政権は考えており、当面、北朝鮮を締め上げるしかないとみている。北朝鮮も交渉に戻ることに利益があるとは考えておらず、核実験に踏み切ったのはこうした情勢判断をしたからかもしれない。また、核問題よりも、北朝鮮情勢の流動化を回避することを戦略的観点から重視している中国は、韓国同様にアメリカの強硬路線と歩調を合わせるとは思わない。こうした環境にある以上、2005年9月19日の原則合意を先に進めるために、アメリカが北朝鮮を交渉の場に引き戻す努力をするのかどうかで今後は左右されるとロンバーグはみる。2005年の合意は関係勢力のすべてが重視する適切な方向性を示しており、そのなかには、北朝鮮の非核化も含まれている、と。

中国の改革とリーダーシップ危機

2006年11月号

ジョン・L・ソーントン ブルッキングス研究所理事長

かつては官僚ポストを独占していたエリート大学の卒業生の多くが、いまでは民間の雇用へと流れつつある。経済開放政策の結果、新たに民間に魅力的な雇用がつくりだされたことで、皮肉にも、この30年に及ぶ改革路線を今後踏襲していけるような、若くて優秀な人材を中国政府は確保しにくくなっているのが現状だ。現在の硬直的なトップダウン型の政治構造にばかり依存し続けるのは、もう無理な段階にきている。共産党は、多くの優れた人材を持つ民間と政府の間に存在する壁を取り払うべきだろう。政治指導者のポストを民間の優れた人材に開放すれば、政治力学と行政効率のせめぎ合いに頭を悩ます現在の指導層のジレンマを解決する助けにもなる。

国際経済・貿易の不公正をいかに是正するか
―純然たる自由貿易では問題は解決しない

2006年11月号

ロバート・H・ウェイド
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス政治経済学教授

現在の自由貿易体制では、世界を勝ち組と負け組の二つに分けてしまうし、多くの途上国は負け組になる。だが、グローバル経済に対する市場開放の度合いを途上国が調整できるようにすれば、こうした二極化現象をなくせる可能性がある。こうした問題を前向きに考えていくには、「先進世界」対「途上世界」という構図ではなく、先進国の人口が10億人、先進国より高い経済成長を遂げている途上国の人口が30億人、そして低成長に苦しむ途上国の人口が20億人であるという事実に即して、「1対3対2の世界」という構図で世界の経済と貿易の問題、そして途上国のニーズをとらえるべきではないか。

フランスのイスラム教徒問題
―― 真の問題はフランスそのものにある

2006年10月号

ステファニー・ジリ フォーリン・アフェアーズ誌シニア・エディター

ヨーロッパで生まれたイスラムテロにどう対応するかは重要な課題だが、イスラムテロとイスラム教徒が安易に結びつけられているために、現在ヨーロッパに住む1500万~2千万人のイスラム教徒のほとんどがイスラム過激派とは無関係であり、ヨーロッパ社会に反発して背を向けるどころか、現地社会に溶け込もうと努力しているという重要な事実が見えにくくなっている。イスラム地区における犯罪発生率が高いとしても、それは宗教とは関係なく、フランス国内の社会経済環境を背景としている。フランスの移民問題を「文明の衝突」としてとらえるのではなく、フランスのエリートは、経済停滞、小さな違いを認めない非寛容的な態度、世論の場でのイデオロギー論争、政治的策略の横行といった国内の真の問題に取り組んでいくべきだろう。

核拡散後の世界

2006年10月号

スティーブン・ピーター・ローゼン/ハーバード大学・ジョン・オリン戦略研究所所長

イランが弾道ミサイルで中東全域を射程に収め、アメリカやヨーロッパに対しても(船舶その他の方法で)核攻撃を行う力を得る。サウジアラビアとトルコも、恐怖、あるいはライバル意識に突き動かされて、核武装する。アジアでも、中国、インド、北朝鮮、パキスタン、ロシアという核保有国に加えて、日本と台湾がアジアの核保有国の仲間入りをする可能性もある。仮に現実がこのように推移するとしたら、この新しい世界における戦略的な流れはどのようなものになるだろうか。核大国の一方で、数多くの核小国が共存するようになれば、冷戦期の抑止理論、軍備管理論は陳腐化する。

アメリカは神の国か?
―― キリスト教福音派台頭の政治・
外交的意味合い

2006年10月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカのプロテスタンティズム内の保守派の信徒が増え、20世紀半ば当時は、アメリカの主流派だったリベラル派プロテスタントの信徒が減少している。この宗教勢力地図の変化は、すでにアメリカの外交政策を大きく変化させている。第二次世界大戦、そして冷戦期におけるアメリカの政治を支配していたのは、教義よりも道徳律を重視するリベラルなプロテスタンティズムの思想だった。だが、いまやキリスト教リベラル派は、かつての影響力を失い、リベラル派よりも教義を重視し、例えば、イスラエルを擁護することで、自分たちが神によって支えられると感じ、そうすることで世界を敵に回してもかまわないと考える福音派が台頭している。福音派の台頭で、アメリカの政治・外交路線はどのように変わるのか。それは政策の幅を広げることになるのか、それとも……。

NATOをグローバルな軍事同盟に変貌させよ
――豪州、日本、ニュージーランドのNATO加盟を

2006年10月号

アイボ・ダールダー ブルッキングス研究所シニア・フェロー
ジェームズ・ゴールドゲイアー ジョージ・ワシントン大学政治学教授

グローバルな課題や脅威に対処していくには、オーストラリア、日本、ニュージーランドなどの民主国家をNATOに参加させることで、NATOを大西洋同盟の枠を超えたグローバルな存在とする必要がある。冷戦が終結し、世界がグローバルな課題に直面している以上、NATOのメンバーシップを、大西洋同盟という地理的制約にとらわれず、民主主義の政治経済原則という価値を共有する国に広げていくべきだ。考えるべきは、どのようにすれば、世界有数の国際的軍事機構を、大西洋共同体の利益だけではなく、世界の安定を求める民主国家で構成されるグローバルな共同体の利益を促進できるような存在へと変え、時代の要請に対応できるように変化させられるかだ。

指導者に求められるリーダーシップと戦略
――政策ビジョンと文脈を読む知性

2006年10月号

ジョセフ・S・ナイ
ハーバード大学政治学教授

指導者には、未来を正確に描き出し、その意味を人々に知らせる政策ビジョンが必要になるし、そのような、すぐれたビジョンを示すには、世界情勢を的確に分析し、現実主義とリスク、理念と能力間のバランスを適切に判断することも求められる。そして、「感情的な知性」も「コミュニケーションスキル」も必要だ。これは人々を魅了する指導者の知識と原則、そして表現力と言い換えることができる。さらには、政策を立案し、遂行するために政府を管理する能力も必要になる。とりわけ重要なのが、「文脈を読む知性」だ。これは、変化する環境を理解し、流れに即して目的を実現するための資源投入量を判断する能力のことだ。かつてビスマルクはこれを、指導者が歴史を切り開き、部下の掌握を試みる際に必要になる「神の足音に耳を傾ける責務」と呼んだ。

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